Story Reader / イベントシナリオ / 星摘みの叙述 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
<

曲 星摘みの叙述

>

休憩室

コンステリア

コンステリア 休憩室

茶葉を茶碗に入れ、静かに湯を注ぐ。しばらくすると、ふたつの茶碗から淡い香りが立ちのぼった

茶托に茶碗を載せ、深い褐色の木製テーブルへと向かう

……

その向かいには濃色の長椅子があり、九龍の主が座っている。彼女は端末から投影された青いスクリーンを見ており、三分割されたそれには文字や画像がびっしりと並んでいた

指先で軽く触れると、それに合わせてバーチャルスクリーンが切り替わっていく。その真剣な表情に、つい見とれてしまった

やがてこちらの視線に気付いたのか、彼女が顔を上げた。目が合った瞬間、凛とした眼差しが少しだけ和らいだような気がした

いい香りですね

数日前に連絡をとった時は、今日のために一部の業務を前倒しで片付けていると言っていた

しかし、ここまで立て込むとは思っていなかったのだろう。まもなく七夕祭りが始まるというのに、彼女は依然として業務に没頭している

あと少しです。祭りが始まるまでには終わるのでご心配なく

そう言ってひとつ息を吐き、指先でこめかみを押さえた。その表情には、僅かに疲れの色が浮かんでいる

私以外にはできない業務です。たとえファウンス士官学校の首席だとしても……

いえ、[player name]なら試してみる価値はあるかもしれませんね。どれほど政務処理を行えるのか見せてもらいましょうか

あとで私が確認するので、失敗を恐れずやってみてください

そう言って、彼女は隣の空いた場所を軽く叩いた

注意すべき点は……

いくつかの要点を簡単に説明すると、曲は端末の一部の権限をこちらに引き渡した

では、お願いします。少し休みますが、わからないことがあればいつでも訊いてください

業務の引き継ぎが終わり、ようやく気が緩んだのか、彼女はこちらの肩に体を預けて瞼を閉じた

曲はそれ以上何も言わなかった。温かな吐息が首筋を掠め、くすぐったさを覚える

気を取り直して、目の前のスクリーンに視線を戻す

ひとつひとつに目を通しながら、要点を声に出して繰り返し読み上げ、自分の意見をまとめて返答していく

曲は黙ったままこちらの判断を肯定する時もあれば、囁くように指摘する時もあった。そのお陰で考え方と要点が自然と整理され、以降の審査業務は順調にこなせるようになった

……

この声なき連携に安堵したのか、彼女の呼吸が徐々に穏やかで深いものに変わっていく

それは九龍の一画を割り当て、自分のために家を建てるという提案だった。その規模は家ではなく、小さな屋敷に匹敵する

こちらの戸惑いに気付いたのか、曲は目を開けた。スクリーンに視線を走らせ、何かを悟ったように口元に笑みを浮かべる

九龍には、あなたのような名高い指揮官を狙っている者が少なからずいます。それらしい名目を立て、伴侶であるあなたを九龍に「お招き」しろと何度も言われました

この提案の裏にある思惑は明らかでしょう。[player name]はどう処理しますか?

ふふ、あなたがあっさり受け取ったと知ったら、提案者たちはその場で踊り出して喜ぶでしょう

笑い合いながら、屋敷建設の提案を「却下」した

どんな思惑があるにせよ、こうした厚意や贈り物は自分が求めているものではない

どんな思惑があるにせよ、こうした厚意や贈り物は自分が求めているものではない

これを見て思い出しました。あなたがいつでも滞在できる部屋を用意しなければなりませんね

伴侶の部屋は私の住まいに用意するべきですから……古都の内苑にしましょう

遠慮は無用です。あなたの好みに合う装飾品を私が選んでさしあげます

その口調は穏やかだったが、どこか拒絶を許さない力強さがあった

曲はこちらの肩に預けていた体を起こし、首を軽く回す。彼女の顔に見えていた疲れの色は幾分かマシになったようだ

彼女は端末を受け取り、審査済みのデータをひと通り確認し終えると、満足げな表情を浮かべた

素晴らしい、さすがは[player name]です

全てのデータが「処理済み」とマークされたことで、長らく続いていた業務がようやくひと区切りついた

ちょうどその時、窓の外から微かに音楽と人々の歓声が聞こえてきた。空には鮮やかな花火が打ち上がっている

祭りが始まったようですね

[player name]、私たちも向かいましょう