夜の路上での華やかなショーが終わり、観客から盛大な歓声が上がった。コンステリアのイベントに参加していた人々は、三々五々、家路についた
ショーのあと、ここで落ち合う約束をしていたのだが、ピンク髪の構造体の姿はなかった
ためらいながら名前を呼んでみたが、返事はなかった
人がごった返しているせいで、迷っているのだろう
イシュマエルの端末に連絡したが、人混みの騒音で聞こえないのか、彼女は応答しなかった
イベントのエリアはそれほど広くはないので、彼女を探すことにした
来た道をたどり、イシュマエルが通りそうな道を探す
鮮やかな花で飾られた小道と、草が植わった小道……恐らく花の道が正解だろう
この通りにはコンステリア特製の点心、あっちの通りにはミルクティー味の電解液が売られている……ミルクティー味の電解液の通りを選んだ
その後……
いくつもの角を曲がり、路地を抜け、イシュマエルが「通ったかもしれない」道をたどって最後の角を曲がると、目の前が突然開けた
――海だ
……グレイレイヴン
はぐれたピンク髪の構造体は、角を曲がったところにあるカフェのテーブルに座っていた。機械体のスタッフが、ちょうどミルクティー味の電解液とミルクティーを運んできた
いいえ
見たわけでも、演算したわけでもありません
ただ感じたんです。あなたなら、この時間にここに到着すると
……時間通りに見つけてくれましたね
もうイベントも終わりに近付いていますし、ここで少し休みませんか?
彼女は手を差し出し、こちらを誘うような仕草をした
夕焼けの余韻が水平線にゆっくりと消え、潮が徐々に満ちてきた。ふたりは小さなカフェを出て、ビーチを目的もなく歩いた
……あら
イシュマエルは突然身を屈め、砂に埋もれていた珍しい色の貝殻を拾い上げた
私が好きな色です
夜の帳が下り始め、深い青に包まれたビーチで、彼女の手の中の茜色の貝殻が輝いていた
そうですね……夕焼けみたい
彼女は貝殻についた砂を丁寧に払い落とすと、空に残った霞光を染み込ませようとするかのように貝殻を掲げた
かつて……私の故郷にも、美しい景色を眺められる場所がありました
そこで、とても美しい夕焼けを見たのを覚えています
ピンク髪の構造体は微笑みながら、隣にいるこちらに視線を合わせた
ええ、とても遠い場所ですが……もし機会があれば、お連れしますね
そこなら、とても美しい夕焼けを眺められますから
彼女は先ほどの言葉を繰り返しながら、手に持っている貝殻を懐かしそうに見つめた
きっと行けますよ
イシュマエルは貝殻をそっとポケットに入れ、遠くの海を眺めた
海面が空の最後の色彩を呑み込む――
……そうでしょうか?
ピンク髪の構造体はミステリアスな笑みを浮かべ、静かに振り返り、指先で空中にそっとひとつ、点を打った
ドォーン――
大きな音がして、漆黒の夜空を色とりどりの花火が彩った
このビーチは夜空を眺めるのに最高の場所です
今日の夜は……始まったばかりのようですね
宵闇に包まれる中、早春のそよ風が頬をなでる。イシュマエルはそっと身を寄せ、こちらの手を握った
違いますか?