えっ……?本当に?
ラミアは手に持ったチケットを握り締め、何度もお題を読み返した――先ほど、彼女は人間と一緒にコンステリアの通りで「真実か挑戦か」というイベントを知った
人間の眼差しに励まされ、ラミアは目を閉じてチケットを1枚引いた。それで、今のこの展開になっている
「1日命令チケット」――相手になんでもしてもらえるチケット!
ラミアは信じられない様子でチケットに書かれた文字を読み上げ、少し緊張した様子で隣にいる人間をちらりと見た
「命令」という言葉に人間が怒らないことを確認したラミアは、ようやく安心して喜んだ
うわっ……!当たっちゃった!
な、何をしてもらおう?えっと……えっと……ちょっと考える……
彼女はチケットを手に取り、何度もひっくり返した。こんな「最高のチャンス」が突然やってくるとは思ってもいなかったので、彼女はその一瞬一瞬を必死に噛みしめていた
彼女の視線は、角のスイーツショップに向かっていた
た……食べたいな
ふたりは並んで小さな店に入り、ラミアの希望通り一番奥のテーブルに座った。色々と悩んだ末に、ラミアは今日だからこそ「特別に」食べたいデザートを決めた
ご注文のデザートです。どうぞごゆっくり
店員はフルーツが幾重にも盛られた小さなケーキをラミアの前に置いた。ラミアは「多ければ多いほどいい」という考えのため、このデザートを選んだのだ
まるで、今の彼女の気持ちを表しているようだった。どうすれば目の前の人に、できるだけたくさんの願いを叶えてもらえるか
彼女はこの貴重なチャンスに悶絶している。そして人間の前には、こんな光景が広がっていた――
人魚がしかめっ面をしながら、金属のフォークを噛んでいる。しばらくしてからようやくオレンジをひとつ、口に運んだ
えっ?あっ、お、美味しいよ。あなたも食べてみる?
人間がドリンクを差し出したのを見て、ラミアはゆっくりと頷き、その手からグラスを受け取った
彼女はフォークに苺とケーキを載せて差し出そうとした時、突然手を止めた
あ、待って、思いついたかも……お願いしたいこと。あ、いや……命令したいこと
め、命令です……ドリンクを私とシェアしなさい
あっ、あ……いや……うん、よくできました!
次は、えっと……次の命令は、あなたが支払いなさい
そして私と一緒に街を散歩して……あ、新しい塗装を探しなさい
ほ、本当?本当にいいの?
ラミアの瞳がぱっと明るく輝いた
あと、音楽会にも行きたい。よくわからないけど……聴いてみたい
そ、それから、広場の中央にある……チョコレートファウンテンも見たい。この苺にチョコレートをかけたら、美味しいだろうし……
いつの間にか人魚が口にする言葉は「命令」から「願い」に変わっていた
彼女は小さなフォークを持ち、少しはしゃぎながら、次々と「命令」をした。そして、目の前の人間はそのひとつひとつの「願い」に真剣に耳を傾けた
あ、あなたと一緒に写真を撮りたいし……
映画も一緒に観たい……あ、知ってる人が出演している映画はイヤ……あと、できれば、手を繋ぎながら観たい
夕食も一緒に食べたい、明日の朝食も……あ、でも、明日って有効期限外かな……いや、関係ない……とにかく明日の朝、絶対にあなたと一緒に……朝食を食べたい
賢いねって、綺麗だねって……たくさん褒めてほしい
そう!ゆ、勇敢で、強くて、賢くて、美しい!あなたの目に映る私は、特別に賢い人になりたい……賢すぎて、えっと……なんて言うんだったっけ……
そう!博士っていう肩書き、すごくいい……まるで空中庭園の、あのア……なんとかって人みたい
ラミアの瞳は不意に焦点を結び、目の前の人間を巧みに導こうとし始めた
あと……もっと親しみを込めて、私を呼んでほしい
ち、違う!私の本当の名前を入れて……
違う違う、全然違う……!
ラミアは頭を振りながら、顔を真っ赤にした
さっきの人魚姫「ちゃん」はよかった……
は、半分正解。そこに、さっきの賢さも加えて……
人間は納得したように微笑み、果肉がたっぷり乗ったケーキをひと口掬い、ラミアの前に差し出した
!!
ヒィッ!!!
わ、わ……私、もしかして欲張りすぎ?ちょっと大袈裟だよね……?も、もうそんな風に呼ばなくていいから……!
人魚の願いの泡が今にも弾けそうになり、彼女はデザートのフォークを置いて、逃げようとした。しかし、人間の手がそっと彼女の手首を捕らえた
……
人魚は人間に手を握られ、温かい眼差しに見つめられながら、確かな答えを受け取った
不安に揺れる心がしっかりと支えられた。彼女は勇気を出して、もう1歩踏み出してみることにした
じゃ……じゃあ、私と一緒に過ごす願い……全部の願いが、少しずつ実現する?い、今から……始められる?