前を行く赤髪の構造体の歩調に合わせ、山間の荒れた道を必死に登っていく
数分前に彼が言った言葉を思い返した――
挑戦?俺はこんな色まみれの地図なんてわかんねぇけど……ま、別にいいぜ。ちょうど山登りしたかったし!
お前といられるなら尚更だ!
地図のルートを進めば、もっと平坦で楽だがかなり時間がかかる。ノクティスと自分は登山時間を短縮できる、よりチャレンジングなルートを選んだ
その代償は、泥に足を深く突っ込んだり浅く突っ込んだりしながら、凸凹した道を半ば這うように進むことだった
確かに人間が行けるような道じゃねぇな……ゆっくり行ってやろうか?
彼の提案を首を振って断り、ついていけると答えた
ノクティスが送ってくれたチケットには、世界政府芸術協会が練り上げた難題が書かれていた。指定された場所に到達すれば、特別な賞品がもらえるというものだ
ただし、その指定された場所は近くの小さな山の上にあった
通常任務で条件が整っていない時には荒れた山道を歩くこともあるが、ここは特に険しかった
今日はレクリエーションとして体を動かし、外で少し汗をかくだけ――そう思っていたが、ここまで来ると負けず嫌いの心に火がついた
なんだ?また俺様と勝負したいのか?
よし、なら決まりだ!絶対に負けねぇからな!
勝負となると、ノクティスは俄然やる気を出し、あっという間に視界の先に消えていった
上に登るにつれて草木がますます生い茂り、足場を見つけるには、まず視界を遮る植物を避けなければならなかった
構造体を追い抜くなら、地図の読み方が何よりも重要になる。間違っていなければ、この先の小さな坂を越えれば……
おい、危ねぇぞ!
赤髪の構造体が、足を踏み外しそうになった自分の体をしっかりと支えてくれていた
バランスを崩したとわかった瞬間、心臓が激しい鼓動を打った。そして安全を確認した瞬間、喉元に詰まっていた息が漏れた
はッ、俺様が見守っててよかったな。じゃなきゃ今頃、大怪我してたかもしれねぇぞ
構造体は慎重にこちらの体を確認し、少し泥がついているだけで無事だとわかると安堵の息をついた
もう勝負なんてどうでもよくねぇか?一緒にゴールしようぜ。そうすりゃ、どっちも勝ったことになるだろ?
そのまま強引に背負われ、しっかりと固定された。構造体はもう一方の手で、道に伸びる木の枝を素早く振り払う
ほらな、やっぱりこっちの方が楽だろ。またどこかで怪我すんじゃねぇかってヒヤヒヤしなくていいしな
ノクティスの背中におとなしく乗っていると、温かい体温が伝わってきた。大雑把に見える彼だが、実は繊細な面もある
そこからなら、前がよく見えるだろ?特別な賞品がどこにあるか見てくれよ
それとも……もっと高く持ち上げて回転してやろうか?
いや、ただ無駄に山登りさせるわけにはいかねぇなと思って
ハハハァ!よし、日頃の鍛錬の成果を見せてやるぜ!
視野が広がると、道を見分けるのがずっと楽になった。ついに構造体と一緒に頂上に到達すると、コンステリアの全景が広がっていた
ノクティスと目を合わせて微笑み、力強くハイタッチをした
この瞬間、長い道のりの疲れがすっかり和らいだ。心地よい風が吹き抜け、景色を見下ろすと登頂を達成した喜びが胸いっぱいに広がった
普通の道は簡単だけど、敢えて選んだ道は厳しい――でも、歩こうと思えば歩ける
まさか、この景色が賞品ってやつか?詐欺じゃね?
彼の肩をポンと叩き、慎重に地図を見ながら周囲を確認すると、切り株の上に芸術協会が恋人同士のために用意した「特別な賞品」を見つけた
美しく包装されたバラの花束が置かれていた。水滴をまとい、鮮やかに輝いている。その上にはメッセージカードが添えられていた
「あなたたちの未来が平穏で、ともに歩む日々が永遠に続きますように」
ふーん……芸術協会、やるな
構造体は何かが頭をよぎったのか、顔がだんだんと髪の色と同じくらい赤くなり、言葉もたどたどしくなった
お、俺様はこんなのいらねぇから。こ、この賞品は……お前にやるからな!
おい……は、早く受け取れよ!