指揮官殿
夕暮れのコンステリア海浜公園――約束していた人が穏やかな波の音とともに歩いてきた
ビアンカは透明の箱を手に持っている。その中には金色の紙に包まれた円錐形のものがいくつか入っていた
こちらに向かって歩きながら、彼女は持っていた箱を開け、中のひとつを取り出した。そして包みを開け、こちらの口元に差し出した。澄んだ瞳に期待が浮かんでいる
疑問の言葉を口にする前に、細い指が甘い香りのする物体でそっと口を塞いだ
ほろ苦い外側を噛むと、アーモンドリキュールのような甘さが口の中に広がる
ウイスキーボンボンだった
リキュールを味わったこちらの表情の変化を見て、ビアンカは微笑んだ
今日の午後、スイーツショップで作ってもらったんです。指揮官殿の好みに合わせて味も少し調整しました。お口に合うといいのですが
返事を聞いて、ビアンカは微笑んだ
残りのウイスキーボンボンを食べると、ビアンカは思い出したように、1枚のチケットを取り出した
そういえば、ここに来る途中でこれをいただいたのですが……
「大切な人と一緒に古い灯台を冒険する」と書いてありますね
彼女はチケットを見せてくれた。そこに描かれた灯台は、ちょうど今ふたりがいる場所から見える。まだ回転灯が灯っていなかった
一緒に行ってみますか?
桟橋で小さなボートを借りてしばらく進むと、灯台の近くまで来た
灯台は夕暮れの海風に吹かれながら静かに佇んでいる。夜には灯るはずの明かりが、まだ灯っていなかった
海風で風化した扉を開けると、未知の危険を心配したビアンカが先に入った。ビアンカは安全を確認してから、こちらを手招いた
灯台に入って数歩も歩かないうちに、風が背後の鉄の扉を勢いよく閉めてしまった
突然暗闇に包まれ、ここが何もない空間のように感じられた。頭上から漏れる微かな月明かりのお陰で、上方の大まかな構造を把握できた
指揮官殿!
ビアンカの声が暗闇に響いた
暗闇の中で距離や方向がまったくわからず、足を踏み出すのをためらった
五感を研ぎ澄ませ、ビアンカがいる場所を必死に探っていると、腕を優しく取られる感触があった
彼女の髪の香りがした
ふぅ……
そして、耳元に吐息を感じた
お互いの手を触れ合わせ、ゆっくりと指を絡めると、ビアンカは安堵のため息をついた
ずっと手を握っていますから、ご安心ください
微かな光を頼りにやっとの思いで螺旋階段までやってきた。なんとか電気のスイッチを見つけてオンにすると、電流の小さな音とともに灯台は光を放った
自分とビアンカは灯台の最上部まで上った
暖かい黄色の光が規則正しく回転し、ふたりの影が見え隠れした
星のように瞬いていますね
孤独な星が夜空で輝き、暗闇で迷う人々に道を示す……
指揮官殿と同じです
ビアンカはこちらを見て、ゆっくりと頷いた
だからこそ、私はあなたと一緒に……光を届けたいのです。もっと多くの星が輝けるように
彼女はすぐには答えなかった。ふたりは無意識にコンステリアを眺めていた
明かりに照らされた街の上空で、一筋の花火が咲いた
華やかな色彩で咲き誇る花々に照らされた夜空でも、静かな灯台の暖かい光を隠すことはできなかった
灯台は静かに遠くの星空と共鳴し、互いに見つめ合う
太陽の影もまた、この眼差しの中でゆっくりとひとつに溶け合った