指揮官?
一緒に挑戦しようとリーフを誘いに行こうとした時、曲がり角から突然彼女が現れた。手には1枚のチケットを持っている
リーフはこちらが同じように小さなチケットを手にしているのを見て、ほんのりと顔を赤らめた
私と指揮官、同じことを考えていたのですね
指揮官、このイベント……
チケットには「挑戦:好きなお店を選んで体験する」と書かれていますが……
リーフの視線は、角にある可愛らしいピンク色の内装の店に向けられた。「ふれあい動物癒し館」の看板がかかっている
「癒し」という名の店に行くことを、自分から言い出すのは気が引けるようだ
い、いいんですか?
彼女はほんの一瞬ためらったが、看板に目をやったことに気付かれ、この提案がされたのだとすぐに察知した
じゃあ……お言葉に甘えて。一緒に入りましょう、指揮官
ふたりで温かみのある装飾が施された建物に足を踏み入れた。中に入ると、ほのかに草や木の香りがした
よちよち歩きの丸い目をした白い子羊たちが、柵から元気よく飛び出してきた。こちらをめがけて突進してきて、足下をぐるぐる回っている
可愛い……おやつが欲しいのでしょうか?
リーフはしゃがんで手馴れた様子で1匹の子羊を抱き上げ、頭をなで始めた
元気に動き回っていた子羊はリーフの腕の中で、次第におとなしくなった。まるで柔らかい毛玉のようだ
子羊はここをなでてもらうと気持ちいいんです……指揮官もやってみませんか?
こちらの視線に気付いたリーフは、すっかり手懐けた子羊を優しく手渡した
昔、旅行で牧場に行ったことがあるんです。そこで数日間、羊の世話をしました
あの時の経験が、こんなところで役に立つなんて
こうやって優しく頭をなでてみてください。羊がすごく安心するんです
彼女の前にしゃがむと、リーフは子羊を落ち着かせる方法を丁寧に教えてくれた
彼女は声を抑えて、腕の中の小さな毛玉を驚かせないようにしていたが、指示は非常に的確だった
指揮官……
温かい感触がした。ふと見ると、こちらの手が知らず識らずのうちにリーフの手に重なり、ふたりの手が羊の頭の上で重なっていた
彼女の手は小さく、肌は滑らかで柔らかかった。触れた瞬間、胸が熱くなるのを感じた
手を引こうとすると、リーフはすぐにこちらの手を握った
指揮官、いいんです……
彼女はそう呟くと、それ以上は言葉で説明するのを諦め、代わりに手を強く握ることで自分の感情を伝えた
し、指揮官の手は、温かいですね……
彼女は恥ずかしそうに真っ赤な顔をして俯いた。しかし、その言葉に拒絶の色はなかった
こ、子羊が眠ったみたいです
ふたりで一緒に子羊を抱いて静かに立っていた。すると、リーフが小さな声で呟いた
あの……
リーフは少し手を広げて1歩近付くと、こちらをしっかりと抱き締めた
私……指揮官にもっと近付きたいです
白い子羊はふたりの間でぐっすり眠っている
そして、こちらを見つめるリーフの表情には、なんとも言えない穏やかな優しさが溢れていた
指揮官、今日は私のわがままに付き合わせてしまいましたが……もう少しだけ、わがままを言ってもいいですか?
では……指揮官、ひとつ訊いてもいいですか?
彼女の真っ赤な顔が、この言葉を言うのにどれだけ勇気が必要だったかを物語っている
この挑戦が終わったあと…...もう少し指揮官と一緒にいてもいいですか?
耳元で囁く声は吐息のようだった。今にも溶けてしまいそうな蜜のように甘い
先ほどよりも温かな体温を強く感じた。爽やかな花の香りがする
そして、リーフは隣に寄り添ってきた
彼女は顔を上げ、可愛らしい笑顔を見せた
指揮官にくっついていると……暖かい……
ごめんなさい。なんだか安心して……眠くなってきました