今度こそ[player name]を驚かせてやる……
馴染みのある姿が、水際でこちらに背を向けて忙しそうにしている。しばらく待っていたが、ついに我慢できず、そっと彼女に声をかけた
ぎゃああああ――――――
人魚は奇声を発して地面にひっくり返り、手に持っていた物を全部ばら撒いてしまった
ど、ど、ど、どうしてもう来てるの?
作戦大失敗……
ラミアの計画が何かはわからなかったが、まず彼女を起こしてから、地面に散らばった物を拾い集めた
鮮やかでかわいらしいカラフルな包装紙からは、微かに木炭や硫黄の匂いがする。これは、花火だろうか?
なんとなく状況が読めてきた。改めて、彼女の後ろにある整備された砂浜を見た
遠くで穏やかに打ち寄せる人工の波、それを背景に綺麗な砂浜が広がっている。まるで人魚の小さな庭園のようだ
砂に突き刺さった花火と小さなキャンドルは、未完成の歪なハート型を形成している
彼女はこの準備に相当な時間をかけたに違いない
人魚はうなだれて指をいじりながら、がっかりした表情をしていた
はぁ……暗くなってから、あなたに見せようと思ったのに……
これじゃ、サプライズにならないよね?
ほ、本当に?
彼女はほっと胸をなでおろし、笑みを見せた
え?来なかったら……来なかったら……
彼女は急に困惑した表情になり、眉をひそめて、ぼそぼそと何かを呟いた。その様子を見て、思わず笑ってしまった
笑い声を聞いた人魚は一瞬呆然とし、すぐに不満そうに抗議の声を上げた
ちょ、ちょっと……!からかったの!?
も、もう!どうせバレちゃったし、ちょっと休憩……
ラミアは頬を膨らませ、そのまま膝を抱えて座り込んだ
せっかく彼女がここまでやったのだ。暗くなる前に、最後までやらなくてはもったいないだろう
手を差し出すと、ラミアはこちらの真剣な表情に促され、少しためらってから小さな声で答えた
えっと……わ、わかった……
夜が更けてから、ラミアと一緒に準備した花火とキャンドルに火を点けた
あっという間に花火は鮮やかに咲き誇り、眩い光を放った
そっと彼女の手を握ると、彼女の体が一瞬びくりと震えた。そして、静かに手を握り返してきた
夜が深まると、花火はますます明るく輝いた。それを見たラミアは後ずさり、縮こまった
うぅ……思ってたのと違う、明るすぎて目がチカチカする
でも、せっかくこんなに時間をかけたんだし……
もう少し……もう少しだけそのままにしておいて……大丈夫、あなたを見てるから
ついに最後の花火が燃え尽き、燃えカスから細い煙が上がった。周囲に静寂が戻ってくる
ラミアと一緒にくすぶっている火を全て消した。彼女は俯いて燃えた跡をじっと見つめ、何かを思い出したように少し寂しげな表情を浮かべた
これで……終わり?
思ったより短い。でも、まだプレゼントがあるから……ちょっと待ってね
心配しないで、もう準備できてるから
彼女は人の背丈の半分ほどの大きな壺を持ち出してきた。壺の中から、チャポンチャポンと水が揺れる音が聞こえてくる
皆が話してるのをこっそり聞いたの。七夕の朝の井戸水にはすごい効果があって、魔除けや病気の治療、長生きなんかに効くって!だから必死に探して、いっぱい汲んできた!
根拠はよくわからないけど……
ラミアは……指揮官には大きなケガとか病気とかしないで、ずっと健康でいてほしい
花火みたいに……いきなり、消えないでほしいから……
お祭りの日なんだから、本当はもっと楽しい話をするべきなのに……
楽しい……楽しいこと……
うぅ、思いつかない。もう、指揮官と一緒にお祭りをすごせるだけで十分幸せだし……
無意識に指をいじっていたラミアは、今になって自分が言った言葉の意味を理解したのか、がばっと顔を上げ――
ぎゃ――!なんで私、心の声が出ちゃってるの!?い、今のナシ!聞かなかったことにして!
彼女が動揺している時の表情や仕草は豊かで、見ていて飽きない
こ、これじゃなくて……そ、そうだ、歌を歌ってあげる
ふんふん~ふんふんふん~
