Story Reader / イベントシナリオ / キャッスルクエスト / Story
ふたりともご苦労さま！
今回収集したデータは互換機能を調整するために非常に参考になる。やっぱり実在の人を対戦相手にするのは違うなぁ
設計者の私でさえ思いつかなかったアクションがいくつかあった。うーん……次のパッチの前にユニット間のバランスを更新すべきか……
ルールとUIデザインがもう少し改善されれば、このゲームは商用販売、それもローンチタイトルとして一括販売の可能性すら……
……
レオニーは今回のテストの結果を興奮気味に報告し、バネッサは接続デバイスを外したまま何も言わずにカプセルの上に座っている
最後の対戦、ゲームの限界ラウンド数を計るのにとても有用だったわ……コードを書いている時、この特定のパラメータを触発するとソフトがクラッシュするなんて気付けなかった
それもこれも、バネッサ指揮官が[player name]にしつこく付き纏ってくれたお陰だわ……あれ？バネッサ指揮官、なんかちょっと顔色が？
ねぇ――私が話してるの聞こえる？き――こ――え――る――？
これはいくつ？私のこと見えてる？まずい……これは長時間潜入の後遺症じゃない？え……どどどうしよどうしよ？スターオブライフの緊急コールって何番だっけ！？
……うるさい
聞こえてたの！？ならどうして無視するの？ラボの事故かと思ったじゃない！
え、不機嫌？どうして？
レオニーは混乱したようにまばたきをした。バネッサが今そこまで不機嫌な原因は何なのか、彼女は本当に理解できない様子だ
あなたが？あ、もしかして潜入の時、私が見ていない隙にこっそりバネッサ指揮官をいびってたとか？
もしそれが本当なら、バネッサ指揮官にただちに謝罪するべきよ！
わ……私？私が何かした？
ごめんなさい！何が気に障ったのかわからないけど、申し訳なかった！
客人のために軽食を用意しなかったから？それとも、部屋の芳香剤の匂い？そうか！コネクトシステムの枕の質ね？先日、[player name]が文句を言ってたけど……
……いい加減にしろ
別に気分を損ねてなどいない、さっきは気が散っていたんだ
バネッサはレオニーに向かって、これ以上ない作り笑いの笑顔を絞り出した
そ、そう？なるほど……
レオニーは、バネッサの言葉を本当に信じているかのように、ほっと息を吐いた
この構造体は何なの？
バネッサは独り言のように呟いた。彼女の眼差しと表情がその瞬間の不快感を表していた。少なくとも自分の目にはそれはあからさますぎるほどに明白だった
ふん……変人の集まりか
道理でお前が目を付けられるわけね
……どこからそんな言葉が？
世界政府芸術協会の利益だとして、どの立場から私に礼を？
何？戦術シミュレーション訓練で私に完封された過去の恥ずべき歴史を思い出したの？それなら確かに私に感謝するべきでしょうね
最後の試合では、ソフトがクラッシュしなければ、最終的には私が勝っていた
あれは油断させるための戦術
そんなお遊びみたいな勝ち負けにこだわるなんて、どこまで子供っぽいの？
重要なのはデータであり、この一点で、お前が私の足を引っ張っていないことには安堵してる
今日はここまで。隊員の心身の状態を合理的に調整することもリードテスターの責任のひとつだからな
次は遅刻しないように
バネッサはさりげなく手を振って別れを告げると、さっさと世界政府芸術協会を後にした
ちくしょ――！なんでまた間違ってるんだあああああ――！
そう遠くない端末の前から聞き慣れた叫び声がした
「ハムレット」のカプセルに接続された外部待機画面上では、黒髪の青い瞳をした少女のアバターが、それを見ながら小さくあくびをしていた
