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振り返って一歩踏み出す間もなく、急に強い力で腕を引かれて体が後ろに倒れそうになった
指~揮~官~
誘ってきたのはそちらでしょう、どうして私を見て逃げようとしたの?
日頃ヴィラにお世話になっているお礼と感謝を込めて、今日の七夕のイベントに招待したのだった
ただヴィラの笑顔を見た瞬間、なんとなく嫌な予感が――つい、無意識に逃げ出そうとしてしまった
突然誘ってきて突然逃げ出して、そして今度は突然謝る……アハ、もしかして、何か悪だくみでもあるの?
こちらが言い終わる前に、ヴィラが強引に言葉を遮った
今日は祝日みたいね、何のお祝い?
ヴィラは気付かないという様子だ
しかたなくヴィラに目線で合図され、七夕の由来と習慣を彼女に説明した
あら、愛に関する祝日ってこと
でも、不思議ねえ。どうして指揮官はわざわざこの日に、私を誘い出したのかしら?
もしかして、私とデートしたいの?
デート、したかったの?
これ、デートよね?
ハァ……
ヴィラはイライラした様子で溜め息をついた
私に感謝するためにイベントに招待して、ここで待ち合わせたんでしょう?デートって、会う約束をすることじゃなかったかしら?
なにをウジウジしてるのか、さっぱりわからないわ
ヴィラの苛立った表情は演技ではないようだ。自分の考えすぎだったのだろうか?
……
……
やっぱり私とデートしたかったのね、指~揮~官?
だから、会った時から変な行動をしているわけ
そんなことを考えていたなんてね
特別な日に私を誘っておいて、何もないフリ。あなたのその矛盾した感じ、すごくウブで可愛いわよ
とっても楽しいデートになりそう
ご褒美として、デートの誘いを受けてあげる
ただ、私みたいな鼻つまみ者の構造体と一緒にいたら、あなたまで嫌われちゃうかもしれないわよ
嫌われて帰る家がなくなったら、膝を抱えて私に懇願なさい。私は慈悲深いの、そうなったら部屋の隅に小さな寝床を用意してあげてもいいわ
アハ、そうよね。指揮官はすごく人気者ですもの
うかうかしてたら、他の構造体に取られちゃうわ
でも覚えておいて頂戴。相手が誰であろうと、一度私の手に落ちたら私のものよ
ヴィラはこちらの腕を掴んでいる手に力を込めた
私、とっても欲張りなの
誘ったのはあなたよ。私が満足するまで帰さないから