夜風になびく真紅の長い髪が、まるでこの夜を焼き尽くす炎のように風の音を切り裂いていく
地獄のように燃える炎の中こそ、まさに「ケルベロス」の戦場なのだ
しかしその侵蝕体たちはケルベロスに興味を示さなかった。流れる水が岩を避けるように、別の方向へと進んでいく
あンだこのザコども……逃げんな!
21号!
21号は、手慣れた様子で眼前の侵蝕体を両断すると、すぐさま木造屋根に飛び上がった
9時の方向、敵が住民の避難所へ向かってる
別の敵が……戻ってきた
私たちの車……!
21号の指差す方向を見たヴィラは、侵蝕体の集団がケルベロスの車に向かっていることに気付いた
【規制音】!車か!
隊長!
町の中央に立っていた看板が、激しい炎に耐えきれず大きな音を立てて倒れ、ヴィラと他のふたりを隔ててしまった
ふたりとも、あの人たちを助けに行って!
隊長は?
こっちは私が片付ける
無人エリアは無人なのが正常なんじゃねえの?
その言葉、任務報告書に書いておくわ。人間が誰もいなくなったら、誰が道案内してくれるの?
さっさと命令通りに動いて!
クソっ、もう一度か……
サンシチ、行くぞ!
21号が屋根から飛び降り、デコボココンビの姿は炎の中へと消えていった
ヴィラはすぐさま、ふたりとは反対の方向に向かって旗槍を力強く投げ、車までの道を拓いた
あんなガラクタが好きだなんて、信じられない悪趣味ね!