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夢魔の挽歌‐2

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「むかしむかし、賢明で慈悲深い国王様と王妃様が治める国で、たくさんの人々がとても幸せに暮らしていました」

「ですが、国王と王妃には悩み事がありました。ふたりには子供がいなかったのです。国王と王妃と国民は一緒に神様に祈りました。どうか、子供を授けてください」

「その祈りは神様に届きました。ある日、王妃が沐浴していると1匹の蛙が飛び出してきてこう言ったのです」

「神様はあなた方の祈りをお聞き届けになりました。もうじき、あなたが望まれる御子がもたらされるでしょう」

もうすぐ長い冬がくる。ソルトバラ居住区の皆は、航路連合から運ばれてきた補給物資の中身をチェックしていた

補給確認中の住民

おい……結構な数が消えてるじゃないか

トラックのチェーンが切れてがラドガ湖に落ちたとか……そんなふざけた話、信じられるか!

どうせユウリたちが横領したんだろ。野蛮人のクソッタレどもが……ただでさえ連合からの補給は少ないってのに……!

補給確認中の住民

ありえない……これっぽちの物資で冬を越せというのか?

おい、エフゲニー!あんた、ここの責任者じゃないか!何とか言ってくれよ!こんなんじゃあ、パニシングなんか来なくてもくたばっちまうぞ!

補給箱の周りにどんどん人が集まってきた。先頭にいる男の人たちは、怖い顔をして言い争っている

父さんは人に囲まれて、しかめっ面のままだ。あんな顔をするのは、パニシングが爆発して皆が居住区で暮らすようになって以来だ

エフゲニー

わかっている……他の居住地の責任者と話してみるよ。皆、安心してくれ。我々がもらうべき物資はきっちり取り戻すから

……話してみる?この期に及んで「話してみる」、だと!?

その人は思いっきり父さんの胸ぐらをつかんだ

インブルリア

父さん……!

父さんは私を後ろに庇いながら弱々しく首を振った

エフゲニー

なら、どうしろというんだ?

あいつらは俺たちの補給をかすめ取ったんだぞ。奪い返すしかない!横取りした物資であいつらがのうのうと冬を越すのを、指咥えて見てろってのか!

鉄工所にはまだ人が残ってるし、明日ならすぐ動ける。エフゲニー、あんたは俺たちの頭なんだ。俺たちはあんたについていくぜ?

エフゲニー

だが……

ヤコフは笑顔を引きつらせながら、手に持っていたリストを父さんに叩きつけた

見ろよ。この物資じゃひと月も持たないぜ?あんたは頭なんだ、自分たちの居住区のことをよく考えてくれよ?

それに、仮に俺たちが動かないでいても、そのうちあいつらの方が殺しに来るだろうな。よく見ろよ、どう見たって横取りされてるぜ!?

なあお前ら!お前らもそう思うよな?これは皆のためだ!

父さんは集まった住民を見回した。子供を抱えた母親、溜息をつく老人……皆やせ細っていて、希望の欠片もないような顔をしている

エフゲニー

……わかった

…………

人々が去ると、父さんは私の方を振り向いて力なく笑った

エフゲニー

大丈夫、今にきっとよくなる。父さんはこの居住区の責任者、皆が無事に冬を越せるようにするのが仕事だ。そのためには多少……道を外れても仕方ないんだ

父さんは私を見ているものの、口から出る言葉は独り言のようだ

エフゲニー

リアはおうちで父さんの帰りを待っていてくれ。なに、心配することはないよ

辺り一面が火の海だった

何日か前、父さんはたくさんの人と一緒に武器を持って他の居住区へと向かって、それっきり連絡はなかった

そして今。居住区のメインゲートは爆破され、怒り狂った暴徒がなだれ込んできた。物資を奪われ、抵抗する人は殴られ、家ごと火をつけられた

私は部屋の隅に隠れながら、窓の外に近づく火を見ている。燃料が足りずにずっと寒いままだった家は、今とても暑い

インブルリア

コホッ、コホッ…………父さん、なんで帰ってこないの……?

突然家の扉が開いて人が走り込んできた。……父さんだ!

インブルリア

父さん!どこに行ってたの?……怪我してる!

エフゲニー

リア!!よかった……すまん、遅くなった

父さんは私を抱えると、外に走り出た

エフゲニー

とりあえずここから逃げるんだ!

どれほど走っただろうか。炎と悪臭に追われながら、なんとか廃工場にたどり着いた

工場は居住地から逃げ出してきた人でいっぱいだった。血と絶望に覆われた顔、顔、顔……。全身に火傷を負い、苦しみのあまり地面を転げ回っている人もいる

私と父さんが中に入った瞬間、皆が一斉に静まり返った。こちらを睨みつけるたくさんの顔には、私にはよくわからない何かがにじみ出ていた

分別のついた今ならわかる。あれは――「恨み」だった

???

火の勢いがおさまらなければ、エネルギーステーションは……

誰か言った言葉に、工場は再び死のような静寂に包まれた

エネルギーステーション。この辺りで唯一動いている集中式エネルギーステーションだ。もしそれが壊れてしまったら、ソルトバラ一帯の人は生きる場所を失ってしまう

エフゲニー

その心配はない。エネルギーステーションには消防連携制御システムがある。防火扉さえきちんと閉まっていれば、火がコアまで届くことはない……

し、しまった……扉は開いてやがるッ!

エフゲニー

なんだと!?なぜだ!?

イワンは震えながらヤコフを指さした

ヤ、ヤコフがか、隠すのにちょうどいいって……

黙れ!今はそんなことしゃべってる場合じゃない!

エフゲニー

……エネルギーステーションの防火扉を閉めてくる

すぐに戻ってくるから、いい子で待ってるんだぞ

父さんは私の頭をなでると、振り向くことなく工場を飛び出していった

イワン!俺たちも行くぞ!

なぜか動揺しているイワンの手を引いて、ヤコフも父さんのあとを追った

それからすぐに、遠くの方で何かが爆発する音が響いた

それ以来、父さんは戻ってきていない