カリブ海付近のとある場所……
チッ、これがルナ様の解決方法ってわけか?
本人を説得できないからって、周りの弱者をどうにかするのかい?
ルナ様のご意思である以上、我々は実行するのみだ
……君は何でもかんでも「ルナ様」だね
もういいよ。君はそういう人だ
どう?見つかった?
ああ、いたよ。隠れるのが得意なようだ
世界政府北米支部の地下掩体だね。研究施設として使っているみたいだ
もともと弾道ミサイルの攻撃を防げる施設だ。侵蝕体や目視捜索なんか簡単に回避できる
どうする?今から突っこんでいって、バラバラにする?
ちょっと待って。付近を調べるわ
相変わらず慎重だね
これは戦争だぞ
「あれ」との?
全ての「代行者」との、だ
……そこまでのことかな?
「代行者」たちの利益や求めるものはそれぞれだが、いずれも昇格ネットワークに選ばれた「執行官」であることには変わりない
我々は本来、昇格ネットワークが追求する利益のために仕えているのだ
だからこそ、信念や旗をもって……衆愚を統制せねばならん
抑止力のない旗は、空中楼閣も同然……何ら価値はない
…………
だから言ったのだ。ルナ様の前であのような話をするべきではなかった
ふぅん、大体わかったよ
ただ、ルナ様は……ルナ様が本当にやりたいことは、一体何なんだろう?
以前と変わらない。「新世界」のために「新人類」を選別することだ
そのあとは?
そのあとのことを話し合う必要がどこにある?
ガブリエルさん、僕は――
?
――昇格ネットワークって一体何だと思う?
わかっているのは、ルナ様の力によって僕たちが……昇格ネットワークに繋がりたい者を選別できるということだけだ
もし「選別」中も自我を保つことができたら……昇格者になる
そうでなければ、脳みそのない廃棄物同然に成り下がる
遠くでロボットのように捜索命令を実行している侵蝕体に向かって、ロランは口を尖らせた
なぜ「ルナ様」なんだ?
……
なぜ「僕たち」なんだ?
……
考えたことがないとは言わせないよ
……何を考えるんだ?
……どうやら、訊くだけ無駄だったみたいだね
……
問題ないわ。いつでも作戦を開始できる
オーケー。じゃあ始めようか
追跡任務の方は、君に任せるよ
あなたに言われる筋合いはないわ
……ふん