……うっ……ゴホッ
全滅、ね
次はお前の番よ、隊長さん
いいえ、それはないわ。それに言っときますけど、こいつらは赤の他人みたいなものなの
お前たちの関係性などどうでもいい!
薄暗い地下鉄駅は残骸だらけだ。赤髪の女性構造体は、侵蝕体の真正面に立ち、挑発を繰り返していた
侵蝕体は執拗にヴィラを攻撃する。地面から弾丸のような棘が射出され、ヴィラは破れた壁まで追い詰められた
あなたをここで始末してもいいのだけれど、もっと苦しませてあげるわ
グレイレイヴン、あいつらにしましょう。アハハ
ここまで運べば十分でしょう
それにしても、グレイレイヴンの指揮官はどうしようもない甘ちゃんね。情報を確保次第、報酬と引き換えにこちらに寄越すと言っていたし
本当にバカなのか、それともなにか企んでいるのか……いずれにしても、面白いわ
ヴィラは侵蝕体ティファが収容された保存カプセルを、ぞんざいに通路に置いた。そして、あとのことは一切気にせず、ティファにエネルギーを接続する
壊れてしまった脳は、保存カプセル上部のスクリーン越しに驚きを表明することしかできない。強烈な攻撃を受けた機体そのものが、ティファの意識を閉じ込める棺となっている
スクリーン上に、慌てた表情と落ち込んだ表情が表示される。グレイレイヴンのリンクを通じ、ティファは自分と指揮官の過去を強制的に思い出したのだ
そして、自らの過ちを理解した
ヴィラは、ティファの顔をそっとなでる。まるで、慰めているかのようだ
あ……私……私……一体……
泣いてるのね、ティファ。人間性を取り戻したあなたは今、痛みを感じているわよね?
指揮官……どうして、どうして……彼たちには指揮官がいて……私の、私の指揮官は……
痛みを感じなければ生きているとはいえない。痛みがなければ、自分自身の存在を証明できない
私の任務はティファを殺すこと。そして、ティファは今、ここにいる
ヴィラは優しくあやすように、ティファの顔をなで続ける
だから――あなたをここから逃してあげる。見送ってあげる。痛みも苦しみも、全部私に寄越すがいいわ――他の人がそうしたように
これがあなたに唯一してあげられることよ、ティファ
――ヴィラは手を高く上げると、ティファの脳を保存カプセルごと貫き、全てを粉々にした