スミスよ。君のご子息、次代のスミスのことは――あれでよかったのか?
あなたは、勇者の物語をお聞きになったことが?
まさか、君の口から「物語」という言葉が出るとはな
私が真の「スミス」になった時、先代のスミスから聞かされたのです。いわく、勇者が魔王を討伐するのは当然の道理
勇者は魔王を倒さねばならない。それが、勇者として生まれたものが成すべきことだからです
幼い頃から研鑽を重ね、適切な年齢になったら街を出て、魔王討伐へ旅立つ
全ては運命、全ては他者の采配。勇者の人生には、おのれの意思というものは存在しなかった
ようやく魔王と対面した勇者に、魔王は問うた。「我を殺すか、それとも世界の半分を手に入れるか」
勇者はなんと答えたと思われますか?
もちろん、魔王を殺すと言いたいところだが、そんな風に訊くということは違うのだろうな
そう、「世界の半分」を選んだ。決断も選択もしてこなかった勇者には、何もわからなかったのです。私は次のスミスに、勇者になって欲しくはなかった
……
あらゆる破片を、欠片を拾い、つなぎ合わせていく
そして、「スミス」は完璧な怪物になる
クロム。君は「スミス」への道を歩み始めたのだ