それから、私と指揮官は空中庭園の訓練施設でさまざまな訓練を行った
戦場に出たいとは思うが、隊員を欠く今の状況では、空中庭園に認められないだろう
おい、あれって例の首席じゃないか?
[player name]か。呑気なもんだな
なんといっても首席様だからな。あの構造体も建前上あてがわれてるだけで、そのまま一気に司令部配属になるんじゃないか?
お膳立てが整ってるってわけか。ひとりきりの小隊を選んだのも、出撃する必要がないからだな。羨ましい限りだよ
事実無根の中傷。だが、肝心の指揮官が反論しない以上、隊員である私も軽率に動くべきではない
……そもそも、ああいうことを言われるのは、指揮官が私を選んだからだ
同じような陰口を耳にする度、なぜ他の小隊を選ばなかったのかと訊きたくなる
指揮官は優秀だ。戦場に出れば、誰もがその実力に感嘆するだろう
上層部に対して、指揮官のマッチングをやり直すよう申し出ることも考えた
でも、指揮官はいつも同じことを言う。まるで私の思考を見透かしているかのように
今のままがいい
その言葉を聞く度に、私の中に「感情」に似たものが芽吹く
「わがまま」と称される類の感情を感じ取った私は、反論を控えた
そうだ。指揮官とすごすことで、私はさまざまな「感情」を学んだ
構造体も、もとはといえば人間だったのだから、「感情」というものがなんであるかわかっている
でも、指揮官のお陰で、私はもう一度感情というものを学びなおした。皆がいう「リセット」のようなものだ
たまに贈られるプレゼントで、「喜び」を学んだ。最初こそ、任務結果を肯定する物だととらえ、気にもとめていなかったけれど……
やがて、それが決して褒賞の類ではなく、指揮官からの「贈物」であることを理解した
指揮官が私に分け与えてくれることに、心が躍る
これが「喜び」という感情だ。指揮官にお返しをしたかったが、決まって同じことを言われる
ただ笑っていてくれればいいよ
……とても難しい命令だ
「悲しみ」の感情も学んだ。指揮官に対する中傷は日に日にエスカレートし、私はそれらの言葉の影響を受けないよう、自分を律した
だが、どうやっても耳に届いてしまい、私の意識海はひどくざわめく
自分のためではなく、他人のために感じる…これが「悲しみ」。指揮官の隣に立つ者として、受け入れがたい誹謗中傷
だから私は、いつの日か指揮官の実力を証明できるよう、刀を振るい続けている
それから、指揮官の考え方を学び、指揮官の行動にも注意を払った
人間と構造体。それでも私は、もっと指揮官に近づき、指揮官にとって一番優秀な隊員でありたいと思っている
――だから私は、「怒り」も学んだ
ルシア、挑戦を受けるよな?
これは……どういうことですか?
その日、指揮官は非番だった。私はマッチング待ちの小隊からトレーニングルームに呼び出された。彼らは武器を構え、「指揮官を賭けて争う」と言うのだ
私が負けたら、指揮官をあなたたちに譲る……という意味ですね?
俺たちならいつでも戦場に出られるんだ。だが、お前ひとりの隊では、いつになるかわからないだろう……
はぁッ!
まさか!?
私は迷うことなく攻撃を仕掛けた。双方が武器を手にした瞬間から、戦闘は始まっているのだ
勝つためには手段を選ばないのか!?
ひとりを倒したところで、残りの構造体は隊列を形成して一斉に武器を構える
手段を選ばないのはそちらでは?多勢に無勢……これがまともな戦闘と言えるんですか
黙れ!これが小隊戦闘の基本戦術だ。総員、かかれ!
了解!
私を負かすことが目的なのであれば、相手になどしない。ここで勝ったとしても、何にもならないから
だが、指揮官が関わるなら話は別だ
指揮官が私から離れる日を迎えるのは嫌だし、他人が指揮官を賭けの対象にすることも嫌だ
先ほど倒した構造体の刀を拾い、隊列に突っ込む
何人いようが相手にはなりません。指揮官は……私の指揮官です!