ルシアが膝をつくと同時に、リー、リーフ、アイラが塔の天辺にたどり着いた
すでに敗北は認めています……空中庭園、華……くっ!
な、なに!?
いつのまに……
華胥を所有していながら、ここまで近づいても気づかないとは……
否、「所有」するからこそ気づかなかったのか……ご苦労だった、我が同胞よ
ガブリエルは捻じ曲がった巨大な手を曲の体内から引き抜くと、もう一方の手で曲を遠くへと投げ飛ばした。一瞬のうちに、曲は皆の手が届かない場所へと落ちていった
何てことすんのよ!
怒り、か……貴様らは敵の身を案じて怒りを持つのか?
ガブリエルの手から奇妙な光が溢れ出ている。手中の純白の立方体が変形、融合、解体を絶えなく繰り返しているのだ
華胥の一部だ。まるでダイヤモンドのように美しい……
これはほんのひと欠片にすぎない。そう、鍵のようなもの……本体は他所に隠されているようだな
ひと欠片といえど、手に入れればシステム全体を掌握したも同義。それゆえ、曲は貴様らにこれを渡したかったのだろう
だったらさっさと返しなさい!
アイラは叫びながらガブリエルへと攻撃を仕掛けた。対するガブリエルは一歩下がり、弾丸と大鎌が襲いくる前に悠然と本をしまう
そして再び巨大な手を振りあげ、風の渦を巻き起こした
近づけ……ない……!
貴様らには感謝している。これは本音だ
お陰で昇格者同士が争わずに済んだ。何者も得をしない、悲しみだけが残る戦いを避けることができたのだ
あんなことをやっておいて……悲しみなんて感情があるの!?
全てはルナ様の願いを叶えるため。それを踏まえて、我々の考えをわかってもらいたい
我々とルナ様の目的はひとつ。……パニシングと共存できる世界の創出だ
ルナ様の願いは、パニシングと共存できる世界の創出だ
パニシングと共存なんて……そんなのどうやったら……!
ロランがせっせと励んでいる仕事のことか?
昇格者を増やすというのは、ほんの一部分にすぎん。重要なのは昇格者たる我々の責務を果たすこと
責務だと?
新しい世界での生存に適した個体を選別し、可能な限り我々の同胞とすることだ
そんなこと……神にでもなったつもりか……?
我々は守護天使でしかない。神となるのはルナ様だ
グレイレイヴンよ。私はずっと貴様らが戦う姿を見てきた。強く輝く不屈の意志を持ち、まさに新世界に適した存在たりえる……
どうだろう?ともに、ルナ様の力にならないか?
そうか……
新世界の礎になってもらう……いつの時代にも、尊い犠牲はつきものだ
理解し合えないなら、ここで貴様らを滅するほかあるまい……これもルナ様が望まれたこと