Story Reader / シークレット / 11 九龍夜航 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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11-5 クモの糸

よかった……倒してくださってありがとう……

分身が倒れれば……本体の力も大きく削がれるでしょう……

これで、全てが……終わる……

僕たちの勝利が……兄さんたちの力になるのか……

華胥は微かに表情を和らげた。まるで、何かに別れを告げるような柔らかな笑み

クロム……ゲシュタルトと同原の……私の本体は、真の九龍にあります……

川に沿って……お行きなさい……

空間が振動して壁が崩壊し始め、自分の足下さえも定かでなくなっていく。彼方には、朧げながらも馴染みのある人影が見えた

クロムは少し立ち止まり、振り返った。そして、消えつつある華胥の分身を見つめる

いい…………ものですね………………人間…………とは……………………

夜は明けていた。グレイレイヴンが甲板で待っている。制御を失った船はバランスを崩し、大きく上下に揺れている

……これにて任務完了、ですね……では、僕は任務報告をまとめますので、通信はここまでにしましょう

本当にリーと話さなくていいのか?

皆さんが空中庭園に帰投されてからにしますよ。今は情報の整理が最優先ですから……それでは、また

……

……彼は言わなかったが、私は危ないところを彼に救われた。危うく夢に沈められるところだったのだ

なぜ……お前たちは夢に閉じ込められなかったのだ?

空中庭園の構造体だからか?なにか技術的なものが……

いいえ、嘲風。空中庭園にその種の技術はありません

では、なぜ?

それは……あの夢が、美しくなかったからだ

クロムは嘲風の肩を軽く叩き、手を振った。そのままグレイレイヴンの方へと向かい、指揮官と言葉を交わす

カムイも後に続こうとしたようだが、すぐに引き返してきた

これ、やるよ!俺たちストライクホークの隊員バッジ!

私に?

もし九龍衆を辞めるんだったら、うちに来いよ。結構合うと思うぜ!

おーい、みんなー!!

カムイはバッジを渡すなりクロムに走り寄り、グレイレイヴンの面々と一緒に騒ぎ始めた

嘲風はそっと、ストライクホークの隊員バッジを握りしめる。徐々に白む空の下、思い思いにはしゃぐ面々を見つめながら――

その仮面の下の目を、わずかに細めた

カムイはクロムの背中を思いっきり叩いた

クロム

……最後はグレイレイヴンに助けられました……ありがとうございます……

ルシア

いえ。皆、目的は同じですから

終わりましたね……この船もやっと、本来あるべき場所へと帰ることができる

クロム

……ええ、「九龍商会」の真の牙城。この船が最後に停泊したであろう場所へ……

リー

「真の牙城」?

クロム

ここの「九龍」は人を惑わせるだけの夢にすぎません。偽りの航路を巡り続けているだけです

偽りの航路が海図から消えた今、無限夜航も終わり、船は本来あるべき場所へ帰港するでしょう……

カムイ

おい!みんな、見ろ!!

船首の先、薄暗い雲に突き刺さる天の光が見える。そして、奇妙な形の巨大な塔が現れ…………地平線を真っ二つに分断した

ルシア

…………