Story Reader / パレットクラッシュ / リーと歩く / Story
……
……
スプレーガンがリーの面前に構えられた。返礼であるかのように、リーも同じ方法でやり返している
ふたりはその形で対峙してピクリともせずに、誰かがこの膠着状態を打破してくれるのを静かに待っていた
その覚醒機械はマルクの存在を察知するとすぐに、頭部のモニターにクラシカルなピクセルの笑顔を表示させた
どうやら私の勝ちのようだ
我が仲間よ、早くこっちへ来てこの機械体をやっつけてくれ
……
マルクはゆっくりとスプレーガンを構え……
そして、覚醒機械の後頭部にぴったりとあてがった
すまん、私は秩序を重んじる中立の機械体なのだ
……
至るところで騒動を起こしていた機械体やスプレーマシンを一網打尽にしてから、ゆっくりとひと息ついた
ここまで決して楽な道のりではなかった。「戦争」に介入してから、自分の身体の上で再三イメチェンを繰り返された
裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者……
端に放置された機械体は両手足を上にして、仰向け状態で縛られていた。機械の身体に対するその理解度を見るに、マルクの仕業だろう
裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者……
無機質で感情のない言葉が何度もリピートされ、マルクは我慢できずに画板を叩いて抗議した
そのリピート再生システムを早く止めろ！
裏切り者、裏……裏切りぃィィィィィィギギギィィィィィ……
モニターには口をイーッと歪ませた恐ろしい顔が表示された
リーは機械体の数の把握を終えて、一番小さな機械体に向かっていった。どうやらその機械から始めるつもりのようだ
……
少し話をさせてください
なぜ都市のインフラを壊すのですか？
それはただ巻き添えを食らったにすぎない
巻き添え……
塗料にまみれた街灯24本のことですか？それとも塗料に浸食されて故障した小型エネルギー貯蔵装置4個、踏まれて壊れた道路修理ロボットの保管箱2個のことですか……
あなたたちはこの通りにあるインフラの半数以上を破壊するところでした
コンステリアの芸術の未来の発展のため、全て必要なことだ
……
コンステリアの芸術の発展のためには、まずはこの都市がしっかりと機能していることが前提では？
これには覚醒機械が黙り込んだ。しかしその沈黙は長くは持たず、モニターには困惑の表情が表示された
都市の……存続？
現在の状況が続けば、およそ5日ほどでこの通りの全ての設備が停止するでしょう
加えて、「戦争」の広がる速度からすると、あと1カ月もすればコンステリア全体のインフラがほぼ麻痺状態に陥ります
その後については、言わずもがなです
だがそれらは全て、芸術主導者を決めてから考えればよいことだ
芸術主導者？
そうだ。芸術主導者はコンステリアを遥か未来へ連れていってくれる存在だ
ちょっと待ってください、まさかそれがコンステリアの都市そのものよりも大事だというんですか？
比べられるものではない。どちらが上なんてことはない
比べられない？どう見ても明らかなのに……
リーさん
創作中だったマルクが突然キャンバスの後ろから半身を出して、リーの話を遮った
リーさんはもうその点を考えない方がいいと思うぞ
そこについては、あなたは皆を説得できないだろうから
