Story Reader / 叙事余録 / ER13 織り奏でる緒言 / Story
鏡の中の自分は本当の自分なのだろうか。他人と異なる外見と経歴で、
自分を構成する要素は一体何なのだろう？自我とは何か？自我は、本当に存在しているのだろうか？
誰も自らの結末を知らないし、運命を操っているのが誰なのかも知らない
王は民に命令ができるかもしれないし、親は子に影響を与えるかもしれない
それでも、自分の運命は自分で選ぶことができる。自分の人生を本当に握るのは、自分だけなのだ
記憶が徐々に完全かつ鮮明になるにつれ、痛みが体に戻ってきた
あら？やっと起きたのね
……聞こえる？
この繭のような箱庭に迷い込んだのは偶然ではなく、彼女自身の意思と要望によるものであり、全てに決着をつける必要が彼女にはあったということだ
ここで彼女を待つ者がいれば、外で彼女を導き、信じ、彼女が本心に従った選択をすることを願う者も多くいる
彼女はここでは時間が重要ではないことに気付いた。特定の瞬間が永遠に続き、巻き戻って存在し、それらは至るところにあり、それらこそが意味を持つ
あなたは私、だからよくわかる……
……
戦争は全ての人の過去と未来を奪うものよ
私は戦争が終わることを望み、あなたはずっと戦争の中にいたいと願っている……なぜならあなたはいつだって自分は1歩先行していて、必ず勝つ側でいられると信じているから
これだけのことを経験してきて、まだ人間の本性を信じているの？
彼らは生まれつき争いが大好きなのよ、それも果てしなくね。たとえパニシングがなくても、きっと別の争いの理由を見つけ出すわ。バベルの塔は、人類全体の棺となる運命なの
一時的には、戦争が終わることもあるかもしれないわね。でも、永遠には終わらない。ここに残って、私があなたの側にいてあげる……
ありがとう、エレノア。でも……
今の私には、選ぶ自由があるの
……私を捨てるつもり？まさか、あなたが一番嫌っていることを私にするつもりじゃないでしょうね？
手を挙げた彼女は、過去という名の赤い糸が自分の心臓を通って感情という色に染まり、懐かしさを帯びたハサミの形へと編み上げられていくのを感じた
「これからは……これからは人生も自分の好きな形に縫い合わせていけるんだ」
捨てたりしない。ただ、それは必ずやってくる別れなだけ……
もう別れを恐れないわ
忘れた方が楽かもしれない。だが、彼女は胸を強く締めつけるために全身の力を蓄えていた
ハサミを掲げたシュエットの心に、澄んだ冷たいさざ波が広がった。これこそが、彼女の新たに生まれ変わった自我――彼女はもう、それを知っている
仮想体験でもいい。夢でもいい。私が存在すると認めたものは全て現実よ
私は彼女を、箱庭の主人を探しに行く
箱庭はひっそりと変わり始めており、かなり前から変質していったようだ
侮辱も失敗も拒絶もなく、そういった物は真に力を持ったことなどなかった
ひとつのシンプルな真理がくっきりと浮かび上がった。決して操り人形になる運命ではなく、ずっと、糸を操る者になる運命だったのだ
選択して過去を断ち切り、未来へ進み、希望を抱くのは全て私自身がやること
だから、私はここに留まらない。私は次へ、次へと自分で決める何かを成し遂げに行くわ……
いいえ、今回は任務じゃなく……これが、私の願いなの！
絡み合う多重の幻影の中で、彼女は窓ガラスを突き破り、箱庭から真っすぐに落ちていった
