Story Reader / 叙事余録 / ER07 雲郷に潜む影 / Story

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ER07-13 彼女の足跡

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「権限認証クリア」という一連の電子音の後、中央制御室の扉がゆっくりと開いた。入口に立っていたのは見覚えのある暗い赤色の姿だった

ふう……扉を開けたのが含英ではなく、君でよかったよ

言ったはずだ、彼女は脅威にはならないと

彼女は何かに気付いたらしく、一瞬動きを止めた

お前は……また自分を改造したのか?

目の前の青年は自分の腕と膝から下の足を機械パーツに交換しており、ますます機械体のようになっていた

ああ……あの人間の反乱軍に襲撃されて、重傷を負ってね。仕方なくだ

私がずっと機械体に憧れているのを知ってるだろう?体を機械化するのはその初志に反するものじゃないからね

アレクセイは中央制御台の周りを少し歩いて見せ、ヴェロニカに目をやった

彼らに代償を払わせてやる

でも……私が心配しているのはそれだけじゃないんだ。人間たちが更にエスカレートし、最終的に我々の「夢」を脅かさないかと心配している

彼らは私を襲撃しただけでなく、空中庭園から援軍を呼び、更には君の同胞を唆して君と対立させた……

彼の口調が激しくなるにつれ、明らかに目の前の女性機械体の怒りが募っていく

……含英にSDC-39。「吊るされた男」は皆こうして、盲目的に人間の味方に立つのだろうか?

そりゃそうさ……機械体にとって人間はそれほど魅力的なんだ

……理解しがたい

人間のために無意味な犠牲を払い、最後は自分が大切にしている人間の手によって命を落とす

SDC-39……彼はあんなにも純粋で、あの橋が天国へと続いていると信じ、人間とともに橋の向こうへ行こうとさえしていたのに……!

彼女は赤い光が迸るランスをガンと地面に打ちつけた

おっと……気をつけて。ここにある装置は、壊れたら修理するのがとても難しいんだから……

ヴェロニカのランスを避けて、アレクセイは反対側から中央制御台に近付いた

そう、SDC-39、我々の友人……何とも悲しいことだ

だがヴェロニカ、私たちにはまだ時間がある。含英を、いや、含英を含む全ての機械の同胞たちを止めることができる

人間を完全に深淵に引きずり込めば、悲劇は二度と繰り返されることはない

これはあの橋に供給する最後の1回だ、ヴェロニカ。空中庭園はもう目の前にある

彼は体をずらし、スクリーン上の供給ボタンを示した

これを押す……それだけでいい。もう1度供給が完了すれば、我々の新世界へとまた一段、近付くんだ

だが、ヴェロニカはすぐにはボタンを押さなかった

アレクセイ、最近のお前はおかしい

お前は当初、あの人間たちに親切だったじゃないか。彼らのために人間の待遇を向上させようと交渉すらしたのに……

ヴェロニカはアレクセイに疑惑の目を向けた

言ったはずだ。どれだけ機械化しようと、お前は機械体にはなれない。お前には機械体のコアがないのだから

人間の身でありながら、なぜ私よりも進んで同胞を滅ぼそうとする?

……

多分……また人間に傷つけられたからだろうね

彼は自分の機械アームに刻まれた弾痕を見せ、軽くため息をついた

私は彼らを信じていた。君が言うように彼らの待遇を向上させ、よりよい環境を与えようとしてきた。だけど……私が得た見返りは何だった?

私はもう疲れたんだ、ヴェロニカ。それに……機械体の新世界を築くことは、私たち共通の願いだったじゃないか

彼の紫色の瞳に、一瞬狂気が走った

その世界には身勝手で薄情な人間も、小賢しいパニシングも存在しない。あるのは鋼鉄の奔流だけで構築された、完璧で無欠な世界だけだ!

機械体により強固な体、より高い計算能力、より厳格な秩序がある。一方、人間はパニシングの侵略にもがくことしかできない。機械体が人間に取って代わるべきなんだ!

何より重要なことは、その世界には一切嘘が存在しないということだ

狂気が消え去り、彼の目には再び言葉にできない色が宿り始めた

ヴェロニカ、私は機械技師として、天航都市の機械体の栄枯盛衰を見届けてきた。今日君は、機械体を真に君たち自身の未来へと導けるかもしれないんだ……

私はただそれを最後の幕が下りる瞬間まで見届けたいだけだよ

彼は天を仰ぎ、悲しげな表情を浮かべたが、その顔には一滴の涙もない

やはり私にはお前たちを理解することはできない

彼女は眉を少しひそめたあと、少し力を抜いた

最終段階の供給が始まっても、天国の橋はすぐには起動できない。私は中央制御室に留まるつもりだ。何人たりとも、天国の橋の起動を妨害することは許さない

だが、街の状況は今もなお非常に緊迫している。このまま反乱軍が休むとも思えない。私の言いたいことがわかるな?

もちろん。私は戻って機械体たちを指揮し、反乱軍を制圧しよう

……

口ではそう言いながらも、アレクセイの足はその場から動かなかった

……お前の目の前で私がこのボタンを押すのが、そんなに楽しみなのか?

ああ、いや……他のことを考えていた

それ以上ヴェロニカに疑われるのを恐れたアレクセイは、ぶつぶつと何やら言い訳をしながら、足早に中央制御室を後にした