Story Reader / 叙事余録 / ER07 雲郷に潜む影 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER07-8 昨日の影

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天航都市会議室

空気がまるで停滞しているようだ。交渉が行き詰まっていることに疑いの余地はなかった

空中庭園の立場を利用し、自分とリーフは政務庁の入り口にいた自律機械体を通して城主と連絡を取ったが、城主の態度は非常に奇妙なものだった

空中庭園から来たといっても、自分たちの拠点はすでに重力の拘束から遠く離れている。「同胞」と呼ぶにはおこがましいかもしれない

しかし、目の前の青年のわざと切り札を弄ぶような態度は理解しがたいものがあった

初めて会った時、彼はまず秘密裡での交渉を提案し、無人の場所を選んだ。だが切り札を握る彼が、何を決めかねているのだろう?

これまで全ての交渉で、彼は最初は協力を切望するような態度を見せるものの、具体的な内容に入るとすぐにはぐらかす

合意の根底は利益だ。こちらがどれだけ彼に有利な条件を提示しても、彼はあっさり拒絶する。彼が本当に気にしているのは……一体何だろう?

それはヴェロニカとは関係ない

彼は短く返事を吐き捨てると、顎を上げてこちらを見下げるような視線を向けた

物資に支援。結局、空中庭園の切り札はそんなものですか?

話題は再びふりだしに戻り、もはや「交渉」や「話し合い」らしい進行とはいえない状況になっていた

何も。あの九龍の機械体はここに残し、空中庭園のおふたりは速やかに立ち去ってください

この都市は設計当初から自立を目指していました。だから空中庭園の世話にはならないという選択ができるんです

磁力加速が一度予熱を開始すると高エネルギー反応を放出するので、あなたたちのセンサーアレイで簡単に確認できるはずです

発射の臨界状態に入る前の数時間で、天航都市はやすやすと宇宙兵器の標的になるでしょう

この小さな都市は脅威でなくなればすぐ、空中庭園にとって関心を失う

だから永遠に軌道上に留まり、自分たちの意のままに再生させ、罰を下すのです

世界を取り戻すより……世界の外側から支配者になる方がどれだけ痛快なことか

彼は善悪を捻じ曲げ始めた

それはこちらの本意をはき違えている。彼は一体、何をしようとしているのだろう?

訴えているようには見えない。むしろ……扇動的な演説に近い

違う、こんなはずではない

アレクセイは、観客の視線を引き付ける舞台の司会者のように手を上げた

その時にはもう遅かった

ドォン――

その考えが頭をよぎった瞬間、爆発が起こった

精確に仕掛けられた爆薬は震動と轟音に変わり、工場のシャッターはねじれ、砕け、溶けた。鋼の雨のような鉄片が空気を焼き、乱雑に交差する放物線を描いて地面に降り注ぐ

煙の向こうに、武装兵士たちの姿が現れた。先頭に立っているのは、以前ユリアに接触してきた反乱軍のリーダーだ

やつらを抑えろ!

最前列で銃を持つ者たちの視線は、彼が命令するまでもなく、工場に入った瞬間にもうこちらへと向けられていた

反射的にホルスターに手を伸ばしたが、圧倒的な武力差がある状況では、その反応速度に意味などなかった

エリートってのは本当に小賢しいな

結局、空からやってきた連中なんかに我々の死活を預けられるもんか

怒りに満ちた招かれざる来訪者たちが、一気に詰め寄ってきた

軽率に動かないようにと合図をすると、彼女は武器を下ろして静かに自分の背後に下がった

ここに潜んでいた反乱軍は明らかに会話を全部聞いていた。アレクセイはだらだらと時間を稼ぎ、このタイミングを待っていたのだ

人は皆、自分の選択に対して代償を払うものです。私も、あなたもね

アレクセイは挑発という目的を達成したが、逃走は計画していないらしい

反乱軍のリーダーは銃口を城主に向けた

前回、林の襲撃では手加減したせいで、お前という裏切り者を命拾いさせちまった

彼は青年の足下に向かって唾を吐いた

兵士たちはそれを機に動き始め、軍靴をはね上げてアレクセイの方に歩きかけた。だが罠を恐れたのか、誰も無防備に近付くようなことはしなかった

アレクセイは不気味な微笑を浮かべ、受難のメシアのように両腕を広げた

武器を持っていないことを示すと、その場に立ったまま、言葉で煽り始めた

あなたたちの目の前にいるこの私は、この街に災いをもたらす機械体の手先……

同胞への憎悪を隠そうともせず、機械体からのささやかな賞賛に喜ぶ男です

稚拙な舞台役者の紹介のような台詞に、怒りに満ちた観客たちは彼が最も渇望する反応を示した

彼のさほど大きくもない身体に銃床が次々と叩きつけられ、自分の前に立っていた2名の見張りの兵士までもが、その暴力行為に加わろうとした

アレクセイは地面にうずくまりながら、ちらっとこちらを見た

人々に蹂躙されたその青白い顔には依然、笑みが貼りついている

困惑が恐怖へと変わった。ずっと拭えなかった違和感が、心の中でぼんやりとした結論を形作っていく

目の前の人物の一挙一動は、まるで傀儡師に操られているかのように、ますますひねくれ狂気じみていく

含英と彼女が追っている相手はもしかして、誤った方向へ引きずり込まれているのかもしれなかった