Story Reader / 叙事余録 / ER06 薄明射す闇塔 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER06-16 危険な局面

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鉱場は薄暗く、故障したいくつかの機械が微かな赤い光を点滅させていた

トロイの機体は先ほどの一撃で一部が故障したらしく、前腕と足首から滲み出た循環液がポタポタと地面に滴っている

なぜ一緒に避難しなかったの?

一歩後退し、ブリギットは探るようにトロイを見つめた

トロイに助けられたが、今のこの状況では目の前の構造体を完全には信用できなかった

……もともと彼らと一緒に避難しようとしてたんですけどね

最後にエレベーターに乗った時、エレベーターのドアが突然ロックされて……鉱井のエレベーターだからものすごく頑丈で、壊して脱出するのに苦労しました

エレベーターシャフトを通って、この……うーん……よくわからない場所に落ちたんですよ。ちょっとうろうろしてたら、ここから物音が聞こえたんです

あなたが信じようが信じまいが、本当にこれが事実です

トロイが嘘をついているようには見えない

もし彼女がまた黒野の命令で現場を隠蔽するために来たのなら、さまざまな権限カードで通路を開けたはず。こんな……散々な目に遭うことはなかっただろう

傷口に包帯を巻いて応急処置をしている時、トロイの表情は不機嫌そのものだった

あのケチなボスが機体の修理費を出してくれるといいんだけど。でないと修理にいくらかかるやら……

こんな場所だと知ってたら来ませんでした。記憶って本当にそんなに大事なものですかね?

振り返る思い出もない夜を過ごすのは、ビール味の電解液疑似酒に頼れば、それほど辛くないですし。そういう類いのものって、大体が高価ではありませんし……

……支援部隊から申請すれば、あなたの機体は修理できるわ

えっ!本当ですか?

もちろん、今回あなたは支援部隊の任務に協力してくれたんだから、私にはあなたの修理費用を申請する権利がある

じゃあ遠慮なく

……いいのよ

包帯をきつく巻く手が止まり、トロイは疑うようにブリギットを見た

なんだか不愉快そうに……見えますけど?

……ごめんなさい。感情を隠すのはあまり得意じゃないの

さっき、あの坑道で……両親の遺品を見つけて……

救助員就業規定では、救助員が事故に遭った場合、現場責任者は事故報告書を提出する義務がある!

生きていようと死んでいようと、家族の姿を見たいの。このまま家族を暗闇に埋もれさせるもんですか

絶対に両親の手がかりを見つけてやるわ。このまま何もなかったかのように、あの事件を暗闇に埋もれさせる訳にはいかない

意識海にさざ波が立ち、ぼんやりとした記憶がガラスの破片のように眩しく光を反射した

ッ……

「真相」?

……思い出したの?

いいえ

ただの……バラバラになった記憶です。さっきあなたが吹き飛ばした侵蝕体よりもバラバラなんです

だったら、忘れた方がいいこともあります

そうかもね。でも私は覚えていたいの

付近に侵蝕体の気配はなく、彼女は少し力を抜いて壁の隅によりかかって休んだ

余計な悩みが増えるだけなのに

そうでしょうね。でも何も悩みがないって、本当に生きてるといえる?

私はハッキリと覚えていることがあるわ。例えば……

私の唯一の失敗は新兵だった頃、ここでの「救援任務」の時だけ

……

トロイはその記憶を失ってはいたが、ブリギットが言う「失敗した救援任務」が、自分を救ったものであろうことにもちろん気付いていた

何の話かわかりません

本当に?救援医療報告書に、誰があなたを救助したのか書かれていなかったの?

……本当に覚えていないんです

ノルマンの研究員から、機体の特殊性のせいで私の意識海の損傷は修復が難しいと聞いています。ある問題を完全に解決しない限りは……

ですから今のところ、昔の記憶について覚えていることは……ほんの少しだけ

そう……ごめんなさい

いえ別に、だって悲しみようがないんですから

なんとなくですが、記憶を失う前の私は、いい人ではなかったような気がしているんです

でも大体いつも、私にとってあなたは普通に「いい教官」だったわ

え……教官ですか?私にそんな輝かしい時期があったんだ……

彼女はブリギットに「しっ」というように合図を送り、岩層の振動に耳を傾けた

彼女には聞こえた……あの「人物」が追いかけてくる音が

ここはまだ安全とはいえません……もう少し先へ進みましょう

先へ……

アンジェがくれた地図を取り出す。マークされたいくつかのラボは実際にはダミーだが、おおよその位置は参考にできる

今いる場所はもう鉱場の最下層だわ。もう少し進めば監視室がある

監視室……

ああ……確かに少し厄介だな。でも、申請すれば監視室までの直通エレベーターが使えるはず……

意識海が微かに痛み、彼女はそれ以上考え続けられなかった

監視室に行きましょう。狡猾な兎は肝心な場所にこそ退路を残すといいますし

そこが、鉱井を制御する中枢かもしれません

足音が威圧するように徐々に通路から響いてくる

か……変えられない……

足音が止まった。彼は何かに気付き、ランプが光った場所の方に振り向いた

見つ……けたぞ……

穢させる……ものか……