Story Reader / 叙事余録 / ER06 薄明射す闇塔 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER06-14 狡兎三窟

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少しは解決したけど、よりたくさんの問題が出てきた気がするわ……

はあ、まだしばらくこの穴倉からは出られなさそうね

ぷっ、アハハッ、グレイレイヴン指揮官にもこんなトボけた一面があるなんて

そうよね、精鋭小隊の指揮官だもの。こんな小さなトラブルくらい、慣れっこよね

ふたりが手にしているサーチライトだけが、薄暗い坑道を微かに照らしていた

ルシアは、突然現れた謎のバイタルサインを追跡するため先へ進み、工兵部隊と合流する通路を探す任務は、自分とブリギットに託された

地下建築は四方八方へ広がっている。アンジェから渡された各スタンプで特殊認証を通過すると、地下深くに埋もれた塔の真の姿が露わになった

権限認証後、水面に浮かび上がるようにして、隠されていた通路やラボが現れる

連中ときたら……どこまでも用意周到だわ

影での生活に慣れると、次第に太陽を嫌うようになり、奥へ隠れようと更に深く岩を掘り始める

ましてや彼らがしているのは……白日の下に晒せないようなことだ

日記……まただわ

ブリギットは地面に落ちていたボロボロのノートを武器で拾い上げ、慎重に手袋をはめて、ページを注意深くめくり始めた

また同じような……内容か

「また坑道が崩落した」

「幸い救助員がいる……コンスタンティン鉱場は最悪な場所だが、毎回救助員が責任を持って探しに来てくれる」

「少なくとも……食い扶持を稼ぐことはできる、他の場所よりずっといい」

「この厳しい環境ではそれも簡単なことじゃない」

「功を焦って遠くまで行った若者ふたりが怪我をしたが、その他は問題ない……」

「……」

――鉱員A

「また救助員が助けてくれた。本当に……ああ、彼らふたりには感謝してもしきれない」

「この事件が起こるまで彼ら夫妻は、オフロードレースといったエクストリームスポーツをしていたらしい……」

「ああ、もしこの厄介なパニシングが爆発していなければ、私もまだキーボードを叩くオフィスワーカーでいたはずだ」

「こんな鉱場で岩を叩いているなんて、誰が想像できただろう……」

「……」

――鉱員A

「日記帳がなければ、鉱場での時間は本当に耐えがたいものだ」

「救援を待っているが、今回は様子がおかしい。何か……奇妙な音が聞こえた……」

「私は死んだフリをしてきつく目を閉じ、何も見ないようにした。奇妙な音が消えてから、やっと書き出している」

「何も見ず、何も聞かず。そうすればきっと何も起こらない……そうだよな」

――鉱員A

日記の後半は空白だった

……

ええ、きっとそうよね

この日記に書かれてる、ふたりの救助員っていうのは……多分、私の両親のことだわ

パニシング爆発前、両親はエクストリームスポーツの指導者をしていて、無人の荒野や険しい山の峰を駆け回ってたって、私に話したことがあるの

世界が元通りになったら、私を連れてその壮大な景色を見に行くんだとも話してた……

ふぅ……

あっ、心配させてごめんなさい。ふと、昔のことを思い出しただけよ

全て片付いたら両親の足跡をたどって、必ずその場所を見に行くつもりよ

ハハ、そうね。全て片付いたら両親の足跡をたどって、必ずその場所を見に行くつもりよ

その時は、一緒にどう?

じゃあ約束ね。その時は疲れた、なんて言わないでよ

ふふ、冗談よ

ん?こっちにも何かあるわ……

サーチライトが、別の操作パネルを照らし出した。試しにブリギットが権限カードをかざすと、しばらくして長い間沈黙していた操作パネルがゆっくりと光り出した

こんなに長い時間が経ってるのに……一体誰がここの電力システムを維持しているの?

全ては朽ちかけた塵のベールに覆われたように見えているが、正しい鍵さえ見つかれば、岩の背後の世界はゆっくりと開かれていく

権限カードが認証され、ラボの照明が自動的に点灯した。冷たく白い光が一瞬にして眩いほどに降り注ぐ

誰!?

軋む音が微かに聞こえた

上方で、監視カメラが暗く赤い光を点滅させながらゆっくりと回転している

……監視室?

はっと警戒心が湧いた。ノルマンから提供された地図に、監視室の位置は記されていない

ためらうことなくブリギットは銃を構え、精確にカメラを撃ち抜いた

監視カメラが音を立てて床に落ちた

まさか、地図に存在しない監視室で誰かが操作しているの?

ブリギットは身をかがめて、壊れたカメラをじっくりと調べた

……感応式カメラね。私たちの進入を感知して回転したのかもしれない

ええ

この出来事で、緊張感が高まった

操作台で端末の中の研究記録をコピーすると、すぐにそのラボを後にした

やっぱりここは少し落ち着くわね

鉱道は暗いが、先ほどの何もかもが一目瞭然な真っ白いラボと比べると、この狭い鉱道には不思議な安心感があった

さっきの反応の速さはさすがね、[player name]

人間の体でここまでできるなんてすごいことよ。だからこそグレイレイヴンの指揮官なのよね?

執行部隊は本当に優秀な人材が豊富だわ……

そうね、新兵訓練が終わった時に執行部隊への申請を薦められた

でも……私の居場所はそこじゃないって思ったの

執行部隊は素晴らしいわよ、最前線で戦って最高の機体を与えられる。でも……全員が執行部隊に入ってしまったら、誰が執行部隊を支援するの?

あっ、執行部隊が悪いって言ってるんじゃなくて。ただ……

彼らを助ける誰かが必要、そうでしょ?

皆、進む道がそれぞれ違うの。私は……

私が進む道は執行部隊じゃない

本当に執行部隊を選ばないんですか?支援部隊とは条件が段違いなのに

あなたの訓練データなら、執行部隊に入る資格は十分……本当に一度、考え直してみては?

ええ、もう決めたんです

私は支援部隊を選びます

ええっ!すごくいい成績だな!何でまたここに来たんだ?

執行部隊の何が駄目なんだ?新しい研究成果や新機体が出たら、優先的に回ってくるのに……

ここもすごくいいじゃない!重機が運転できるしね!執行部隊では乗り物が少ないでしょう……

アハハ、昔の隊長にはいつも、宝の持ち腐れだって文句を言われたわ

でも私はずっと、選ぶってことが好きじゃなかったし、支援部隊に入って後悔したことは一度もないの

意識海の中の映像がバラバラに崩れ、徐々に再構築されていく

もし彼女が本当に損得を考えたなら、少女だった彼女はノルマングループの補償を受け取り、その後どこかの保全エリアで過ごすことを選んだだろう

もし彼女が真剣に選んだなら、構造体になったばかりの彼女は執行部隊に入って多くの功績を上げ、精鋭小隊に昇進し、更に多くの権利を得ただろう

彼女には何度も何度も「チャンス」が訪れたが、最初の道を一貫して守り続けてきた

自慢じゃないけど実際、私はこれまで支援部隊を率いて、何度も実行部隊や保全エリアを支援してきたしね

それはデータ上でも顕著だった。ブリギットの支援部隊入隊後、従来なら生還が不可能とされた小隊が、彼女の努力と迅速な支援で空中庭園に戻ることができている

ずっと、自分は頑張ってると思っていたけど……はぁ

彼女は大きくため息をついた

トロイの……彼女の異変には少しも気付かなかった。もし、もっと注意深く見ていれば……彼女を助けられたのかしら?

ブリギットの話では、意識海の損傷で記憶を失う前のトロイは、黒野のスパイだった可能性が高い

そんな立場のトロイがブリギットから好意を示されたとして、彼女は好意ととらえるのか、それとも……

……あなたの言う通りよ。彼女は、私が情報を探ろうとしていると疑ったかもしれない

トロイは……本当に矛盾してる。かつて彼女は私とジョリーンを本気で助けてくれた。彼女の指導がなければ、私とジョリーンの訓練成績もあれほど早く上がらなかった

スパイって立場を考えると、目立ちたくなかったはずなのに……

あははっ、それはどうかな。何しろ、私とジョリーンは本当に扱いづらかったから……

でも……よかった

彼女はよく見慣れた笑顔を見せた

トロイも私もまだ生きてる。いろいろあったとしても……まだ取り返しがつくわ

ブリギットは笑いながら肩をすくめ、歩き出した

行きましょう、まだまだ先は長いわよ~

???

すぅ……はぁ……

家族……栄光……

???

ううっ…………意識海……

ふぅ…………

押さえつけられ苦痛にあえぐ声が、密閉された部屋に低く響いた

重い足音、うめき声、乱れた金属の摩擦音

???

ふぅ……

ゴホッ……どうやら……新しい客人のようだ

薄暗い部屋にぼんやりと明かりが灯っている。操作台の前にずらりと並ぶ監視モニターに映し出されたのは、監視カメラに向かって冷静に発砲する茶髪の構造体の顔だった

???

ゴホッ……客人とあらば……出迎えの準備をしなければ……