ナイゼルッ!!!
ノクティスの全力のパンチがナイゼルの胸をえぐり、雷に打たれたような衝撃が全身を貫いた
圧倒的なパンチをくらったナイゼルは地面に叩きつけられた。しかしこの最後の一撃で力を出し切ったノクティスも、地にガックリと膝をついた
ぐはっ……
ナイゼルは立ち上がろうとしたが、機体の限界を超えたダメージを負っている
「毒」を放つ右手も強烈な電気ショックのせいで破損し、電磁材料のコントロールは不可能だった
はぁ……はぁ……ゴホッ、ゲホッ!
全力を使い果たし、ノクティスは苦しげに咳き込んだ――実際には空気など必要ないはずが、構造体になっても、人間の時の習慣に大きく影響される
体内に回った「毒」の効果はすでに薄れ、リンクしていた指揮官の状態も安定してきたようだ
ハハ……やはり俺より強いな
ナイゼルは濁った両目を閉じた……彼にとってこれは全力の戦いだった。彼は持てる全てのパワーと戦術を出し切って、ノクティスの拳に負けた
かつて、ノクティスはナイゼルを倒す瞬間を何度も想像していた。なのにそれを実現した今この瞬間、何の実感もわかない
ナイゼル……お前は一体何のために、こんなことを……
ノクティスはかつてと同じ質問をした。親友の口から、今回は異なる答えを聞きたいと切に願っていた
あの「統帥」の命令なのか……そいつ、一体誰なんだ?
ナイゼルはふらふらと立ち上がり、首を振った
町を占領しろと……秘密裏にこの町の邪魔者を全て排除しろと、そう命令された
だがここに来て、お前と戦おうとしたことは――「統帥」に言わせれば一種の裏切りにあたる行為だ
火焔に包まれた倉庫は崩れ落ちる寸前だった。頭上に絶えず火の粉が降りかかってくる
てめえ、なんでそんな「統帥」のために戦うんだ!答えろよ……
ノクティス……お前こそ誰のために戦っている?人間のため……それとも構造体のためか?
は?何か違うのかよ……
ノクティスの答えをとっくに知っていたかのように、ナイゼルはニッと笑った
この前、俺はあの指揮官にも同じ質問をした……人間と構造体の違いはなんだと
相棒の答えなんか知らねえけど……
ノクティスは体を真っ直ぐに伸ばすと、ナイゼルに手を伸ばした
あいつは身分の違いで差別はしねえよ。それくらい俺にもわかる
お前とあの指揮官は、どこまで能天気なんだ……
ナイゼルの皮肉にも動じず、ノクティスは笑い出した
ケッ、それがどうした……事実、ノーテンキな俺らの方が強かったぜ
ナイゼルはゆっくりと――だがノクティスの差し出した手を握るのではなく、後ろへ半歩下がった
もう遅すぎた……あの人の理想のために……
その刹那、ナイゼルはノクティスに蹴りを見舞った
!!!
ノクティスはとっさに防ごうとしたが、衝撃を受けて後ろへたたらをふんだ
ナイゼル!!!
ノクティスが再びナイゼルに突進しようとした時、巨大な梁がふたりの間に落下した
巨大な梁を失った倉庫は雪崩のように崩落した。同時に倉庫にあった古い武器が次々と爆発し、ノクティスは爆風で吹き飛ばされた
ノクティスが意識を失う寸前に見たものは、炎の前で自分に背中を向けて立つナイゼルの姿だった
…………