ここはどこだ……
ゆっくりと目を開けたノクティスは、空を見上げながらぼんやりとしていた
隊長……こいつ、起きた
声が自分の腹の方から聞こえ、彼は急になぜ自分がここに横たわっているかを思い出した
やっぱりバカは頑丈ね。21号の全力の一撃を受けても3分でお目覚めとは……でも戦場で3分も気絶してれば、死体か侵蝕体になってる
【規制音!】てめぇ、俺の体から降りやがれ!!!
いつの間にか両手両足が縛り上げられていたノクティスは、ゴロゴロと体を左右に揺すり、腹の上に立っている構造体を振り落とそうとした
21号、毛虫を踏んでるみたい!
ノクティスは必死にもがいたが、21号は両手を広げながらバランスよく腹の上に立ち続けている
誰が毛虫だ!せめてムカデだろうが!
激怒したノクティスは両足を曲げ、腰と腹筋にフンッと力を入れると、九龍武術の「跳ね起き」の動きで立ち上がった
ついに21号ははじき飛ばされて、空中で一回転すると見事に着地した
ノクティスが力をこめると、両手を縛っていたステンレスの縄がブチッと切れた。彼はすぐに21号とヴィラに対して身構えた――まだ両足が縛られたままの姿が笑いを誘う
それ、支援部隊が大型貨物を縛る鉄縄なのに……そんなに簡単に切れるとはね
クソが!こんなもので俺様が縛っておけるとでも……
タイマンだってのに、お前、ズルしただろ!それで俺が負けたんだ!
負けた言い訳……?ノクティス、「ダサい」
黙れやゴラァ!
ヴィラは21号の頭をポンポンとたたいた
21号は私の隊員で、私の「武器」なの
この刀と同じってこと。私が武器を使ってあなたとタイマンを張る、何かおかしな点でもある?
ノクティスはポカンと口を開いた。言い返そうにも、彼はその理由を見つけられなかった
ノクティス、やっぱりアホ……
それに、実際の戦闘で正々堂々と戦うやつなんている訳ないでしょう……よくそんな直情型で、粛清部隊にいながら生き延びたわね
粛清部隊の任務は往々にして、窮地に追い込まれた凶悪な敵を相手にすることになる
ち……んなことわかってるってんだよ……
バカのひとつ覚えで攻めてくる侵蝕体と違い、粛清部隊に刃向かう敵はどんなに巧妙で卑劣な手段でも、迷いなく使ってくる
どうあれ、勝ったのは私なの……ご不満ならもう一度戦ってみる?いつでも受けて立つわよ?
ノクティスは腰に手を当ててため息をつくと、足を縛っていた縄を引きちぎった――21号とスレーブユニットがすぐにヴィラの前に立ち塞がる
へいへい、わーったよ……従えばいいんだろうが
でも間違えんなよ。俺はお前らに負けたんじゃない……ただ……
そう言いながらノクティスは自分の機械アームを見た。そこには傷跡がくっきり残っていた
俺は、自分がした約束は必ず守り通すって決めてんだよ
ヴィラは刀を鞘に戻すと笑みを浮かべ、21号に警戒をやめるようにと合図した
じゃ、ケルベロスの隊長として、言っておいてあげる
あなた、粛清部隊の前隊長が殺された事件を調べるつもりで、粛清部隊に戻ろうとしたんでしょう?
アンタ、どうしてそれを……?
悪いわね、私、頭も目もいい方なの……それに自分の「武器」の使い方も知ってる
あなたって怒りで我を忘れるタイプでしょう。それが欠点……でありながら、あなたの長所でもある
ケルベロスにいるなら、まずその怒りの矛先を見つけるといいわ……そうすればあなたが知りたい真実に近付くはずよ
ヴィラは散歩に犬を誘うように21号の背中を軽くたたくと、その場を立ち去った。ひとり残されたノクティスはヴィラの言葉について考え始めた
ケルベロス……亡者に噛みつく猟犬が門を守るワンコに成り下がったか……
ノクティスは新しい塗装のケルベロスのマークを見た。地獄の門番の象徴として凶悪そうに牙を剥くその3頭の犬は、実は誰かのための守護者でもある
何ぼやぼやしてるの!?
ノクティスは頭を掻き、小走りで駆け寄った
ちょっと、運転はできるわね?輸送機の空港までの帰りは車なの
そう自分を呼ぶ声を聞いたノクティスは、ニカッと笑って、自分の鼻を指さした
バーカ、俺様の辞書に「不可能」はねえんだよ!むしろ運転はオハコ中のオハコだ!