よぉ。お前が新しい同僚ってわけか?
赤髪の男は8本の歯を見せてニッと笑った。その笑顔を例えるなら凶犬――
お前ら、どんな悪いことをしたんだ?
ヴィラは目の前で歯をむき出して笑う赤毛の男を、汚いものを見るような目つきでちらっと見ると、指を突きつけてニコラに問いただした
ねえちょっと、総司令様。私をここに異動させたあげく……こんなバカ男を部下にすえるなんてどういう料簡?
はぁ!?誰がバカなんだよ!
彼はノクティスという。以前の所属は粛清部隊だ……ある原因で執行部隊に異動し、お前らと一緒にケルベロス隊を結成することになった
ニコラはだらしなく座っているノクティスをちらっと見た
ああ見えても粛清部隊の精鋭だった男だ。得意分野は格闘術と爆発物、遠隔リンクの素質もある……お前の部下として十分だと思うが
はぁん?部下だと?俺は隊長になるって聞いてたけどよ!
ニコラは貼りつけたような笑顔を浮かべ、ノクティスに異動報告書をバシッと投げつけた
ハセンがそう言ったんだろう、すまないが彼の約束など私には通用しない
【規制音】あのクソじじい、騙しやがって!
赤髪のヤンキー女の側にいた白髪のチビが急にいなくなったと思った瞬間、彼女はすでにノクティスのすぐ傍らにいた
!?
ノクティスは長年の戦闘経験からとっさに身構えたが、彼女はどうやら攻撃するつもりはなさそうだ
クンクン……
21号はノクティスを嗅ぎまわり、ノクティスに睨まれると一目散にヴィラの側に駆け戻った
何がしてえんだよ……
どう、21号
21号……頭悪い臭いを嗅ぎ取った
そんなの、嗅がなくたってわかるじゃない
おい……黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって!
21号は目をパチクリさせながらノクティスを見つめ、真剣な顔で言った
でも頭以外は、強い……
ふーん、強いなら合格よ。同僚としても……ちょっと馬鹿なくらいがちょうどいいわ
その言葉に褒めている響きはなかったが、ノクティスはそれを聞いてかなり喜んでいる
シャシャシャ、このチビ、鼻はともかく目はいいみてえだな。お前みたいな弱っちいヒヨッコ、喧嘩になったら俺様の後ろに隠れとけよ、ピヨピヨって
21号……「弱っちい」の意味がよくわからない。でも21号、「弱っちい」じゃない
表情を険しくした21号を見て、ノクティスはガハハと大笑いした
ハハハハッ、なんだよ、やろうってか?ここで?おいおい、その短い手で俺に届くのかよ?
ノクティスが手を伸ばし、指で21号の額を小突こうとした瞬間、黒い影が目の前に現れた
ちびっこ!
なんだァ……?何だお前
ずっと21号の横にいたスレーブユニットが仮面のようにノクティスの顔に被さって、彼の視界を遮った
――そのせいで、腹に全力でドロップキックする21号が見えなかった
「ゴミは始末」!
突然の衝撃でノクティスは蹴られた空き缶のようにゴロゴロと回転しながら、ニコラのオフィスのロッカーまでぶっ飛ばされた
そこへ21号が更に飛びかかって、ノクティスと「楽しいじゃれ合い」を始めた。静かなオフィスに、怒鳴り声や唸り声が響き渡る
私の最初の評価、撤回しとくわ……
喧嘩に熱中するふたりなど見えていないかのように、ヴィラはニコラのデスクにもたれながらノクティスの資料を読み始めた
言ったはずだ、彼は優れた兵だと……
ノクティスではなく、あなたのこと……私たちを自分の直属部隊に選ぶなんて、ただの無能な官僚よりはよほど自信があるのかと
ニコラは鼻を鳴らし、笑みを浮かべた
ふん……とりあえずしばらくは、軍部の執行部隊の一般任務をこなしてくれ
ケルベロスの足並みを揃える必要がある。すぐにお前たちがやるべき本当の「任務」がくるのでね
ヴィラはニコラからリストを受け取り、笑顔を浮かべたまま内容をじっくり確認すると、すぐにケルベロス隊の初となる任務を選び出した
だが、もうひとつ解決すべき問題がある……
ニコラは端末の通信機能をオンにすると、一番上に表示されている人物に連絡した
セリカ……私だ。工兵部隊の手の空いている人員を誰か調達しろ……
その瞬間、ロッカーから大きな爆発音が鳴り響き、もうもうと黒い煙が噴き出した
訂正する……工兵部隊の隊長に一個小隊を寄越すように言え。装備と建材を持って、だ。私のオフィスがフルリフォームが必要になった