グ――
ということは――あのお人形さんが深層リンクを切り離して、あなたを置いてったってこと?
赤髪の構造体は、灼熱の刃で泥を切り分けるようにして敵を一刀両断する。バネッサがバンビナータとはぐれたその話を、戦闘中に訊いてくるほど余裕があるのだ
バンビナータの意識はおそらくジャミングされたに違いない。彼女は命令がないと動けないから。早く彼女を見つけなければ
だから私が敵を倒してるんですけど?そのお目目で見えてないの?
バネッサはヴィラを睨みつけると、監視室で復元されたマップを開き、ルートの計算をし始めた
先ほどは詳しく調べられなかったが、建物の下にぼんやりとしたグレーのゾーンがある。そのエリアには用途も出入口も記されていない
この建物は当初は一般的な福祉施設だった。運営が黒野に変わってからは、実験を進めるために関連施設を増設する必要があったはずだ
ここに来るまでにそういった実験施設は見当たらなかった。ならばこのグレーのゾーンに集中している可能性が高い
バンビナータがどんなジャミングを受けたのかは不明だが、彼女に影響を与えたデータはこの建物の来歴に関連があると思われる。バンビナータはそこに連れ去られたのだろうか
捜索と同時に、どうやって怪しいゾーンへ進入できるかを調べることが、バンビナータを見つけて回収任務を遂行する肝になりそうだ
監視映像は見た?
当然。だがすでに敵に破壊されている
あなたたち、この手の面倒な状況になったら使ってる通信以外の連絡手段は?暗号とか、声とか、マークとか?
フン、さすがはケルベロス。原始的な手段を好むんだな
あらそう、悪かったわね、高貴なお嬢様。でも原始的な手段がハイテクに勝る時もあるのよ。そうねえ、たとえば今みたいな?
そうそう、思い出したわ。あのお人形さんと約束したの。彼女に何かあっても、私が助ける保証はないわよって
命令に抗うと?お前が処分を受けるなら、お前の隊のふたり程度なら面倒を見てやらなくもない
私、あなたを連れて撤退するなんてひと言も言ってないわよ?あなたたちの任務が私の監視なら、任務目標の私に助けを求めるなんて、大甘もいいところね?
監視?何の話だ?
ヴィラは目の前の敵を蹴り飛ばし、素早くバネッサの背後に周りこむと、バネッサに襲いかかろうとしていた敵の奇襲を食い止めた
——
こんなところから攻撃されると思わなかった?油断したのね
さっきの話は忘れていいわ。どうやら私はあなたたちを誤解してたみたい
無駄話はここまでよ。今から私、本気を出すから、足を引っ張らないで