Story Reader / 叙事余録 / ER02 朽腐る灯 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER02-12 似て非なる

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暗い空の下、赤色の亡霊と沸き立つように蠢く血の川が、地獄絵図を描き出していた

道を急ぎ赤潮を飛び越えようとする青年に向かって、彼らが恨みの言葉をささやく

赤潮の影

私たちを助けられるのに

彼に選ばれたのに、その責任から逃げて私たちを見捨てるの

どうして?どうして?どうして私たちから離れるの?

助けて、助けてよ、シュレック……

……その名前……

走っていた青年は立ち止まり、振り向いて赤潮の影を見つめた

君は……誰?

私は執行部隊からの「離反者」。昇格者の拠点で出会った人は……皆、似たようなものよ

どうして離反したんだ?

……死ぬだけの戦いと、確率は低くても生き残れる道。後者を選ぶことはそんなに理解しがたいこと?

選別に失敗すれば、侵蝕体になってしまうのに?

何ごとも試さないとわからないでしょう?そうだ、あなたの名前は?

……シュレックと呼ばれてる

シュレック?アハハッ、ごめんね、その名前を聞くと「バケモノ」を思い出しちゃう

監房で昇格者に「飼われている」構造体を「バケモノ」と呼んでも、別に問題はないわよね

……なんとでも思えばいい

じゃあ「バケモノ」さん、私たち、選別をパスできるよう頑張りましょうね……

…………

???

選別について?

そうだね、仲間を選ぶテストみたいなものかな。あなたにもよくわかるようにたとえるなら……うん、保全エリア収容の時の技術テストみたいなものだよ

保全エリアでは、テストをパスできなくても侵蝕体にはならないけど

それはどうだろうね?彼らは見捨てられ、スカベンジャーになる。荒廃した世界で彷徨い続け、奪い続け、誰かの物資と命を盗んで生き続けるしかない

いずれ彼らも誰かに奪われて、死んでいくだろうね

心配しないで。責めている訳じゃない……誰かを憎むつもりもない

パニシングの時代に生きる彼らには、それ以上マシな選択肢がなかっただけ。誰も彼も追い込まれて、あんなことをするしかない

だから、彼らを苦難から一刻も早く解放してあげたいんだよ

選別をパスして我々の仲間になるのが一番だけど、通過できなくても他にも行き先がある

その昇格者は微笑みながら、地下水路の溜め池を指さした。赤い液体に死体やバラバラになった手足がブクブクと浮き沈みする様子は、まさに怪物の咀嚼と消化を思わせる

その中には、先ほどノアンと笑って会話していた女性構造体の一部もあった。彼女はすでに虚像と化し、支離滅裂な言葉で死に際の命乞いを繰り返している

赤潮の影

助けて、助けてよ、シュレック……

…………

見て、赤い海に溶けたって死んではいない。むしろ新たな生を授かったんだ

こんなことを言っても、理解できないだろうね

そう言いながらその者は両手で赤潮をすくいあげ、それをノアンに差し出した

人々の意識とデータは消えていない。この中に保存されてるんだ

彼らは互いに互いの情報を引き出して補填し合い、「不完全」という苦痛から解放されようとしている……

赤潮は人々の「飢餓」感を煽って捕食すると、「死別」した部分それぞれを組み合わせていく……負の感情を消して、幸福感だけを縫い合わせるんだ

彼女がそれらを集めさせて分解して、ボクたちの組織下であの方が望む「秩序」を持つか、フレキシブルな組み合わせによって「無秩序」な宿体となるか……

そんなふうに生かされる命や意識なんて、もう本来の姿じゃない

死んで完全に朽ちて腐ってしまうよりはいいだろう

ノアン……いや、「シュレック」の方が実は好みだけど。バケモノの方がよりボクらの仲間っぽいしね

あなたもボクと同じく、この死別が繰り返される時代を憎んで、変革を求めているはず

…………

選択を強いるつもりはないよ。まだ迷っているなら、もう少し時間をあげる

あの方は言っていた……意思に反して「仲間」に引き入れたとしても、身内に爆弾を抱えるだけだって

だから「誘導」はするけど、強制するつもりはないんだ

あ……そうだ。まだ生きている人たちを助けたいなら、新しく手に入れた力を使ってみたら?

もう、力を手に入れている?

うん……いつ手に入れたか知りたい?フフッ……

あなたはボクの作品なんだ。珍しく壊れなかったし、しかも完全な自意識を持っている

だからあの方の権限を使って、「魔法」をかけてあげたよ

ボクの側にいれば、もうパニシングを恐れる必要はなくなる。その上、パニシングを力として使えるようになるんだ

あなたは赤潮の中で情報や死者の顔を見ることができる。だから助けたい人を助けられるし、殺したい人を殺すことだってできる

そんなの、いらないよ

まだ生きている誰かを助けたくないの?

そうじゃない!

じゃあ、どうして断るの?

絶対に君たちの共犯者なんかにならない

記憶の断片がつなぎ合わされ、頭の霧が少しだけ晴れたようだった

確かにあの時断ったはずだ。今後はどうなる?

ボクから離れると、あなたは自分をコントロールすることすらできず、他人を傷つけるバケモノになるよ。そして人から狩られてしまうんだ

違う、なぜ僕は断ったんだ?

昇格者の力を使っても、他人を傷つけなければ彼の共犯者にはならないはず

ましてや自我を失って、暴走する危険すらあるのに……

青年は再び道端で蠢く赤潮の影を見た

何か大事なことを忘れている……?

赤潮の影

もう間に合わない、シュレック

……?

歪んだ影がもがきながら近づいてきて、かつてある女性が言ったことを繰り返し始めた

赤潮の影

私の本には……こう書かれていた

檻で生まれた鳥は空を恐れ、空に羽ばたく雁は檻を憎む。人も同じ、過去の経験でその選択が決まる……

過去を持たない人、過去から目を背けている人は、未来で道を見失う

……誰?

赤潮の影

覚えていないの?会うのは2回目なのに

…………ベ……ラ?

赤潮の影

……久しぶりね