Story Reader / 叙事余録 / ER02 朽腐る灯 / Story

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ER02-12 似て非なる

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戦闘は3時間も続いたが、いまだに続々と侵蝕体や異合生物が09号医療エリアに集まってくる

防衛施設は半分ほどが破壊され、侵蝕体の残骸が街中を埋め尽くしていく。もともと酷かったパニシング濃度がより一層高くなっていた

最も絶望的な問題は、医療エリアの外周道路が広範囲にわたって割れてしまい、その箇所から逃げまどう人々を阻むように赤潮が湧き出たことだった

おかしい。こいつら、はっきりと目的地がわかって動いているような感じだ。異合生物の奔流のような、無差別の攻撃とは様子が違う

医療エリア内の状況は?

負傷者がもういっぱいで、厳しい状況だよ……このままパニシング濃度が上がり続ければ、浄化塔が過負荷になっちゃう。でも、医療エリア内ならまだ安全かも

全員で撤退するか、支援を呼んで守りに専念する方がいいかもね

撤退は無理だ

見回ってきたが、外の路面はほぼ崩壊して、赤潮が出てきている。完全に赤潮に覆われてはいないが、俺らの防護装備じゃ長くは持たない。生身の人間ならなおさらだ

我々は閉じ込められてしまったと?

これは絶対おかしい!誰かが嵌めやがったんだ!タルボット、お前、昇格者を引き込んだんだな!?

話していた昇格者なら、やつはただ俺に会いにくるだけだろう。なぜこんなことをする必要がある?

何もかもぶっ壊すために決まってるだろう!!お前をVIP席に迎えにくる時に、誰も傷つかないとでも思ってたのか?

すまんがリリアン、今すぐこいつを追い出した方がいい!!

でも……!タルボットも侵蝕が酷い状態なの。このまま追い出したら死んじゃうわよ!

そうなりゃ、こいつご執心の昇格者サマが助けてくれるだろうよ!

待って……

広場の入口にいた最後の異合生物を倒して、青年が医療エリアへと入ってきた

昇格者と繋がっているのは……きっと僕だ

……?

やっと思い出したんだ、記憶を失う前に……僕はもしかしたら昇格者と会っていたかもしれない

またこの手のやつかよ?

おい、こいつまったく侵蝕されてないぞ。あんなに戦ってたのに……もっと侵蝕されていないとおかしいだろ

逆元装置が強化されていたとか?

…………

侵蝕体をコントロールできるのか?

わからない。コントロールできるとしても、どうやればいいのかわからない

授格者なのか?

いや、彼のパニシング濃度はそんなに高くない

嘘だろ??ありえないだろそんなの。記憶喪失した昇格者が、自分が昇格者だとわからずに、自然に人の中に溶け込むなんて、そんなの……

まるで漫画だ

自分が悪の科学者だった記憶を失った、カード騎士のやつだよね?

あ、そっちじゃない。デッドノートを拾うやつだ。あの漫画にも記憶喪失ネタがある

あれ、読んでたんだ……

っていうか、お前、記憶喪失だったんだろ?どうして漫画の内容はしっかり覚えてるんだ?

一体何の話!?

あ、ごめん

タルボット、前に会ったとかいう昇格者はこいつなの?

いや、あの時はその昇格者が暗がりにいて、なんていうか大きな姿だった……蛇みたいな?

お前は?昇格者がどんなだったか、覚えてないか?

はっきり覚えてないけど、蛇には似てなかったな

昇格者はお前に何を話したんだ?

……仲間になれと。でも僕は断ったんだ。その後、すぐに意識を失った

俺も似たような感じだ。選別ってそんなに厳しくないもんなのか?

ヒガイシャ、ゼッサンボシュウチュウ!ダレデモイイ、スグコイ!

アンナのセリフを真似するな!

こいつらふたり、さっさと追いだした方がいいわよ!

待って、それじゃ問題の解決にはならない!パニシング濃度の高い外に追い出すなんて、死んでしまうよ!

あいつらがこのトラブルを起こしたんなら、原因を追い出して何が悪い!?

通信も繋がらないし、救援を呼びたくても呼べない。氏素性のよくわからない不審なものは、全部追い出した方がいい!!

いくら緊急事態だって、あんなに誰でもかれでも人を収容すべきじゃなかったんだ!!そもそも医療物資も不足しているんだぞ!!

……そんな言い方しなくても……

追い出すだけなのか?あいつらは昇格者と繋がってるんだろ!!始末するべきだ!!

そんな……

ハッ、俺らを殺せば助かるとでも?本当に昇格者がここを狙ってるなら、やがて人手が足りなくなってお前らだっていずれ死んじまうさ!!

全部お前のせいだろ!!

激しい言い争いが始まった。それを見ていると、もう存在していないはずの心臓に痛みを覚えた

取り戻した記憶の中で、彼はまったく同じことを経験していた

行き場を失って、過ちを犯した人たち

「共犯」と思われていた罪なき人たち

無力で、現状を変えられないプレッシャーと焦りが蓄積して、爆発寸前だったあの時……

全てが無差別に仲間を刺し貫く刃となった

日々に痛みと苦難が満ちている限り、その悲劇は繰り返されてしまう

しかしひとつだけ昔と違う点がある。それは、ノアンはもうあの時の無力な子供ではないということだ

……じゃあ、「制御不能」になる前に、しばらくこの「異質」な状態を利用してやるまでだ

僕が救援を呼びにいく

何だと!?

通信は繋がらない、赤潮に囲まれている。こんな状況なんだ、僕が救援を呼びに行けばいい

お前は昇格者じゃないんだろう?パニシング侵蝕に免疫があるのもただの偶然かもしれない。濃度が異常に高い場所や、大量の侵蝕体に襲われたらひとたまりもない

何ごとも試してみないとわからない。それに僕は自分で制御できない力を持っているらしいから、ここにいると皆に害を及ぼすかもしれない

どうやってお前を信用しろと!?お前、逃げるつもりだな?まだ力が発現していない内に、さっさと始末してやる

殺したいならどうぞ。でも僕が死ねば皆も赤潮に囲まれて死ぬだけだ。リリアンの話だと、浄化塔ももう限界なんだろう

…………

彼を行かせればいい

背後から年配の難民が現れた。足下はふらついているが、その佇まいには年長者特有の落ち着きがあった

なんでだよ?

逃げるつもりなら、昇格者との繋がりをわざわざ言うまい

タルボットを守ろうとしていたのかも

ならタルボットを残しておけばいい。守るつもりなら、逃げてもどうせ戻らなくちゃならん

で……でも……

闇に潜む敵が怖いのは皆同じじゃ。でもただ影に怯えてばかりでは、ワシらはみすみす死ぬだけだろう

タルボットもこの青年もただ皆を助けようとしているだけだ、何か魂胆があるとも思えん。それにこのふたりはまだ、お前らの言う「力」を手に入れてないじゃろう?

残った人ももう少ない……これ以上互いを傷つけ合ったままでは、未来などないぞ

行かせなさい。それが唯一の生き残る道だ

…………

信じてください。僕が昇格者かどうかはこの際関係ない。力を使って悪事を働くつもりは毛頭ないんだ

ノアンは心の中で最悪の想定をした――もし本当に制御不能になってしまったら、命を捨ててでも自分が誰かを傷つけるのを止めてやる

必ず救援を連れて戻ってくる

お前、この後どうなるか本当にわかってるのか?昇格者と関わりがあるんなら、救援を連れて戻ってきたって、粛清部隊に連行されるだけだぞ

じゃあ、余計そうなる前に早く皆を助けないと

自分にはもう時間が残されていないかもしれないのだから

皆はしばらく黙り込んだが、高いパニシング濃度をどうにかできる手段はない。ノアンの固く決意した目を見ては、首肯するしかなかった

……わかった。この件はお前に任せる。他の3人は残ってもらう

ノアンは彼らに向かって頷き、タルボットを見た。話したいことはたくさんあったが、今その話をするにはタイミングが悪い

仕方なく、彼は笑いながら「よく知る」3人の仲間、タルボット、リリアン、惑砂に手を振った

ここで待っていて