ひあああああ
クジラの大きな鳴き声に驚いた蒲牢は、地面に転がり落ちた
船の硬い床にぶつかって目が覚めた。寝ぼけ眼で彼女は棚をしばらくごそごそと探し、ようやくクジラの形をした目覚まし時計のアラームを止めた
部屋が再び静かになってようやく、本格的に目が覚めた。彼女は乱れた髪を整えながら、しばらく目の前の自分のベッドを見つめて、溜息をついた
はあ……やっぱり朝のアラームには慣れないな
でも、こんなによく眠れたのは久しぶり
うふふ、いい夢を見た気がする
知っている人や出来事をたくさん見たような、でもはっきりとは思い出せない……
まあ、夢の結末はきっとよかったのかな。私、笑ってたもの。いつもの私ならそんなことないし!
蒲牢、起きたか?祭りの前にもう一度巡回するぞ
えっ、もうこんな時間?
窓の外からよく知った声が響き、蒲牢はあわててベッドから飛び出し、壁に掛けた蒲牢衆のマントをつかんだ
これは……
マントにある蒲の文字に触れた時、頭にあの心優しい機械の姿がふと浮かんだ
懐かしいな。でも喉がなんだか苦いような気持ちになるのはどうしてだろ……
蒲牢、準備はできた?部屋に入りますよ
ちょっと、入らないで。すぐ行くから!
年に一度のお祭りだよ。睚眦、少しは楽しんだらどう?
どうしても楽しめと?
蒲牢、やめろ。何をしても彼女の顔は変わらないぞ
わかったわかった。でも嘲風、そのぶら下がって出てくる癖、いつになったらやめるの?西に住む子供たちがいつも文句を言ってるよ
悪ガキどもめ……
店長、市場調査によれば、今年もあなたの店の梅スープが好評らしいです。多めに用意しないと
もちろんさ。福さんの直伝レシピだしな。売れ残ったら彼のメンツを潰してしまう。あの梅スープを受け継いだなんて、口が裂けても言えなくなる
お、そうだ。沙茶麺食べるかい?
ありがとう。でも今は大丈夫
じゃ、私は……
オホン!
仕事が終わってから食べます!
ちょっと田さん、商品を道の真ん中に置かないでくれよ。あなたの兄弟たちと一緒に、ちょっと横にどけてくれないか。後で船の修理用の資材を置くんだから
幼鶏、仕事だ
よし、せーの、よいしょ!
終わったら一緒に飲みに行かないか?東の方から凄腕の剣舞傀儡が来たってよ
俺らが奢るし。俺らがどうしようもなかった時に助けてくれた礼だ
ありがとう、でも今日は始まったばかりだし。まだ多くの仕事があるから
わかった。じゃ、来年もよろしくな
当然だ
やっぱり祭で一番忙しいのは螭吻だね
なにせこの時期は物の出入りが多いしな。ミスが出なければ、いくら忙しくなってもいいさ
まったく、贔屓はなにをしているんだ?荷物の手はずをつけてくれないと、私の時間がムダになる
今夜の舞台設備を補強したばかりなんだ。その後も大量の船の修理仕事が俺を待ってる。文句言うなよ
フン
囚牛、頼まれた花火の仕込みが終わったよ。材料に限りがあるから、オーダー通りとはいかなかったけど……
大丈夫。うちも物資が足りないから、娯楽に使う予算は節約した方がいい
今日は新人が4人来てくれると聞きましたが?一緒にはいないみたいですね
空中庭園の支援で、本当に苦しい局面は乗り越えたけど、これからの未来は私たちで切り拓かなくちゃ
未来のためには休むのも大事。だから今日は彼らをお休みにしちゃった
おいおい。蒲牢がオモチャとお菓子に気を取られて、仕事を投げ出すのを防ぐために手配したお目付け役だったのに
そんなこと、しないわよ!
本当か?そのパンダ財布、蜉蝣銭がたんまり入ってるようだが?
ええ?
はいはい、おしゃべりはもうおしまい
わかった。じゃ俺はデータステーションのチェックに行く。船の安全は睚眦、港の巡回は蒲牢に任せたからな
港の巡回が終わったら、ついでに半径10km圏内も見回るから、帰りは遅くなるかな~
手を振って蒲牢は九龍衆に別れを告げた。彼女の髪は朝日の光に照らされ、柔らかな金色に輝いた
彼女は笑いながら戻ると、今日の仕事を始めた
はあ……嘲風は昨日徹夜だったのに、今日も頑張って仕事をするなんて。どんなに時間が経っても、情報関連の仕事は油断しちゃ駄目なんだ
というか、螭吻と贔屓はもう半月ほど、休憩ポッドに入ってないんじゃないかな
龍の子たちだけじゃなく、夜航船の人たちもあの日から必死に頑張ってきた。弱音も吐かずに……誰もが大変で……
いやいや、今は思い出に浸ってる場合じゃない
私ももっと皆さんを思いやって、しっかり行動しなきゃ!
そうそう……千里の道も一歩から!九龍の蒲牢、ここにあり!行きましょう!
僕たち、ちょうどいいとこに来たみたいだ。祭りの準備をしている
見に行かない?知り合いに会えるかもしれないよ
会いたいなら、勝手に行くがいい
だが、忠告しておくぞ。我々に気づかれたら、不要な騒動が起こるかもしれん
ああ、その「尊き」身分ってやつ、こういう時に本当に面倒くさいね
行くぞ。お前が遠くから見たいと言ったんだ。もう見終わっただろう
わかったわかった、新しい年が来るんだ。全てうまくいくよう、陰からこっそり祈るとするよ