Story Reader / 叙事余録 / ER00 幻鯨夢浮 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ER00-3 「いいね」よろしく

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危なかった。やっぱホッキョク……パンダは猛獣だな

「パンダ」たちは蒲牢になだめられて、やっと立ち去った。緊張から解放されたツアーコンダクターはスーツに飛び散った泥すらはたく余裕もなく、地面にへたり込んだ

ツアコンさん、よかったらこのハンカチを使ってください

ありがとう

端末

おい!どういうことだ!!どうしてまたそんなバケモノしかいない変な場所に行ったんだ!!!

ガイドが蒲牢からハンカチを受け取ろうとした瞬間、急にわめき声が聞こえ、驚いて飛び上がった彼は、サーカスでジャグリングをするピエロのようにあわあわしていた

両手をバタバタさせながら地面に落ちる前にハンカチを受け止めたその様は、思わず拍手をしたくなるほど見事で、まさに曲芸だった

ふぅ……

額の汗を拭きながら、彼は突然わめきだした端末を取り出した

端末

お前はとんだ天才だよ

ツアーコンダクターなのに道を間違えやがったせいで、会社でうちの部だけがC評価だよ

お前だけじゃない、こっちまで赤っ恥だ!!

でも、評価の件は部長が勝手に経費を……

端末

なんだって?

い、いえいえ、部長の仰る通りです。全部私の落ち度です。反省してます

端末にはこの現場が見えないにもかかわらず、ツアーコンダクターは手に持った端末に必死にペコペコとお辞儀をしている

端末

反省なんて一銭にもならないんだ。お前の反省文を会社のトイレットペーパーに使うのはもうウンザリだ

明日からもう来なくていい

部長、そ、そんな

うちの家族は私が大黒柱なんです。クビにされたら、子供の学費や家のローンはどうすれば……

端末

そんなの知るか!

部長、もう一度チャンスをください。私もいい歳です。クビになったらもう次の仕事なんて……

端末

チャンス?俺こそチャンスが欲しいくらいだぞ!?

10何年もやってんのに、毎月毎月、何回間違えるんだ?お前へのクレーム対応で、俺の頭は爆発してアフロから更にツルッツルだ

俺の髪の毛にもチャンスをくれるんだろうな!?

……

その……ひとつお訊きしていいですか?

端末

ええ、ええ、もちろんです。大切なお客様、どんなご要望でしょうか?部下のミスは厳しく指導いたしましたので、最低評価はどうかご勘弁を……

あ、いえいえ、私はお客様でもないし、クレーマーって訳でもありません

実はここに来たのは、私が見てみたいとツアコンさんに頼んだからなんです

はい?

ツアーコンダクターは何か言いたそうだが、蒲牢のシーッというジェスチャーを見て、すぐに口を手で塞ぐと、ただ黙って蒲牢と部長の会話を聞き出した

ターミナル

つまり……今回は、彼が道を間違えたんじゃないと?

はい、ツアコンさんは多くの美しい場所を案内してくれたんです。流れの急な小川、危なっかしい渓谷、緑豊かな森と、町で見たことのない景色を見せてくれました!

このツアーコンダクターさんは私を助けてくれたうえに、素敵なサービスを提供してくれました。ですから部長さん、お説教よりも褒めるべきですよ

私、このツアーコンダクターさんに5つ星の高評価をつけますから!

端末

そ、そうですか……

わかりました。お客様がそう仰るなら、クビは撤回します

ああああありがとう、本当にありがとうございます。部長……

ツアーコンダクターが感謝している途中で通信が切れた。彼はずっとお辞儀をしていたが、ようやく体を起こすと、両手でハンカチを捧げ持つようにして蒲牢に返した

お嬢さんに感謝しないと。お嬢さんの助けがなかったら、私はどうなっていたのやら

うふふ、ツアーコンダクターさん、どういたしまして

とはいえ申し訳ない……大魚は見つけられなかった

大丈夫です。仲間が「道は口で訊くもの」だと教えてくれました。他の方にいろいろ訊ねれば、きっと見つけられます

それはそうかもしれない……あ、もうこんな時間だ

ツアコンさんはお子さんのお迎えに行ってください。あなたのお陰で一番危ない場所は通りすぎましたので、後は私ひとりでも大丈夫です

でも……

ツアーコンダクターは何かを言いかけたが、声が出なかった。蒲牢が荷物を整え、手を振って別れを告げようとしたのを見て、彼はやっと声を張り上げた

お嬢さん、ちょっと待って

大魚の涙を探しているとは聞いたけど、涙を入れる容器を持っているようには見えないけど

ハッ!

急いでいたから、完全に忘れていました

するとツアーコンダクターは懐からウサギのステッカーが貼られたピンク色の水筒を取り出した

これは私の娘が昔使っていた水筒なんだけど、子供っぽいって今は使っていないんだ

大魚の涙を入れるにはちょうどいいと思う。これ、お嬢さんに差し上げます

今日のお礼として

わあ、いいんですか?

もちろん。私も帰ったら友達に頼んで大魚の居場所を訊いてみる。何かあったら端末で連絡するよ

わぁ嬉しい、ツアーコンダクターさん、ありがとうございます

礼には及ばないよ。お嬢さんは私の職を守ってくれたし、こんなものじゃ恩返しにはならないけど

ツアーコンダクターさんにとって仕事は、そんなに大事なんですね?

そうだね。特に私みたいな年齢の人にはね

でもツアーコンダクターさん、独立とか、仕事を変えるとかは考えないのですか?

もう無理だよ。歳も歳だし、新しい仕事ってのはもう難しい

でも、最近は……露店が流行ってると聞きますよ

お子さんの学校の近くで店を開くなんてどうでしょう?自由な時間もできるし、娘さんと一緒にすごす時間も増えるじゃないですか

……私に自営は向いてないよ

でもツアコンさんは親切だし、情熱もおありです。きっと子供たちに好かれるんじゃないかなぁ

子供たちがいれば、客足には困らないと思いますよ!

そうかな……確かに、一理あるかも……

うん、ありがとう、一度しっかり考えてみるよ!君も早く大魚を見つけられるといいね!