Story Reader / 多次元演繹 / マトリクス順転 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
<

彼岸

>

強大な敵が倒され、世界を席巻する赤潮が全て消えた

赤い霧に遮られた空が再び晴れていき、青い空と眩い日差しを見せた

ジェタヴィが自分の体を支えてくれた。ふたりの影の間に微かな光が降り注ぎ、空気も澄んでいく

天に選ばれた人、キミのお陰でシステムのファイヤーウォールがまた稼働し始めたわ

やっと、素敵な未来が私たちに訪れた

キミが守ってきた可能性が、いくつもの困難を乗り越えてここまでたどり着いた

なぁに?

私はたくさんのことを忘れちゃってるの。残ったキャッシュデータを読み込んでも、何も思い出せない

天に選ばれた人、少しだけわがままを聞いてくれる?キミとの記憶だけは絶対に失いたくない

だから私のことも忘れないで、ジェタヴィのことを絶対に忘れないで

今回、私たちはアクセスキーを手に入れて、パニシングに勝ったけど……

世界のベースの枠組みがひどく侵蝕されて、決壊したダムみたいにロジックエラーのループに陥ってる

システムは究極の防御コマンドを発動して、自己の枠組みを呑み込みながら再構築を繰り返しているわ

でもその度に、絡み合うケーブルのようにコードのエラーがより悪化していくの

つまり、最後には滅びる結末には逆らえないのよ

要はシステムが、自ら命を絶つ決断をしたの

心配はいらないわ、天に選ばれた人。私ならアクセスキーで中枢システムにアクセスできる

高度プロトコルを通じて私たちの意識を次の世界に転送するの

そうすればたとえ次の世界線に入っても、私たちはお互いのことを忘れたりしない

アクセスキーを渡して、天に選ばれた人

アクセスキーをジェタヴィに渡す

天に選ばれた人、この世界の真実について知りたい?

実はね、ここは■■■■■■■■■の世界、■■■■■■を検証するための実験なの

実験の途中で、■■■■■が■■■■■■の■■に侵蝕されて、それで……

やっぱり、自分で暴こうとするとベースコードに制限されちゃうか……

私は最初からこの鎖に縛られているの

私は……ここの住民だと思ってくれたらいいわ

そろそろ時間ね

始まっちゃったみたいね

遥かな空に黒いひび割れが蜘蛛の網のように現れ、虚空の触手が再びこの世界にやってくる

結像モジュールが破損し、青い空も緑の草原も、世界の全ての彩りが引き潮のように徐々に消えていく

やがて狭い箱庭に彼女の絡み合う髪に取り囲まれるようにして、モノクロの世界だけが残った

そよ風が通りすぎる。ボロボロになった体を横たえ、ジェタヴィの傍らにそっと寄りかかった

ジェタヴィがこちらの頬を優しくなでる。ふたりの目の前で世界が散ってゆく

ジェタヴィ

天に選ばれた人、今度こそ……

ジェタヴィ

今度こそ、もっと早く走らないと!

ジェタヴィの小さな手を繋ぐと、彼女は幸せそうに微笑んできた

世界を席巻する暴風が、中心にいる者たちに徐々に押し寄せた――だがその者たちは何も言わずに、ただ終焉の景色を静かに眺めている

ジェタヴィ

さよなら、世界

さよなら、天に選ばれた人