誕生日おめでとうございます、指揮官
この祝福の言葉を口にした回数をもう覚えていませんが、あなたの誕生日を祝う度に、いつも特別な気持ちが湧いてきます
僕はもう、誕生日をともに過ごすのが楽しみになってきている……それは認めざるを得ませんね
だから、今年はこのプレゼントを用意しました
リーは分厚いアルバムを差し出した。少なく見積もっても数十枚の写真が収められているようだ
言葉で説明するよりも、ご自分の目で確かめてください
アルバムをめくると、最初のページにはグレイレイヴンと皆ですごした最初のクリスマスの写真が貼ってあった
ナナミが後ろから走ってきてリーフに抱きつき、その横でルシアが微笑んでいる。そしてリーは一歩後ろに下がり、静かにその様子を見守っている
2ページ目は大晦日だろうか。グレイレイヴンの控え室に集まって、皆でお祝いの句を飾り付けた
更にめくると人が次第に増えていき、写真はますます賑やかになる。どの写真でも、リーは皆を完璧に画角に収めていた。アルバムを見る度、その時間が蘇ってくるようだ
いつか使うかもしれないと思ったので。まさにこうやって……
我々は皆、明日をも知れない身です。だからこそ、皆と分かち合った思い出をあらゆる形で大切にしておこうかと
まるで全てが昨日のことのよう、そう思われませんか?
金髪の構造体の顔に、他の人なら気付かないであろう微かな笑みが浮かんでいた
この言葉を聞いたリーはいつもの冷静な表情を崩し、珍しく驚きの色を浮かべた
足りない?それは……
え……
まるで痛恨の凡ミスをしたかのようにリーは口を少し開いて、次の言葉を発するまでに長い時間を要した。どうやら相当悔しかったようだ
それはまるで、数日かけて慎重に最後まで配置したドミノを倒そうとした瞬間に、仕掛けのくす玉をセットし忘れたことに気付いたような表情だった
しかし彼のその悔しさは瞬時に消えさり、代わりにすぐさま体から「インスタントカメラ」を取り出した
これは世界政府芸術協会から借りてきたカメラです。誕生日パーティの開始を待って、いつものように記念写真を撮るつもりでしたが
けれど今、気付きました。別に開始を待つ必要はなかったと
はい……まずふたりが接近する必要があります
このようにカメラを構えれば、ふたりともがフレームに収まるはずです
リーはこちらのすぐ側に歩み寄り、やや強張った様子で、カメラを頭上高くに掲げてふたりにレンズを向けた
いいですか、では……
2、1――
カシャッ
フラッシュは瞬間的に明るい電気の火花を散らし、その一瞬を永遠に閉じ込めた
カメラの下からフィルムがゆっくりと吐き出される。白いキャンバスに、ふたりの姿が少しずつ浮かび上がった
しばらくしてようやく、フィルムは完全に現像された
ふたりの笑顔が、小さなフィルムに凝縮して写し出されている。それは温かく華やかな印象を与えるものだった
写真を気に入っていただけましたか
この写真をしまおうと前に進み出ると、腕を引っ張られた
振り返ってみると、リーがこちらの腕を掴んでいる
待ってください……今、指揮官が写真を1枚持っていますね。公平を期すために……
リーはまだフィルムがたくさん残っているカメラを振ってみせる
僕のための1枚も、あって当然だと思うのですが