Story Reader / 祝日シナリオ / 年越し列車の夜 / Story
人は古来から時間を川に例えてきた。我々ひとりひとりがこの川を下り、予測不可能な未来に向かって無意識に進んでいる流れの一部だ
人類の歴史が始まる前、世界が誕生する前、この太古の川は深淵を流れていた
少なくとも今のところ、人類はこの川をたどりながら、飛沫と消えたいくつかの波を忘れないことに最善を尽くすだけだ
第十三街路スイミングプールはこちらです。お降りのお客様は、どうぞ手荷物をお持ちください
ガタンゴトン、ガタンゴトン……
人類はそれほど強くない、だが前進し、思考する……
まず音という枠の中に意味が詰め込まれ、暗闇の中で意識や大脳皮質、そして自分の肉体へと詰め込まれていく
終わりのない思考と暗闇から引き戻される、今度は何なんだろう……
目の前には、まだ綺麗な状態の車両と謎めいた機械体があった
ビアンカ、カレニーナ、そして車両の中の皆があの謎の機械体と言い争っている
先ほどの再現過程で、私は皆さんに尋常ではない感情の波動が発生したのを観測しました。特にビアンカさんとカレニーナさんは明らかに情緒波動が高いのです
この感情の変動は重要ではない歴史的過程に表れますが、皆さんがこれらを非常に重視しているようです。この複雑で特殊な波動は私のデータベースにはなく、理解できません
私が検知したのは、苦しみ、喜び、幸せ、悲しみ……これらは非常に論理的ではありません
そういった感情は相反するものであり、それぞれが矛盾しているのに、なぜ同時に表出したのか？私には理解できません
これまでの記録によれば、痛みや悲しみといったデータは人類の歴史の発展にも、個体の進化にも有用ではないとされています。これは人類の歴史と経験が証明している事実です
………………
車掌は深刻な自己矛盾に陥ってしまったようだ
まるで、人を説得することも、自分を納得させることも、説得されることもできないタイプの人のようだ
経験と歴史が示すのは、人類は歴史から何も学べないということです
ですが、決めるのは全て私たち自身のはずです！
もちろん異議を唱えても構いません。しかし、あなたたちにゲシュタルトのデータ仕様に干渉する権利はありません
これは単なる異論ではなく、理念の衝突であり矛盾です
もしかしたらあなたやゲシュタルトにとっては、無限にある些末な出来事の中の、更に取るに足らないことかもしれませんが、私たちにとってはすでに大切なものなのです
なぜ……皆さんはそんなに執着するのですか？理解できません……
簡単なこった、それがオレたちとお前の違いだ！
これらをゲシュタルトのデータベースから削除するかどうかは問題じゃねーよ、オレはただ単にお前のロジックには同意できねえ
結局のところ、お前もただのプログラムじゃねーか！
……その通りです。私はただのプログラムにすぎません。だからこそ、私の目的と手段は正確でなければなりません
それなら、最後にこれらのデータの意味と価値を実証してください
