Story Reader / 祝日シナリオ / 年越し列車の夜 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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去りゆく年

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リーフが反応する前に、彼女の背後に迫った侵蝕体が1発の銃弾で粉砕された。砕けた手足は地面を震えながら転がり、ひと筋の煙となって消えてしまった

ついに偽物の異重合塔には自分たちだけが取り残された。当然、あの奇妙な列車と、列車の入り口にいる芝居がかった機械体も一緒だ

グレイレイヴン指揮官!

ひとりの顔馴染みが窓を開けて自分たちに手を振ってきた

アイラ?

そうこうしている内に……列車の乗客が増えてきましたね

再び列車に戻ると最初は空いていた車内がいきなり大混雑していた

この仮想空間にはアイラだけでなく、ニコラ司令、世界政府芸術協会のアレン、シルカ、カレニーナ、カムイも入っている

アイラに訊いたところ、自分たちが戦闘を終える前に列車の車掌はすでに彼女たちに「任務」と「仕事」について説明していたらしい

……つまり、私たちはこの仮想空間で過去に何が起こったのかを追体験しなければならないのですね

これもまた特別な体験じゃない?うふふ、これから楽しみだわ

そうですか……?

多分ゲームのチャプター戻しみたいなものだよな?じゃ、昨日に戻れたらいいのに

昨日?

あ、昨夜カムが食べたがってた地獄辛手羽先丼を持って帰るの、うっかり忘れちゃってさ

夕ご飯を食べる必要があるの?

えーっと、カムが行きたがってた新しいレストランがあるんだ

アイツ、その時任務だったからさ、俺が代わりにひとつ買ってきてやるよって言ってたんだけど、店に着いたら売り切れてて……

喧騒の中でニコラ司令は終始静かに席に座って、眉をしかめている

……ひどい混乱だな

ここに入る前に、科学理事会から報告書を受け取っている

科学理事会は、この問題をゲシュタルト内で解決できるかは我々次第だと考えているようだ

つまり、科学理事会がこの問題に外部から介入することはできず、この機械体プログラムはゲシュタルトに属するひとつの分岐モジュールとなっているはずだと

ニコラは頷き、リーの推論に同意してみせた

……つまり、全部このオンボロ機械のせいなんだな?

結論としてはそうです。それからあなた、発言を訂正いただきたいですね。私のプログラムは最新バージョンで、オンボロとは到底認められません

そうかよ、お前みたいな機械に対する一番いい方法、知ってるか?

電子脳をクソじゃがいもサーバーにインストールして宇宙にブン投げてやろうか

残念ですが、私は9000型の機械なのでじゃがいもの生体電気より高い電圧で動作しています

あなたがじゃがいもにインストールされるかどうかはさておき、ここはプログラム空間であり、管理プログラムが最高権限を持っているはずです

そんな暴力的な手段でそれを突破するのは、コンピュータの権限からして不可能でしょう

……

ケッ、じゃあオレたちは一時的にゲシュタルトの中に閉じ込められて、このオンボロ機械体を手助けして仕事を終わらせなきゃ出られねーのかよ?

基本的にはそういうことね

えっ!じゃあ俺たち、本当に昨日に戻れるんじゃん?

もし過去24時間以内に必要な事象があると価値を証明できれば、次の停車駅を昨日に設定してさしあげますよ

必要な事象の価値?

つまり、過去24時間にあった出来事が、未来に大きな影響を与えるという証明です

そっか……まず、地獄辛手羽先丼がないとカムがブチ切れる

カムは怒ると手がつけらんなくなるんだ

……?

それにさ、待ちに待ったメニューを食えりゃ誰だってやる気が出るだろ?そうすれば、任務もスムーズに完了するじゃん

……その両者の間に何か必然的な関連があるとは思えないんですが

何でだよー、一番大事なのは誰かがシアワセってことだろ!指揮官だって「最も大切なのは本人の希望」って言ってたし

……

……

…………

なんでみんなそんな顔してんだよ!

あ、でも……このお店なら、私、無料券を持ってるわよ。お店のオープンの時に、ロゴデザインをさせてもらって……

私ひとりじゃ食べ切れない枚数だったからちょうどよかったわ、皆でシェアしましょう!

マジで!いいの?サンキュー!

結局は残念ながら、あなたの昨日を次の目的地の駅にすることはできません

未来に重大な影響を与えないってのはつまり、レアリティが低いってこと?

上記の会話のロジックは理解できませんが、この問題については考察対象リストに入れておきます

車掌は首を横に振って、列車の扉を閉めた

先ほどご乗車いただいたお客様の情報をもとに、私が独自に次の目的地を選択させていただきます

ガタンゴトン、ガタンゴトン……

車輪と線路の摩擦音を響かせながら、列車は再びゆっくりと発進した

窓の外では異重合塔のシーンもすぎ去り、一帯には虚無だけが残されていた

歴史の方向性に影響を与えた重要事件を除外して、それに次ぐ相応の価値がある歴史的データを、明確に証明してください

過去を戒めるのではなく、未来を追求するのです

ガタンゴトン、ガタンゴトン……

列車はまもなく行政区第二街路に到着します