ランタン作りは意外と難しかった。普段の便利な生活に慣れすぎて、単純な工作作業でさえ難しく感じる
おっそいな……こんなんでほんとに本当に空中庭園から来たすごい人なの……???
ニセ商人としてのプライドのためにも、子供たちに愛想を尽かされる前にランタンを作ってしまわなくては
……まあまあかな
あとは、ワタナベさんたちが戻って来るのを待つだけだね!
計画は成功だ。物資商人は思ったより使えるじゃん――残った時間、一緒に遊びに行こうか?
ダメでしょ!ワタナベさんと、ウロウロしないって約束したじゃない
バレなければ大丈夫だって
子供たちが騒いでいると、オブリビオンの兵士が慌てて走り寄ってきた。ネームタグには「ちまき」と書いてある
おい!基地の入り口で何をしている?早く中に入りなさい!
いや……な、何もありません。ただ「物資商人」がせっかくオブリビオンの本拠地に来たのに、中を見学しないなんてもったいないじゃないですか。ははは……
でもワタナベさんが……
ワタナベさんには話しておくから、中で遊んでおきなさい、いいな!?
「ちまき」は明らかに何かを隠している。子供たちの前でこれ以上聞けそうにないが、どうやらただごとではなさそうだ
だよね!
僕、おいしい綿アメの屋台を知ってるよ!
でも……ワタナベさんたち、私たちの飾りを見れなくなっちゃわない?
心配ない、まだまだ戻らないよ。戻ってきたらすぐに連絡するから!
……うん、そうだね。じゃあお願いね、「ちまき」お兄ちゃん
おぉ!任せとけ、「ちまき」お兄ちゃんは頼りになるんだぞ!
「ちまき」に蹴り出されるようにして、子供たちとともに基地の入り口を離れた
入り口付近にいた人は、いろんな理由で基地の奥へと移動させられていた。皆が移動したのを確認し、「ちまき」は隠れてワタナベに連絡をした
もしもし!ワタナベさん!準備できました。警備隊に皆の保護を頼みました
侵蝕体は!?
「ちまき」は基地の入り口をちらりと見た。侵蝕体の集団が、入り口から次々と入ってくる。知能の低い侵蝕体たちは、基地の複雑な作りのせいで、あちこち分散していた
来やがった!俺たちの計画通り……あ、いや、リーダーの完璧な計画通りです。ここからは、頼みます!
安全な場所を探して隠れるんだ……絶対に死ぬなよ……
ひとつお願いが……今回こんなに頑張ったんで、この前言われた食事禁止の罰をですね……
あ……切られた……
砂漠の中を30分ほど走り、ワタナベたちがようやく基地の入り口に到着した時には、もう夜になっていた。「ちまき」の働きのお陰、そこには誰もいない
ワタナベさん、見てください……
基地の入り口に、何やら多くの明かりが灯っていた。普通の色紙とプラスチックを繋ぎ合わせたランタンだが、中からの光を透過してとても明るい
あいつら……上出来じゃないか
ワタナベは、幼稚で少々雑な作品を眺めて笑った。しかし、侵蝕体の低いうなり声を聞いて、表情は再び険しくなった
あれを見てください!侵蝕体の位置を探知したようです!
ワタナベの傍らにいた補機が隊の先頭に立ち、ある方向を指して合図をし続けていた
ワタナベが頷くと、遠くに見える基地の裏山に、昔からの習慣である花火が上がり始めた。美しい花火が放つ轟音で、基地での戦闘音はかき消されている
オブリビオンよ、聞け!基地に侵入した全ての侵蝕体を駆逐しろ!1体たりとも残すな!