ワタナベに案内され、基地の広場の隅にやってきた
基地内で走り回っていた子供たちが集まっている。どうやら夢中で何かをしているようだ
子供たちの様子を伺うべく、ワタナベは気づかれないように足音をしのばせ近づいた
なぁ、ふたりは、どう思う……
うーん、数がちょっと足りないかな……それに、私たちのスピードだったら発見されそうな気がする
あの物資商人のせいかもな?何かのテストがあるんだって……だからワタナベさんも出かけるんだってよ
……でもさぁ、新年なのに、お仕事なんて……物資商人って大変よね
あっ、こんなのどう……こんな風に曲げて、そして……あ!
ちょっと!無理に折ったらダメ、優しくね!
これを基地の入り口にかけるのはどう?そうすれば、みんなが帰って来た時に最初に見えるし……
あと、これ!これも入り口に貼ろうよ!
子供たちが一斉にこちらを向いた。その小さな顔に、隠しきれない興奮が表れている
最初に反応したのは女の子だった。少女は少し緊張した面持ちでこちらを見ていた
足音で気づいたのか、揺れ動く影で察知したのか――意外にも、子供たちは警戒していたようだ
だが、近づいてきたのがワタナベだとわかって、安心したようだった
ワタナベさん!あ、物資商人もいる!
ワタナベおじさん、任務中じゃないの?
シュウエイとデカードは素早く前に出てワタナベに話しかけた。その後ろではアニーが何やら片づけている。ふたりはアニーが手にしているものを隠そうとしているようだ
ワタナベは何も気づかぬふりをして、いつもの厳格な面持ちで子供たちの前にしゃがみ込んだ
もちろん任務中だ。だが準備に時間がかかりそうなんで、お前たちがしっかり働いているかどうかを確認しに来たんだ
……じゃあ、声をかけてくれたらいいのに。黙って近づいてきたらびっくりするじゃん!
敵が近づくのに声をかけると思うか?お前たちも初めてだったろうが、次はないぞ
わかった!
違うわよ!こういう時は「了解」と答えるの!
後ろに隠れていたアニーが突然口を開いた。並んで立つ少年たちの肩越しに、背伸びしてワタナベを見ている
シュウエイとデカードはワタナベの視線に気づき、反射的に自分たちの体でアニーを隠した
あの、ワタナベおじさん……いや、ワタナベリーダー!僕たちに何か新しい任務をくれませんか?
この前言われた除草と巡回はもう終わりました!新しい任務につけます!
よし、よくやった。お望み通り、新しい任務がある
そう言ってワタナベは立ち上がり、下方に優しい視線を投げるとこちらに目配せを寄越してきた
もう知っていると思うが、先ほど到着した物資商人の[player name]だ
お前たちの新しい任務は実に簡単だ――
まもなく我々はテスト任務のため基地を出る。我々がいない間、この物資商人から目を離さないでくれ。基地内をむやみに歩かせないようにするんだ。できるか?
こっちの任務とは何かな、物資商人さん。オブリビオンは、客人に任務などさせないが
ワタナベはうまくいったと言わんばかりに薄ら笑いを浮かべている
これで、お互い任務対象だ
ワタナベは肩をすくめ、誇らしいような、自慢するようにニヤリと笑った
ワタナベが話し終えると同時に、通信音が鳴り響いた
ワタナベは3人の子供たちの好奇に輝く目を見て、思わずひとりの子供の頭に優しく手を置いていた
ワタナベさん、物資商人が持ってきた機械の準備、完了しました
こちらは出発可能です。準備ができましたらいつでも
ワタナベは軽くうなずき、通信を切った。そして再び身をかがめて、いつもの厳格な表情に戻った
オブリビオンの訓練兵たち、任務はわかったか?
ラジャー!
軍事行動としてはまだまだ未熟な子供たちだが、ワタナベに答える声はとても力強く、すでに立派な兵士の装いだ
ワタナベは立ち上がり、子供たちの頭をひとりずつ軽くなでると、こちらに向きなおって口を開いた
とにかく、我々の任務中はこの子たちの側にいてやってくれ
子供の体力はすごいぞ。お互いに見張り合ってくれれば、あなたが基地内をうろつく心配もなくなる
そう言われると、ますます安心できないな
さあ……あると言えばある、ないと言えばない。だが、協力関係にある物資商人に秘密を持つ必要などないと思うがな
とにかく、しっかり目を開いていてくれ――[player name]、幸運を祈る
では、また後で。我々は出発する。さっさと片づけてくる