……ゆらゆら、ゆらゆら
船首に立つのって気持ちいいよな!うーん、でもなんで風がないんだよ。もう少しスピード出せないの?
……ゆらゆら、ゆらゆら
なんだっけ、船首像だっけ?この船にはつけないのかな?知り合いの職人、紹介できるぜ?多分2割引きとかでいけると思う
……ゆらゆら、ゆらゆら
ふたりとも、少しはおとなしくできないの!?
夜航船の甲板には乗組員の他に3体の構造体がいた。うち、ふたりはそうとは思えないほど態度の大きいアディレからの客人
残るひとりは、ふたりを接待する蒲牢だ
ソフィア、早く手すりから降りて!遠くを見たいなら望遠鏡を貸すから!もし落ちたら、船を止めなきゃなんないんだよ!?
それに常羽、あんたの口車になんて乗らないから!おかしな像なんてつけないんだからね!
うん……
ちぇっ、つまんないの
蒲牢に怒られたふたりはおとなしく甲板へ戻った。が、期待を込めた目で蒲牢を見つめている。早く次の面白いことを教えてくれと言わんばかりだ
子供の相手がこんなに疲れるなんて……
あんただっていうほどの年じゃないだろ?
うん、ナナミもいれてお子様同盟四天王だ
誰がお子様同盟だ!
はあ……なんであたしがこんな目に……
この船がアディレと海運の契約を結んだからだな
それで、私たちは貨物の護衛
とても護衛してるようには見えないけどね!?
そんなことより、通信の準備はできた?
人の話全然聞いてないし!
早く通信室へ行こう
だから!話を聞きなさいよ!今日はまず、あんたたちに船のルールをしっかり覚えてもらうんだからね!
蒲牢は武器を取り出してアディレのふたりを遮った。その表情は真剣そのものだ
だが、ふたりの方に意に介す様子はまるでない。それどころか、おかしな視線を蒲牢に投げかけた
あんたさぁ……そんなんだから彼氏できないんじゃない?
あんたに言われる筋合いはない!!!
ジャミラに古いことわざを教わった。「今日のお酢は今日中に飲む」。今ちょうどすごくいいお酢を持ってるから、あげる。だから許して
そんなことわざ、あってたまるか……
ぶつくさ言いながらも、蒲牢はソフィアからガラスの瓶を受け取ると、中身を口に含んだ
……
海水じゃない!!!!
あ!お酢の瓶、割れちゃった……
海水!!酢じゃない!!
酢という名前の海水……ひと瓶250銭になります。瓶が割れたので返品不可です
250!?これが!?ボッタくりすぎじゃない!?
蒲牢は膝から崩れ落ちた
うえーん……だからあたしじゃ無理って言ったのに~。九龍衆のみんな、早く帰ってきてよぉ、シクシク……
あらら、ちょっとやりすぎちゃったかな……
そうだね。ごめんなさい、少しからかっただけ
え?
船のルールとかそういうのは一旦置いといて、今はこの飴でも舐めながら、一緒に「メッセージ」を送ろうぜ
……そうだね。今接続すれば、まだ間に合うと思う
蒲牢は急いで飴を口に入れると、ふたりを連れて通信室に向かおうとした。だが、ふたりは蒲牢の肩を引っ張った
飴ひとつ250銭になります
……