Story Reader / Affection / ロラン·戯炎·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ロラン·戯炎·その6

鼓膜に鋭い痛みを感じ、爆音が乱れたチェロの音色のように、耳元で不協和音を奏でている

まるで水の底にいるように、聞こえてくる音はぼんやりと遠い

侵蝕体が投擲したスタングレネードは致命的なダメージにはならなかったが、近距離で爆発の強い閃光を見てしまい、一時的に両目が見えなくなっていた

目に強い痛みを感じる。わずかな光にも目を開けられない。これはいい兆候ではない、早く視力を回復させなければ、その後の状況がもっと困難になる

記憶を頼りに、手探りでできるだけ素早く鉄扉と壁に沿って移動した。壁に寄りかかって腰を下ろし、爆発を避ける時に受けた鉄屑でできた腕の裂傷の応急処置をした

左手の手袋はすでに保護機能を失っていた。手袋と指の隙間に湿った血液がたっぷりと詰まっていて、かえって動きづらい

そこで手首の留め具を外して、手袋を外し、脇に放り投げた。手探りで、手持ちの小型レーダー探知機のスイッチを入れた。幸いまだ作動するようだ

何かが接近してくれば、先に探知機が教えてくれるだろう

探知機に電源を入れると、同時にアラートが鳴り響いた

???

ここだったのか

ぼんやりした視界に、近づいてくる黒い人影が浮かんだ

両目の痛みが神経をまいらせている。先ほど少しだけ目を開けたのが限界だったようだ。本能を頼りに銃を構え、近づいてくる黒い人影に向けた

???

みっともないね、グレイレイヴン指揮官ともあろうものがこうも無防備に目の前に倒れているなんて。レアなケースだな

その人影は自分の前で身を屈めたようだ。何を言っているのかははっきり聞き取れなかったが、確かに聞き覚えのある声だった

???

おやおや、無礼だな

チームメイトは君がこんな一面を持っているって、知っているのかな?

???

……聞こえないの?この怪我、適切な処置をしないと、半永久的に後遺症が残る可能性があるけど

仕方ないね、まずはここから出よう

その者はこちらの身を起こすと、ある方向へ向かって一歩ずつ歩き出した

???

薄情だなぁ、一緒に脱獄した仲間じゃないか。もう忘れたの?

そう?

相手は素直に腕を放してくれた

耳鳴りの症状が緩和され、耳に入る音も徐々に認識できるようになった

相手は何らかの装置で声を変えているようだ。風変りな低い声が耳に飛び込んでくる

なぜ……自分の声を偽装するのだろう?

???

侵蝕体が近づいてきている。今は一緒にここを突破しないとね。でも残念なことに私の武器は壊れちゃったんだ。だから君にこの厄介な敵を倒してもらわないといけない

???

私が君の目になるから、君は発砲してくれ

その相手は、銃を握る自分の手を支えてきた

???

準備はいい?

探知機が激しく鳴り響いている。無数の不明な個体が接近してきているのだ。問いかけには何も言わず、ただ行動で答えた

???

???

1時の方向、腕を上げて

???

4時の方向……2体いる、2発目は横45度、斜め

銃を握り、横にいる誰かの指示で引き金を引き続けた。手はしっかりと支えられていて、発砲すると同時に銃口の向きを調整してくれる

一時的な失明状態における発砲の経験がないため、額には細かい冷や汗が浮かんだ。しかし、自分を支えてくれている手は微動だにせず、安定して力強かった

側にいるこの相手が一体誰なのかはわからないが、この瞬間、この人物を信じ、その導きに従うことを選んでいた

最後の銃声が鳴り響いたあと、周囲の騒がしい機械音がピタリとやんだ。連続射撃した腕は痺れ始めている

???

何も見えていない状態でも正確に撃てるなんてね

???

知ってるよ

こんな状況も予想していたのか……まったく、頼りになるね

再び同じ質問をした

ある名前が頭に浮かんでいたが、どうしても確信がもてない

???

……おっと

相手はその後、口を噤んだ。何を訊いても、ひと言もしゃべらなかった

その言葉を聞いて、それまで黙っていたその人物が突然軽く笑った。盲目的な信頼は危険だぞと知らせるかのように

???

「会ったこともない見知らぬ者は信じるのに?」

刑務所の中での会話を思い出した

続けて口を開こうとしたが、相手に遮られた。左手が有無をいわせぬ力で引っ張られる

手の平にくすぐったい感触が伝わってきた。どうやら手の平に文字を書いているようだ

どう、いた、しま、して

無意識のうちに、手の平に書かれた文字を読み上げた

また、ね

手がすっと放され、そのまま手の平のくすぐったい感触も消えた

疲労感が急に襲ってきて、体のあちこちにある大小の傷が存在を訴えている。腕を支えてくれた手は力強く冷たかった。気づくと、比較的安全な隅に誘導されていたようだ

謎の人物はすでに姿を消していた。立ち去る足音すら聞こえず、まるで最初から存在しなかったかのようだ

手元にある端末だけが、今までに起きたことが現実だったと無言で証明している

モニターのメッセージがいつかまた更新されるかもしれない。再びあの謎の人物に会う機会があるかどうかは、甚だ謎だ

しばらく思案に耽っていると、外部から乗り物の駆動音が聞こえてきた。空中庭園の支援が到着したのだろう

端末を腰のポケットにしまい、壁に手をついて立ち上がった

また会える予感はする。だが、次に会う時は同じ側の立場ではないという予感もあった

でも大丈夫、その時も……