Story Reader / Affection / ロラン·戯炎·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ロラン·戯炎·その4

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時間は少し前に巻き戻る

ロランがこの刑務所に足を踏み入れたばかりの時刻――

彼の行動の源泉は、複雑な理由や秘密の任務などではなく、単なる好奇心だった

刑務所の中の機械体は工場でプログラミングされた職務を繰り返している。囚人の敵意を軽減するため、看守は全てバイオニックが担当していた

外見は人間と変わらないが、バイオニックは命令に従うだけだ。囚人から賄賂を受け取ったり、仕事をサボることもない。当時の刑務所にとって、安価で便利な労働力だった

しかし彼らは今、侵蝕された刑務所における厄介な病巣と化した。通常、侵蝕された機械は自己制御能力を失い、プログラミングされた仕事を行うことはできないはずだ

しかし、ここの侵蝕体はパニシングの影響を受けていないかのように作業を続けている。囚人がいない中でのパフォーマンスは、終末世界のいたるところで見られる茶番劇だった

ロランはこういった茶番劇に喜んで参加した。彼は窃盗で収監された囚人のふりをして、「侵蝕体」に「監房」に移送される途中、機械体の行動を観察した

清掃型ロボットは同じ場所を掃除し続け、看守は決められたルートを巡回し続けている。ナビゲーションシステムが壊れ、階段の周りを回り続けているおバカさんもいた

壊れてボロボロの侵蝕体の列の中で、ニヤニヤと笑っている「囚人」の存在は際立っていて、異様だった。しかしロランは楽しんでいた

機械の動作は厳密に設定されている。定期メンテナンスが行われていないために生じるわずかな誤差が全体の秩序を乱し、それによって生じる混乱が増幅していく

誤差が積み重なった結果、1台の看守型バイオニックが囚人が脱獄しようとしていると判断し、刑務所全体の警報システムを起動するコマンドを出した

――全ての発端は、ロランが「勤務交替」しようとする侵蝕体から警棒を奪い取ろうとしたことにある

そこから連鎖的に休眠状態だった防衛ロボットが起動し、警告灯が点灯し、全ての出入口が閉ざされた。ロランは脱獄に失敗した囚人のように複雑な構造の刑務所に閉じ込められた

もちろん、このような旧時代の施錠で彼が困ることはない。激しい爆撃を仕掛けたあと、ロランは変形した監房から悠々と抜け出した

――それが原因で刑務所中の侵蝕体が騒ぎ始めた。でもロランには取るに足らないことだ。たとえメインゲートが封鎖されていても、脱出するのは簡単だ。少し手間がかかるだけで

その時、ロランは侵蝕体よりももっと興味深いものを発見した

――彼の他にもうひとり、不運な者がここに閉じ込められていたのだ

これは面白いな……どうしようかな?

また見え見えのことを?我が友よ

この人間が恐怖と絶望に打ちのめされ、ここから脱出するために、見知らぬ者を見捨てることを選択する、その顛末を楽しむんだろう

――黄金時代のつまらない映画で役を演じるようなものだね

ああ、哀れなロラン、再び困難の中にひとりぼっちだ

でも、今はもう違う、君はもう無力な人間じゃない

選択する側になったのさ。生かすか殺すか、全ては君の手に委ねられている

あの人間が自分は見捨てられる側なんだと気づいた時、苦痛に歪むその表情はきっと見ものだよ

なぜ私がそんなことをする必要があるのかな?

退屈以外に理由がある?

退屈しているなら、退屈なことをするものじゃないの?

心の中の影が、そう答えたようだった

――しかし、事態はロランが予想した通りには展開しなかった

相手は怖がることもなく、絶望することもなかった。逆に冷静にふたりの脱走を計画した

あの者と交流したのは文字を通してだけなのに、ロランは不思議な親しみを感じていた

どんな状況でも冷静さを保ち、脱出の計画を立てた。色んな事態を想定して解決策まで用意した。危機に直面すればまず相手の安全を確保する――まるで経験豊かな軍人のようだ

あの者のまだ見ぬ相手への溢れる善意に悪寒を感じた。そして閃くように、何度か顔を合わせたひとりの人間のことを思い出した

――あの人間とは数回しか会っていないが、事実、ロランは長い間密かにその相手のことを観察していた

半分は好奇心から、もう半分は自分の「目的」のためだった

……もしかして、あの人間か?

次の瞬間、ロランはすぐにその考えを否定した。根拠のない推測に意味はない

しかし認めざるをえないのは、彼は見知らぬ人間に興味を持ち、仲間に入れてもいいとすら考えていることだ

ますます興味が湧いてきた……教えてくれよ、君は一体誰なんだ?

ふたりで協力してメインゲートを開けたあと、ロランは計画通り、合流するために食堂へとやってきた

彼は食堂の2階に上がり、手すり越しにAエリアの入り口を見つめた。おそらくあの者はそこからやってくるだろう

ようやく、廊下の奥から人間の足音が聞こえてきた

その姿を見た瞬間、ロランは誰かに内臓を掴まれたような感じがした

ぶ厚く、重い外骨格と防護装備をつけていても、ロランはすぐにその正体が誰かわかった

あれは――[player name]

先ほどは根拠のない予測だったが、その予測は事実となってロランの目の前に現れた

――その瞬間、仮想の「仲間」は、自分と対立する側に立ったのだった

その事実を意識してすぐに、踏み出そうとしていた足を戻した。ロランは無意識に壁の影へと隠れた

彼の結末は常にひとつしかない。それは見捨てられることだ

両親、「仲間」に見捨てられ、そして失敗作として捨てられる

最初から最後まで、彼はひとりだった

「仲間」を見つけたとでも思ったの?

何のジョークだい?君はずっとひとりじゃないか

そんな考えは全部、君の錯覚さ

君は他の誰でもないし、他の誰も君にはなれない

君は自分の足跡が作った迷宮の中を歩いているんだ

……

馬鹿げた考えを捨てて、修正するべきだね

ハハハ……

全てが思う通りにいく訳じゃない

そうだね、そうさ――これこそが私の現実だよ

全ては最悪の方向に向かって進展するものなのだ