Story Reader / Affection / セレーナ·嵐音·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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セレーナ·嵐音·その4

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その日から、Aという女の子が頻繁にアイリスの手紙に登場するようになった

手紙からはアイリスの、親友を見つけた喜びが伝わってくる

月日が過ぎ、もうひとりの女の子の人物像もだんだんと形をなしてきた

彼女は時にアイリスと些細な理想の違いから激しく言い争うようだが、またすぐに新たなことで意気投合し、寝食を忘れて芸術論をかわすようだ

こんな世界で、芸術にこんなにこだわる人がいるとは

不思議に思いつつもそれは少々の慰めを感じる出来事だった

それは茨ばかりの荒野の片隅に、優しく可憐な花が咲いているかのように思えた

嵐とはどんなものかを知らず、またその激しさを知る必要もない

彼女たちが元気で暮らしていれば、それが一番素晴らしいことだった

アイリスもAも、ますます忙しくなっている

彼女たちは自分たちの理想の道をひた走り、この残酷な時代の荒波の中で自分たちの航路を見つけようと努力をしている

しばらく手紙を書いていませんでしたね、[player name]

許してくださいね。全てが軌道にのってきて、このところ私にはプライベートな時間がほとんどありませんでした

先日、世界政府芸術協会の人が私のところに来ました。彼らは私のオペラを気に入ってくれたみたいです

彼らは空中庭園の大劇場でオペラを上演するという機会を与えてくれました

それで最近はずっとこの準備に追われていたんです

脚本や音楽を書き……アルカディア計画――グレート·エスケープを題材にしてオペラを創作することに決めました

もちろんAもいろいろ協力してくれています。私たちは毎日どのような美術セットを組むかを話し合い、

全てが完璧になるように努めています

私は十分な経験を積みました。決して自分の才能を疑うことなく、全てに対して今は絶対的な自信があるんです

でもなぜか、今回はとても怖く感じているんです

観客もどんどん増え、多くの人が私のオペラを応援してくれています

しかしその恐怖感は沼のようで、深みにはまってゆくばかりです

なぜこんな恐怖感があるのはわかりません。自分には何が欠けているのか、

ずっと考えているのですがわからないんです

Aにはこのことを打ち明けられませんでした。彼女も自分の創作のために頑張っているのに、

その邪魔をすることはできません

昔は星を見ると、その比類なき美しさしか感じませんでした

でも今は、星を見ると耐えられないような空虚さを感じるんです

明後日、私のオペラが上演される。でも私はなんだか怖いんです

とても混乱していて、だからあなたに助けを求めるように手紙を書いてしまいました

私はわがままですね、卑怯にも自分の問題をあなたに聞いてどうにかしようなんて

でもあなたを、無条件にあなたを信じています。いつも強くて、常に私を正しい道へと引き戻してくれます

教えてください、[player name]。私には何が欠けているのでしょう?

手紙に1枚、オペラチケットを同封しています。もし時間が許せば、見にきてほしい

こんな状況で私たちが初めて会うことは望んでいないのだけれど……でもそれは避けられそうにありません

私は今――

次の文章は何度も何度も塗り潰されていた

書いて、塗り潰し、書いて、また塗り潰し、また書いて、塗り潰してあった

困惑と切迫感に翻弄されていることが、その紙を通して痛いほどに伝わってくる

全ての矛盾は最終的に、懇願となっていた

今すぐに会いたい、[player name]

しかしことは思い通りに運ばなかった

任務と長時間の作戦演習で目のまわるような日々が続き、約束をする以前に、私信のポストを見る時間や機会すらなかった

気づけばすでに1カ月が過ぎていた

ポストを開けると、中はたくさんの手紙であふれていた

全部アイリスからの手紙だ

1通ずつ、注意深く読んだ

あなたは観客席にいませんでしたね、それはわかっていました

会ったことがなくても、私ならひと目で気づくと確信していますから

上演は無事終わりました。あなたを待つことはしなかった。忙しくて来れなかったんだと信じています

あなたは軍人ですし、きっとやむを得ない事情で来れなかった――そうやって自分を慰めています

私は今、とても落ち込んでいます。でも実は、あなたがこのオペラを観に来なかったことを幸いに思っているんです

オペラはあまりにも未熟で……あなたに見せるのは耐えられないほどでした。

もしあなたが観たら、きっと私に対してがっかりしたでしょう

上演後、私はようやく自分の恐怖の本当の原因を見つけました

――自分が思っていることを、脚本や音楽で表現して他人に伝えることは、非常に意義のあることだと

以前の手紙でこんなことを書いていたでしょう?

道を前へ前へと急いで進んでいたら、とうとう私も自分がかつて嫌っていた人になっていました

知らず知らずの間に、私は自分の最初の理想や願いを失っていました

自分が書いた全ての台本の見直しを忘れていたんです。

私の傲慢さが人を傷つけたことがとても苦痛でたまりません

ずっと前、私は空中庭園はとても狭いと思っていました

文通をするのに、手紙の郵送時間は1日もかからないほど小さいと

この時、私はなぜこれほど狭いのかを理解したんです

ここは平和で快適な庭園で、そして私はただの井の中の蛙でした

私は井戸の底にいる蛙の視点で馬鹿げた世界を描き、それが真実だと勘違いしていました

真実の世界を描き、真の芸術を作りたいなら、私はここにいるべきではなかった

「地獄の試練を経験してこそ、天国を創造する力が得られる。血を流した指のみが、傑作を演奏できる」

――ある人がそう言いました

私もそう思います。だから私は人生の中で最も重大な決意をしました

この瞬間、あなたが私の目の前にいることをどんなに願っているか。

全てに耳を傾け、いつものように何をすべきかを教えてほしい

でも今回だけは、待てません。私は自分が背負うべき選択と責任をあなたに委ねるわけにはいかない

待ち続ける時間はもはや甘美ではなく、苦痛に変わってしまいました

「歩き続けよう。花を摘むために留まる必要はない。なぜなら道の途中でも花は咲き続けるから」

――あなたはかつてこう書いた

私は前に進みます、[player name]

これが最後の手紙になります

もしこれが最後の手紙でないとすれば、これからあなたと文通している相手はまったく新しい私です

いつかきっと会えることを信じます、きっと

手紙に添えた万年筆は私がいつも使っていた万年筆です

私は毎日これを握りしめ、手紙をどのように書けばいいのか思い悩んでいました

あなたがこの万年筆を使ってくれれば、私の手を握りしめているかのように私の心に寄り添ってくださるでしょう

心を込めて

アイリス

この手紙は、決別のようなものだった

すぐにその万年筆で返事を書き始めた

アイリス:

芸術は人間性を守るための一番穏やかな手段です

今の自分を疑ってもいいけど

全てを否定することはない

どんなに苦しめられても

あなたはもう輝いている

私たちはきっと会える