ここは「万世銘」計画で世界の宝物を保管する場所です。ここまで来た人間は、あなたが初めてです
長い間開閉していないせいか、宝物庫の扉はきしんだ音をたてながら開いた。内部には世界各地の宝物が所狭しと並べられている
あちらのみすぼらしい世界政府芸術協会の記録と違って、これは人類の存在の証そのもの。人類史において最高に偉大な証拠品なのです
人類の歴史は短い。ですが実らせた果実は化石となり、永遠に残り続けるのです
ここの物については全て把握しています。ご興味がおありなら、それぞれの物語や由来を教えてさしあげましょう
これは古代の将軍の墓の石扉です。表面の彫刻は彼が過去に経験した戦闘の歴史。馬のたてがみもたいへん細かく彫られているでしょう?
無礼者!今まで許可なく私に近づいたものはいないのですよ!
今回は大目に見ますが、次は……そちらの処刑台の彫刻も素晴らしいものですけど、見ておきますか?
では次の場所にまいりましょう
ご存じかしら?史料の記録より先に、人類は酒の醸造技術を習得している。しかも鉄器よりも先なのです
この瓶の酒は造られて千年をゆうに超えています。飲用はできませんが、強烈な香りがします
そんな……まさか全部蒸発してしまったのかしら?
ジャスミンは私が常に焚きしめている香……残念ね、千年前の酒の香りを楽しめなくて
では次の場所にまいりましょう
ここで保管されている物は比較的近代の物です。見たことがある物もあるかもしれませんね
スポットライトの下、さまざまな珍品が並んでいる。その中に、他の物とは雰囲気の違う一品があった
九龍古都のとある普通の少女が作ったものですね……
曲はその機械人形を手に取った。人形には孔雀のような模様があり、曲はその模様を触りながら、回想にふけった
彼女は九龍以外の場所を見たいとずっと夢見ていた。夢はかなったけれど、彼女の最後は悲劇そのものだった
いいえ……私には友人なんて必要ありません。しかも彼女は私の友人になる身分ではありませんでした
全ての物には価値がある。ここの宝物全てが貴重であるように。これこそ永遠に残すに値するものです
曲は無意識に人形をギュッと握りしめたが、壊してしまうのを恐れたのかすぐに手を緩めた
これは……
…………
…………
もういいです……
出すぎたことを!お黙りなさい!
話し続けようとしたその時、1羽の青色のバイオニック孔雀が飛来し、「ガーガー」と鳴きながらくちばしで頭をつついてきた
徽羽(キウ)?
しかし曲は止めもせず、むしろ笑みを浮かべている……
その調子よ徽羽(キウ)、もっとつついておやり。私への不敬の罰です
ガー!ガガ——
今日はここまでにしましょう。あなたが私にふさわしい「伴侶」になるためには、私を敬うことをまず覚えなさい