Story Reader / Affection / カム·狂犬·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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カム·狂犬·その5

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システム音声

「晨星スタジオリゾート」シミュレート作戦場、プログラム更新……

>>戦闘記録12……アップロード

25%>>65%>>……>>80%

シミュレート作戦データ、アップロード完了

訓練の成果はすぐに現れた。指揮官としても、カムの戦闘中の縦横無尽な力に次第に慣れてきた

ふう、チョー気持ちいい――

まさか、俺のこのセリフを聞きにきたんじゃないだろうな?

カムがよくしゃべるようになったことが、何よりも嬉しい

一言二言褒められたからって自惚れないから安心しろ。俺はもともとすごいからな

俺の動きはどんどんよくなる。想像以上に強い。アンタも指揮官としては悪くないな

そうか?俺が認めてやるんだから、感謝するべきだな

すぐにでも作戦に出られる。あの構造体たちと一緒、だろ?

俺と一緒に仕事できるとは、さぞかし光栄だろうな

なんだその言い方は。はっきり言えよ

カムはあごをしゃくって得意げにしている。深い色の瞳に光が反射して、とても綺麗だ

カムは固まってしまった

それからすぐに、塩まみれのレモンスライス入りテキーラを一気飲みしたような複雑な表情を浮かべる。殴るべきか、礼を言うべきか、迷っているようだ

俺をカムイみたいに弄んでるのか?

おい!俺を怒らせたらどうなるのか、よっぽど知りたいみたいだな!?

なんで俺が参加しないとならない?

厳密に言えば、俺はまだグレイレイヴンの隊員ではないだろう?なぜブリーフィングに呼ばれる?

面倒だ……黄金玉子の地獄チャーハンを食わせてくれるなら考えてやろう

条件がある。あとで埋め合わせするなら参加してやろう!

この前のレストラン、あそこにもう一度連れて行け

そうこなくては。では、アンタの言う通りにしよう

……

カムは不機嫌なように見える。だが、一緒に過ごした今ならわかる。カムは不安なだけなのだ

……おい、そこに座れ。俺は隣に座る

なぜ謝る?少しは指揮官としての威厳を持ってくれ。以降、謝るのはなしだ

それに、俺は別に人が多いのが嫌なんじゃない……目にゴミが入っただけだ

そう言いながら、カムが目配せをしてきた……見れば、先日大乱闘を繰り広げたあの小隊がいる

ちょうど真後ろの席についたようだ。指揮官はおらず、構造体2体もいない。座っているのはたった1体――茶髪で、背が高いあの装甲型構造体だ

ほんの一瞬目があったが、またすぐに目線は離れてしまった

チッ、興ざめだ

カムはしぶしぶといった様子で腰を落ち着かせる。苛ついてはいないようだ

すぐにブリーフィングは終わると思っていたが、突然背中を叩かれた

勢いのまま振り向けた額が、あやうく前屈みの構造体とぶつかるところだった

おい、腐れ縁だな

まさかこんなところでまた会うとは

やはり、あんたが指揮官なんだろ?

俺たちの指揮官が殴られて、オマケに通報されて連行されたというのに、あんただけが後ろに隠れて……

卑怯と思わないのか?

今になって堂々と認めやがって

この指揮官にしてこの隊員あり、だ。あんたは見た目からは想像できないほどの卑怯者だ

ずっと我慢していたカムが、ついに大声を出した

この野郎!もう一度言ってみろ!!

カムの額の青筋がピクピクしている。今にも殴りかかりそうだ

おや?今日の侵蝕体くんは聞き分けがいいな?どうやって飼いならしたんだ?

ブリーフィングルームには空中庭園の精鋭部隊が勢揃いしており、講台のハセンが何かを話している

カムは、いつ爆発してもおかしくない爆弾だ。もうこれ以上トラブルを起こすわけにはいかない。ましてこれほど多くの衆目を集める場所でなんて……

とにかく、カムを悪目立ちさせたくはない

俺たちの指揮官に謝れ

……

隣のカムが大きく息を吸った。爆発する前に、早く何か言わなくては――!

……すまなかった

もし拒否するなら、……えっ、なんて?

謝罪してほしいんだろ?すまなかったと言っている

それとも、花でも持ってアンタらの指揮官を見舞った方がいいか?

えっ……お、お前

……そこまで言うなら……

するとカムは突如、凶悪な笑みを浮かべた

勘違いするなよ。アンタらの指揮官のアホ面にぶちかましたことを謝ってるわけじゃないからな。むしろチャンスがあれば、追加でもう数発入れてやりたいぜ

ただ、俺の指揮官が俺に謝ってほしそうだったから

……はぁ?

構造体は困惑した表情で、こちらを見る

指揮官の命令は絶対だ。指揮官が東に行けと言ったら、俺は絶対に西へは行かない。アンタのとこの指揮官はどうだ?アンタがブリーフィングで侵蝕体と殴り合ったら喜ぶのか?

俺がアンタだったなら、その口を閉じておとなしくしているさ

それに……もしここの俺の指揮官がいなかったら、俺は単独行動の構造体に何をするかわかったもんじゃないぜ?

お、お前……脅迫するのか――

そうだ。せいぜい祈ってろよ。次にアンタが俺に会う時、俺のそばに指揮官がいることをな

さもなきゃ、その首がいつまでも繋がってるとは限らない

指揮官、何かご用ですか?

指揮官がそう仰るのであれば

背後の構造体はすっかり縮み上がってしまったようだ。カムの脅しに圧倒されたのか、それとも……

いずれにしても、構造体はそそくさとこの場から立ち去ってしまった

なんだよ?大したことないな……

何だ?バカって呼ばれたいのか?

…………

……あんな風に言ったのは

アイツを気味悪がらせるためだ。人間から学んだやり方だ

うぬぼれるなよ

うん?いつまでも首がつながってると思うなよ、か?

ほう?そう呼ばれたいのか?

指ーー揮ーー…………

…………呼ぶと思ったか?

うぬぼれるなよ

アイツを気味悪がらせるためだ。人間から学んだ

長官だのなんだの、俺はその手の単語が大嫌いなんだよ

だから、今後アンタのことは[player name]って呼ぶ。そうじゃなきゃカラスの親玉……灰鴉の親玉でもいいな

では、俺の「親友」っていうのはどうだ?

うむ、少しおかしいな……

いや、考えるほどおかしい

呼び方を決めたら、また教える

カムは構台をぼんやりと眺め、何も言わなくなった

……

……手

アンタの手、暖かいな

わかってる。長いこと忘れていただけだ

意識海には、味覚も触覚も、そういう感覚は何もなかったからな

……!

……本当に、暖かい

それに他の発熱物とは違う。優しくて、柔らかい

カムはそう呟きながら、拳をそっと緩めた。人間の手のひらが、構造体の機械の手の上に重なる。機械構造のはずなのに、なぜかほんの少し、温度を感じた

なるほど、これが身体を持つという感覚か

カムは目を閉じて、あらゆるものを感じようとしている

俺もかつては人間だった。だが、今となっては意識海の中の、冷たい……不快な……感じしか覚えてない

強さだけが、俺の心を安らかにした

本当に久しぶりだ……

ところで

黄金玉子の地獄チャーハン。忘れてないだろうな?

食べて太るのはアンタだけだ

この身体は、人間の食物からエネルギーを摂取することはできない。味だって人間の身体で感じるものとはまるで違うだろう

だが、俺は好きだ

青年は高笑いし、腕を組んだ

おい、約束を破る気じゃないだろうな?

フン、まあそんな度胸ないだろうな

……今か?

軍規違反じゃないのか?

カムはまた少し笑ったようだ。ふたりは身をかがめ、椅子に隠れるようにしてブリーフィングルームを抜け出した

途中、構台からの視線を感じたような気がしないでもないが……知ったことか!