Story Reader / Affection / ネイティア·亡詩·その4 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ネイティア·亡詩·その5

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実験エリアの冷たい薄明かりの中、ネイティアはこちらの頬にそっと手を当て、眉を緩めて微笑んだ

平気よ。ただちょっと疲れただけ。あなたから「エネルギー補充」させてもらうわ

構造体の女性は無言で周囲を見渡し、唇を引き結んだ

壊れた機械体からは火花が散っている。彼女がかつて作業した実験台には、厚く埃が積もっていた。静寂の中、聞こえるのは機械の作動音と自分たちの呼吸だけだ

ここで読みましょう

彼女の最後の言葉は、彼女が全てを捧げたこの場所に残すべきだから

ネイティアが端末を開き、再生ボタンを押す

投影されたホログラムには、亡くなって久しい小柄な研究員の姿があった。彼女は彼岸から、こちらを静かに見つめている

タイムスタンプ……関係ないか。このメッセージがいつアンロックされるかは重要じゃない。重要なのは、私の遺言が正しい人の手に届いたということ

よくやったわ、ネイティア。そして、お見事ね、ネイティアの同行者さん

隣のネイティアの顔に、自分と同じ驚きの表情を読み取った。映像の女性はそう言うと、口元だけで微かに笑った

あなたたちの今の表情、手に取るようにわかるわ。なんといっても、ヒントを詩にして誰かと一緒じゃないと解けないようにしたのは私だから

これは単に暗号化のためじゃない……子供のころの趣味みたいなものね

古代ギリシャ語では、「詩人」と「創造者」は同じ言葉なのよ。科学者が堅物だなんていう世間の先入観は捨て去るべきよね

隣でネイティアが小さく笑った。彼女が自分に向ける眼差しには、理解と優しさが滲んでいた

彼女って、本当に……

映像のレノアは、深く息を吸い込んだ。その表情は、どこか言葉にしがたい複雑さを帯びていた

この言葉、本当は直接あなたに伝えるべきだった。でも……言えなかったの

ネイティア、私はあなたを恨んでなんかいない。忠告も警告も、あなたは誠実に言ってくれた。それは同じ研究者として、誠意と責任に基づいた行動だった

私が最後に責めたのは、近道を選びすぎた自分自身

時間がないなら試験回数を減らせばいい、どうせ実戦での誤差なんて誰も気付かない。予算が足りないなら安い素材で代用すればいい。事故は想定内、誰も深く追及しない

前へ進むために、私は嘘を重ね続けた。時には自分すら騙すほどに。そんな時に、ある「過ちを犯した」とされる部外者の少女が現れて、細部にわたるまで質問してきた

あなたは何も間違っていない。「なぜ?」と問うただけよ。それが、いつから「過ち」になったのかしらね?

女の子は首を横に振った

あなたを見ていると、歪んだ羨望さえ覚えたわ。何も持たず、恐れず、自分の信じるもののために突き進むその姿……

でも、いざ自分が同じ立場に立った時、待っていたのは解放ではなく、無念だった

叶わなかった夢。伝えられなかった言葉。差し伸べられなかった手……

ネイティア、これが、あなたが背負ってきた世界だったのね?

ネイティアは虚ろな目で映像を見つめ、ただ黙っていた。映像は一方的な独白。もう返事を聞くことはできない

真実を求めることは……雨夜の長い道を歩くようなもの。ともに歩む人がいたとしても、必ずしも並んで歩けるとは限らない

それでも、私はこの道を行くわ

あなたは、私を再びこの道へと連れ戻してくれた鳥なのよ。あなたと、あなたが選んだ同行者に、あり余る幸運が訪れますように

もしこれがあなたにとってまだ意味を持つのなら、この完全な詩を、私からの祝辞として受け取って

映像が揺らぎ、薄れていく。言葉もなく、ネイティアの指先がこちらの指にそっと重なった。彼女の赤い瞳には、涙の光が瞬いている

黒き鳥よ、この世界に雨の幕が降りる時、どうか孤独に鳴かないで

私は涙を矢に鋳て捧げ、決意の時を待つ

涙の海が逆巻き、鉛灰色の雲を貫く時

光と影が交わり、あなたと私はともに歩む

言葉は空気の中に消え、死者は永遠の静寂へと帰っていった

ネイティアは暗くなった端末を手に、じっと動かなかった

小さな呼びかけに応えるように、ネイティアはゆっくりと振り向くと1歩踏み出して、額をこちらの肩に静かに預けた

時が正常に流れているのかもわからない。他の音も景色もない。ただ腕の中には、全ての防御を解いた構造体がいた

[player name]、あの研究所の前で、あなたの手を握れたことが……

今まで独りで歩んできた私にとって、いちばん価値があって、かけがえのない出来事だった

この弔いは声なきままに、敬意と祈りに包まれていた。どれほどの時間が経ったのかもわからない。やがて構造体は頭を下げ、目尻の涙を指先でそっと拭った

ありがとう、[player name]。ようやく彼女とちゃんとお別れができたわ