Story Reader / Affection / ブリギット·輝炎·その5 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
<

ブリギット·輝炎·その4

>

その後ブリギットと一緒にお祭りのさまざまなゲームを楽しんで、ふと気がつけばもう夕暮れ時になっていた

その時、背後から驚愕を滲ませた声が聞こえた

あ、姉御じゃありませんか?

小さな女の子の手を引いた、30代から40代の中年の男性が目を大きく見開いてブリギットを見ていた

あなたは……チャールズ!?

お久しぶりです、姉御

久しぶり、1年以上会ってなかったわね、調子はどう?

ぼつぼつってとこです。ちょうどほら、子供を連れてお祭りに来たんです

こちらの方は?

あの名高いグレイレイヴン指揮官でしたか!

有名人だ!

はっはっ、さすが若者は元気があっていいですね!

俺は最近、バーを始めたんです。よければ、ぜひおふたりでいらしてください。ご馳走しますよ

ブリギットはこちらに振り向いた

一緒に行ってみない?

30分後、居住区、ビーチバー

チャールズは足早に先頭を切って、扉を押し開けた

ようこそ……ビーチバーへ!

チャールズのビーチバーの内装は、空中庭園で流行っているスタイルと異なっていた。全体的に木目調で、いわゆる西部劇というものに出てくるお馴染みの雰囲気だ

なかなかいけてるでしょう?

この雰囲気を作るのに、かなり苦労したんですよ

じゃあおふたりとも、こちらにどうぞ

ブリギットは脚高のカウンターチェアを引き、カウンターにより掛かるようにして座った。それに続いて、自分も隣に腰掛ける

夕暮れ時のビーチバーに客はほとんどおらず、準備中の店内は普段と違うであろう静けさが漂っていた

店内には柔らかく落ち着いたジャズが流れている。黄金時代以前の貴重な文化のひとつだ

店の隅には1組のカップルが座っており、テーブルにはジュースのグラスがふたつ置かれている。教育区の学生のようだ

別の隅の方では、作業服を着た中年男性が座っていた。仕事を終えたばかりのようで、テーブルには1杯のビールと……丼飯!?

中年男性はこちらの視線に気付いたのか、微笑みながらグラスを持ち上げて挨拶を寄越した

こちらからも男性の挨拶に応えて、体勢を戻すとバーカウンターの中でカクテルを作るチャールズが視界に入った

今日の出来事を思い返すと、思わずしみじみとしてしまう

平和って本当にいいわね

タイミングを図ったように、ブリギットと自分の言葉がぴったりと重なった

一瞬の驚きの後、ふたりは同時に吹き出した

ハハ、ハハハハ……

ひとしきり笑ったあと、ブリギットは少し複雑な表情を浮かべて言った

そうね、本当にいいものだわ……

ねえ[player name]、昔の人たちも、今日の私たちみたいにすごしてたのかしら

週末や休日は友達と一緒に街を歩き、疲れたらちょっと休憩して……

それからお酒を飲んで、ゆったりと眺めるの――本物の夕日をね

姉御、特製の「サンセットテキーラ」味の電解液をどうぞ。指揮官にはカシスソーダをお作りしました

ソーダはノンアルコールです。どうぞごゆっくり

わあ、ありがとう、チャールズ!

ああ、あそこにいるジョンおじさんのことですね

彼が食べているのは、隣の張姉さんの店のものなんですよ。彼女の店の丼は、これまた絶品でしてね!

よければ出前を頼みましょうか?

チリンチリンというドアベルの音とともに、祭りを存分に楽しんだ教育区の客たちが次々とバーに入ってきた。祭りの余韻を残した客の熱狂で、店内が賑わっていく

グラスを酌み交わしているうちに、人工天幕の夕暮れはすっかり消えさった

バーの中に薄暗い明かりが灯った。騒がしい声と濃厚な酒の香りがほろ酔いの意識に流れ込み、知らず識らずのうちに、そこにいる全員の気分を高揚させていく

聞いてよ、それでね、あの時はもう本ッ――当に腹が立たったのよ!

車がこんなふうにガーッと走ってきて、私たちが整理したものを全部ドサーっとひっくり返したの。私と隊員たちで1日中ガガガッて、苦労して運んだ箱をよ?

彼の運転免許、いったんバシっと取り消すべきよ。運転規則をスラスラ全部暗唱できるようになって、完璧に10回書けたら、また運転させてやってもいいわ!

私だったら、完璧にギャギャギャッと運転できたのに!

ブリギットはもう電解液を5杯も飲んでいた。リラックスしすぎているというか、会話が饒舌になっているようだ

今日はブリギットの伝説的なドライビングテクニックも垣間見ることができた

あはははっ、とーぜん、そりゃそうよ!

こうやってお酒を飲み、仕事の愚痴をこぼす情景は……まるで黄金時代の夜のテレビドラマのようだ

ブリギットはグラスを置き、少しこちらに身を寄せてきた

あのさぁ[player name]……あなたもこういうイラッとしちゃうこと、あるでしょ?

ウソ?本当にないの?

ゆっくりと頷いた

本当に?運がいいのね……それとも心が広いから、そんな場面に出くわしてもカウントしてないんじゃない?

でしょ?仕事をしていたら、こんな苦労は当たり前よね!

ブリギットはこちらの肩に手を置き、戦友を見つけたような眼差しを向けてきた

もし今後、職場で面倒事があったら、ひとりで溜め込んだりしないで遠慮なく私に話して

チャールズ!もう1杯おかわり!

大丈夫よ

姉御はホント、相変わらずですね。以前は支援部隊の打ち上げで、姉御ひとりで7人の隊員を酔い潰したんですよ

結構長いわよ。以前、チャールズは支援部隊の隊員だったの

付き合いは11年になりますかね、支援部隊には10年いたんですよ

彼は、新しいグラスに透き通った金色のビール味の電解液を注いで、ブリギットに差し出した

退役して、もう1年以上経ちました

彼が右足を指ではじくと、コツコツと金属音がした

足を1本失ったんです。私は構造体ではありませんし、この長い年月の間に、もう体がついていかなくなりました

それで、思い切って退役を。そして何より……

彼は、自らの傍らで遊んでいる小さな女の子を見つめた

一生添い遂げたいと思う人に出会って、レイを養子に迎えたんです

これからは、穏やかな生活を送ろうかと

ほんと、幸せ者よね!

ははは、そうですね。ほら、見てください。これは最近、妻が買ってくれた帽子なんです。カワイイでしょう……

店内に皆の笑い声が響き、祭りの夜が今、始まろうとしていた