Story Reader / Affection / ドールベア·解源·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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ドールベア·解源·その3

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樹木が生い茂る隠し通路や路地裏を迂回し、街の中心に向かって長時間歩いた。すると、巨大な落書きがある下水道の出口にたどり着いた

……たぶん。いわゆる、偏屈なコレクターの趣味ってやつ?

とにかく、前回は確かにここで彼に会ってるわ。彼の住んでる場所はこの辺って言ってたから、今の時間なら会えるはず

彼らに、コンステリアのパイプの修理を手伝えって言われて……あ、来たわ!

そう遠くないところに現れたのは、よく見慣れたあの機械体の姿だった

そう、忘れもしない、かつて自分をバンドの臨時ドラマーに勧誘した覚醒機械のキスクだ

これはこれはグレイレイヴン指揮官!お久しぶりです

ちょうどよかった、まだあなたにバティの店でガソリンカクテルを奢っていませんよね!

彼は興奮した様子で口を開いた

待って、ガソリンカクテルは後でいいから――

ほら、指揮官を連れてきたわよ。約束通り、ワイヤレスヘッドホンを売ってくれるわよね?

約束でしょ

……ゴホン

数日前、この構造体のお嬢さんが我々のコレクション――黄金時代に生産中止になった限定ワイヤレスヘッドホンに目を留めたんです

でも、その時はすぐに売るという判断ができなくて。「グレイレイヴン指揮官を連れてきてくれたら」という条件を出していたんです

……そんな、全部ペラペラしゃべっちゃうの?

機械体は噓をつきません。でも構造体のあなたにこの条件はかなり難しいかと思っていたのですが、まさか……

偽りじゃない~……ふふふん~……

彼女はあからさまに顔を背け、鼻歌で誤魔化そうとしている

前回会った時のキスクは、バンド「サンダースパーク」のメンバーだったはずだ

覚醒機械は自由なのです。覚醒機械は追求したい全てのものを追い求めます

ゆえにキスクはバンドメンバーでもあり、コレクターでもあるのです

とにかく、もう言われた条件を満たしたんだから――

はい、約束のワイヤレスヘッドホンは?

キスクはそれは知りません

今日からキスクは、追求の方向を変えたのです!今のキスクは、自由な画家なのです!

今日から、キスクは画家に仲間入りします!革新的なリズム画家になります!

機械体は楽しそうに両手をぶんぶんと振り始めた

……

トンットンットンッ!リズム奏でる、偉大な画家に!

指揮官、困ったわ。覚醒機械が合意済みの契約を履行しないの。もし小さなバグプログラムを植えつけて、混乱させたら約束を思い出すかしら……

……偉大なる、画家?

そうなったら、コンステリアは私をもう困らせないわよね?

じゃあ今すぐ――

……偉大なるリズム画家の未来を脅かさないでください。仕方ない、本当のことを話します

キスクは瞬時に、踊るのをやめた

あのワイヤレスヘッドホンは、もう私の手元にないのです

……他の人に売ったの?

いいえ、覚醒機械は約束を守ります。ただ……昨日、私たちは音楽バトルで別の覚醒機械たちに負けてしまったのです

キスクの全てのコレクションが、奪われてしまいました

だからキスクはもう音楽をやりたくないんです。キスクは転職を希望します

だから、偉大なリズム画家になるんです!

「サンダースパーク」はコンステリアでも、屈指の知名度を誇るバンドだったはずだ

バトルナンバーは、私たち「サンダースパーク」が得意とするものではない、初めて耳にするような音楽ジャンルでした

……それって、一体どんな音楽なの?

黄金時代に流行った、「MIX」と呼ばれるものらしいのですが

彼らのリズムがとても速くて、私たちも必死に対抗しましたが、まったく太刀打ちできませんでした

「サンダースパーク」は負けました。その覚醒機械たちは、「サンダースパーク」は勝負に値しないと言い、私たちのコレクションを全て奪いました……

構造体のお嬢さんが欲しがっていたワイヤレスヘッドホンも含めて……申し訳ありません、キスクは決してあなたたちを欺こうとしたのではありません

覚醒機械は深々と、礼儀正しくドールベアに一礼した

……そこまでしなくてもいいけど

どうしてもあのヘッドホンが欲しいなら、彼らから買い取る、とか。彼らはコレクションを大事にするタイプではなさそうです

ふぅ……ひと手間ね

そのバンドって、一体どんな「MIX」で勝ったの?ちょっと聴かせて?

こんな音楽です――

機械体の内蔵プレイヤーが起動され、キスクは音量を最小に調整してから再生した

それは、1曲の中にアップビートなメロディと低音のハーモニーが、まったく違和感なく混ざり合っているものだった

ドラマーは転調の名人であるらしい。さまざまなメロディを自然に収め、異なる音を完璧に繋ぎ合わせていた

前後のメロディは滑らかで、ハーモニーも完璧だ。どう考えても、同じバンドで同時に演奏できる曲ではなさそうだった

彼らは、これが最新の電子音楽だと。そして、私たちがこのような曲を演奏できないのは、単なる実力不足だと……

「サンダースパーク」は負けました。演奏は散々でした。必死に曲調を覚えましたが、ここまで調和させるにはまだまだ練習が必要でしょう

あぁ……

機械体は暗い表情でため息をついた

それなら、もし私がその相手を倒して、あなたたちのバンドが再結成できたなら、全てのコレクション――私のヘッドホンも取り戻せる?

――えっ!本当ですか!?本当にそんなことができるんですか!

ねえ、言ったでしょ。技術者を信じなさいって

そんな――なんて幸運なんだ!

サンダースパークを代表してお礼を言います!構造体の麗しく優しいお嬢さん!

でも――ちょっと別の条件を追加で出すわ。これ、お代も別に払うから……

ピンクの髪の構造体は目を伏せて屈むと、キスクとひそひそと何かを交渉し始めた

あっ……それですか?高価なものではありませんが、見つけるのは少し難しいかもしれません……

でも、一所懸命に探します!

じゃあ、先にお礼を言っておこっと

……ノーコメント

少女はにっこりと笑みを浮かべた