Story Reader / Affection / ドールベア·解源·その6 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.

ドールベア·解源·その1

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窓から、暖かい日差しがふんだんに降り注いでいる。部屋中がコーヒーの柔らかな香りに包まれていた

こんなにもうららかな午後に、長時間の会議がふさわしいはずがない。眠気対策のコーヒーもまったく功を奏さなかった

まったく……そんなに眠いんですか?

はいはい、わかりました――会議はここまでです!任務報告はちゃんと時間厳守でお願いしますよ!

彼女は早口で最後のまとめを終わらせ、手をパンと叩いて、うつろな目の指揮官やスタッフたちを解放した

メンバーはいそいそと立ち上がり、すぐに会議室が空っぽになった。日光の中でキラキラと舞う塵が、穏やかな午後の休憩をここですごそうと誘ってくる

いっそのこと――

「トントン」

本能の赴くままに体を深く椅子に預けて、まぶたを閉じようとしたその瞬間――隣の窓から突然、軽いノックが聞こえた

見つけた。こんなところでサボってる

言い訳をしようとしてる時点で――

しっ、待って

彼女は素早く窓を開け、本来は技術者だとは思えないほど身軽な動きで部屋に飛び込んできた

言い終わる前に、もうひとりの見慣れた姿が廊下の反対側に現れた

ド!ル!ベ!いるのはわかってんだぞ!

しっ――

ドールベアはテーブルの下に隠れて目を細めながら、手振りでこちらに向かって何かを必死に伝えてきた

どこに雲隠れしやがった……あれ?指揮官?

おい、ドールベアを見てねーか?さっき、あいつがこの辺を走っていくのを見たんだけど……

ん――?中にいるのか?

本当に、ここにはいないのかよ?

カレニーナは窓の外からキョロキョロとこちらを覗き込もうとした

おかしいな……まさかあいつ、投影でオレを騙したのか……

まあいい、あいつを見かけたらすぐに知らせろ。今度こそ絶対に言い負かしてやる!

そう言うと、カレニーナは勢いよく別の方向へ走って行った

……ふぅ

足音が遠ざかったのを確認して、ドールベアはゆっくりとテーブルの下から出てきた

今はそんなことを説明している時間はないの、隊長は絶対また戻ってくるし……

指揮官のサボりを黙認する代わりに、グレイレイヴンの休憩室をちょっと貸してくれない?

弁解する暇もなかった。ドールベアは慣れた手つきでこちらを引っ張ると、グレイレイヴンの休憩室の方向へと歩き出す

グレイレイヴン休憩室

……誰もいない

あぁ、そう。じゃあ、ここに座っていい?

ピンクの髪の構造体はこちらをじっと見つめながら訊いてきた

ありがとう

彼女は軽やかにソファに座ると端末のバーチャルモニターを広げ、真剣な面持ちで仕事に取りかかろうとした

コップに入れた電解液を手渡しながら、好奇心に駆られてやっぱり訊いてしまった

ああ……あの件ね、カレニーナは工兵機械にとんでもない構造を追加したいらしくて

でもその構造を追加したら、ちょっとしたミスで工兵機械が爆弾になる可能性があるって何度も言ったんだけど

「絶対大丈夫だ」って言い張って聞かないの。これ以上言い合っても無駄だと思って、逃げてきちゃった

だからあなたの休憩室を借りて、今日の――別の仕事を終わらせたいんだけど、いい?

そうよ。お·し·ご·と……工兵部隊の副隊長って、結構忙しいの

静かな午後、部屋にはキーボードの静かな打鍵音だけが響いている

えっ――

さすがグレイレイヴン指揮官ね。常に厳重に守られてるんだ――

休憩室でさえ、未確認のアクセスはブロックされるなんて!

……まあいいわ、私の端末をホワイトリストに追加したから。作業が終わったら、自動的にアドレスは削除される

想定外だったわ、時間を20分も無駄にしちゃった。しょうがない、指揮官のせいってことに――

ふっ、ジョークよ

端末がネットワークに接続され、外は時間が経つとともに暗くなった。どのくらい経ったかわからないが、彼女は一段落ついたようで、リラックスし始めた

グレイレイヴン指揮官って――普段の仕事はこんなにつまらないの?

会議、任務を執行、会議、報告書――?

それなら工兵部隊に入って、私のアシスタントとして設計図を描いた方が楽しいかもね

本当に?――ちょっと信じられない

ドールベアは気怠そうな笑顔を見ると、即座に反撃し始めた

終わったわ――

ほら

彼女は端末のモニターをこちらに向けた。そこには、完成した工兵機械モデルのデータレポートが映し出されていた

突然、青い小さなロボットが急にモニターに現れた――ロボットはモニター中の文字を素早く飲み込んでいく

……え?

【規制音】――!

彼女は急いで端末モニターの向きを自分の方に戻したが、あまりにも慌てていたため、持っていた電解液をキーボードにこぼしてしまった――

……

あっという間に小さなロボットはモニターのデータを完食してしまった。そしてこちらに向けて狙撃ライフルを構えると、ビュッという音とともにモニターが暗転した

ちょっと、これ、カレニーナの工兵機械モデルなのに!

まずい、隊長は絶対、私がサボってたって怒りまくるわ

ちょっとグレイレイヴン、酷すぎるわよ!ホワイトリストに入れても防御反撃のプログラムを追加してくるなんて!

その言い分にも一理ある――この鉄壁の防御を誇るべきか、過剰防衛と謝るべきか、複雑な感情がこみ上げてくる

もう、これでカレニーナを黙らせようと思ってたのに……

ちょっと、これ、どう埋め合わせするつもり?

工兵部隊副隊長がまるまる1日費やした仕事をパーにしておいて、「ごめん」のひと言だけですます気?

もっと……「誠意」を見せるものじゃないの?

彼女は、「誠意」という言葉をゆっくり、ハッキリと発音した

明日――この時間に、空港で待ってて

ドールベアはそれだけ言うとこちらの返事を待たず、シャットダウンした端末を手に軽やかに立ち上がり、さっさと走り出した

――問題ないでしょう。指揮官の予定表はもう確認済み、明日は休みでしょ

振り返るとドールベアはもうドアの外にいた。いたずらっぽく笑いながら、こちらを見ている

じゃあ、約束ね