Story Reader / Affection / アリサ·エコー·その2 / Story

All of the stories in Punishing: Gray Raven, for your reading pleasure. Will contain all the stories that can be found in the archive in-game, together with all affection stories.
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アリサ·エコー·その3

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別の輸送機が到着したが、まだ他の保全エリアの物資が積まれていた

先に自分たちを空中庭園に送り返すという彼らからの提案を断り、任務を優先してもらうことにした

自分にとっては、104号保全エリアでの滞在が2日ほど延びるだけのことだ。しかし物資は生存と希望を意味する

パチッ――

燃え盛る薪から火の粉がはね、地面に落ちる前に夜の闇に消えた

焚き火が自分とエコーを照らす光景は、なんだか懐かしさを感じる

以前、この少女が束縛から解放される過程にいる最中にも、こんなふうに炎の前で過去の話をしてくれた

指揮官、輸送機の中で休まれないのですか?

輸送機の中の方が、外より暖かくて快適です

キャンプというか……ただの焚き火ですよ

……では、お好きにしてください……

夜風はそれほど冷たくはないが、少し肌寒さを感じる。だが焚き火のお陰で十分に暖を取ることができた

確かに輸送機に戻って休めば快適だろう。しかし、エコーをここにひとり残すのは、どうも気がかりだった

彼女の立場からすると、夕方捕まった者たちと一緒に狭い空間にいたくないのだろう……

ふと焚き火に照らされるエコーを見ると、彼女はノートに何かを書き留めていた

書くのに行き詰まったのか、彼女は宿題に悩んでいる優等生のようにペン尻を噛んでいる

少女は一瞬驚いた顔を見せた。焚き火のせいで彼女自身が顔を赤らめているのかはわからないが、その両頬は薄く色付いて見える

しかし彼女はすぐに真面目な表情に戻って、ノートの中が見えないように胸元で隠した

どうしたんです、詩を書くのが趣味なのが……おかしいですか?

えっ……私、そんなことしてました!?気をつけないとイメージが……!

エコーはほとほと困ったようにペンを見つめた。このペンにしてやられたと慌てているその様子は、戦闘時の凛とした印象とはほど遠いものだ

お忘れくださいね、指揮官。もうしませんから

エコーのどこかしょんぼりした様子に一瞬焦りを感じて、どこかで聞いたような言い訳で誤魔化す

先ほど、面白がって笑っていたじゃないですか!

えっ……私、そんなことしてました!?気をつけないとイメージが……!

エコーはほとほと困ったようにペンを見つめた。このペンにしてやられたと慌てているその様子は、戦闘時の凛とした印象とはほど遠いものだ

お忘れくださいね、指揮官。もうしませんから

先ほどの言葉は、面白く見えるという意味では……

そうですか……?

エコーは半信半疑といった様子で、こちらをじろじろと眺めてきた

必死に頷いて、信じてもらえるよう努める

え……そんな感じです

行き場のない気持ちを、適当に文字で繋ぎ合わせただけのものですが

本職の詩人から見れば私の詩なんて、子供の言葉遊びみたいなものです

そう話すエコーは、普段の自信に満ちた態度とはまったく違う雰囲気だった

「優等生の原則」とは……?

謙遜……ではありませんね。いつも気ままに書くだけで、現代の詩の決まりや韻律をきちんと守っている訳ではありません

詠うべきものを詠っているのでもありませんし……

「べき」なんてない、ですか……

少女は語尾を伸ばすと再びペンを手に取った。思いついた何かをノートに書き留めていく

しばらくして、彼女はノートを両手で持ち上げて書いた内容を確認すると、そのページを破り目の前で燃える焚き火に投げ入れてしまった

いえ……この詩は今日の……特に、助けられなかった人々へ捧げようと

ノートに残すより別の形にした方が、私にはいいのかもしれません

その時エコーのノートには、他にもいくつかページが破られた痕跡があると気付いた

おそらく以前にもユートピアの無実の犠牲者のために、祈りの言葉を捧げていたのだろう

詩の最後の2行をどう書くべきか、行き詰まっていたんです。でも先ほど指揮官が「べき」なんてない、と仰ったので……いい締めくくりを思いつきました

エコーは火に飲まれていく紙片を見つめていた。揺れる光が彼女の瞳の中で踊っている

彼女は小さな声で詩を朗読し始めた――

我らは白きオーロラが流れる地を信じていた

我らは白きオーロラが流れる地を抜け出した

夕暮れが灰色の煙を引き寄せ

こぼれる迷いの涙が川となり

永遠にたどり着けない岸辺を作る

幼い声が背を追ってくる中で

世界はより速く進み続ける

暗夜と川が手を繋ぎ、彼らの足を止める

幼い声は言った

この場所は明るく輝くと

我らが夜明けを探すのではない

夜明けが我らを見つけるのだ

エコーがささやく穏やかで透き通った声に、瞬時にしてその世界へ引き込まれた

静けさが広がり、焚き火の爆ぜる音だけが響いている

えっ……!

そんな……今まで自分で書くだけでしたし、誰かに披露するつもりでは……

えっ?ええ、光をこちらが追い求めるより……この世界はもともと光の中にあった、そう思いませんか?

今は難しくとも、私はそのために努力するつもりなので

いつか自ら正義を求めなくてもいい世界になれば、その道のりで犠牲になった人々もきっと安らげるでしょう

あの……こんなに真面目に語るのは、なんだか……

不公平です、指揮官。これならあなたにも詩を書いていただかないと!

対句や韻律にこだわらなくても大丈夫ですよ。あなたの言葉で言うなら……

気持ちがあれば、決まりを無視しても大丈夫!ですから

まずは振り返りたい出来事や、自分の気持ちを書いてみてください!

あれっ?即答なんですか?指揮官はそんなに詩作に自信が?

もちろんです

では約束ですよ、指揮官

そう言うとエコーは、少し肩の荷がおりたというように深く息を吐いた

少し予想外でしたが、あなたと感覚をシェアするのも悪くないなと

気恥ずかしいですけど、指揮官にはもう癖を見られてしまいましたし

指揮官が詩を書いて、もっと興味を持ってくれたら……

……あ、なんでもありません!指揮官の傑作を楽しみにしていますね