知り合いって事前にわかっていたら……あんなに不安じゃなかったのに……ドキドキして損した……
オフィスに入っても、責任者は先刻の一件に納得がいかないようだ
あえて業務的に彼女のブツブツというつぶやきを遮った
はい……任務は簡単です。この新しいメンバーの方に、温室の日常業務を教えていただきたいのです。私が最初にあなたにしたように
作業に慣れてきたら、温室のもうひとつのエリアを彼女にお任せします。そうすれば外に出れる人手を確保できます
温室……森はある?
21号は動こうとせず、困惑した顔をしている
草原も、ない?
夜に、獣が出る?
クン……
問答を繰り返すにつれて、21号はどんどん困惑した表情になった
これ、任務じゃない
森での実践経験が必要、21号は得意
だから、任務を受けた。ここに来た
えっと……そのような内容で申請はしていないはずですけど……ちょっと確認します
責任者は端末を取り出して、調べ始める
あ……
責任者は申し訳なさそうな顔でこちらを見た
どうやら……フィールドワークの計画概要を、間違って申請内容に入れてしまったようです
多分、内容をコピペして、消し忘れちゃったんだわ……
だから21号がああ言うんだ
あの……でも、温室のメンテナンスも、とても重要な仕事なんです。もしよければ、引き受けていただけませんか?
せっかくここまでいらっしゃったことですし……
責任者は勇気を振り絞って、21号に告げてみた
森、行けない?
温室にも植物なら、たくさんありますよ……
草原で、ゴロゴロできない?
絨毯は、草原の感触にかなり近いと思いますけど……
野獣の生態、見れない?
……前にお祭りの時に使った着ぐるみがありますから、じゃあ、私が獣になります!
……
21号、騙された。帰る
ちょっと、ちょっと待ってください、ごめんなさい、私が悪かったです。でも、どうかここに残っていただけませんか!
また申請するとなれば、今度はいつ承認されるかわからないんです!
21号、「タンポポ」の尻拭き……尻ぬぐいしない!
ちがっ……ああもう、タンポポでもなんでもいいですよ、お願いします!引き受けてください……!指揮官、一緒に彼女を説得してください!
そんな……仕事を手伝ってくれるって言ったじゃないですか?
彼女は雷に打たれたような顔をしていた。つい先ほど「なんでも言ってくれ」と言った人間が、この非常事態に自分を助けてくれないことが信じられないようだ
21号がこちらに近寄ってきて、便乗した
2対1、「雑草」の負け
ざっ……嫌だぁ、これ以上、レベルを下げないでくださいよ!
助け舟を出すために21号を説得しようとすると、彼女は瞬時にそのことを察して、抗うような視線をこちらに向けた
言おうとしていた言葉を喉の奥に押し戻して、彼女の肩を持った
そう、気付いたのだ。21号は変わった。自分の意見を持っている
彼女の判断に、余計な干渉をするべきではない
ちょっと待ってくださいよ、それ、本心じゃありませんよね!?
なんですか!?プランBですか?
21号、森、大得意
ちなみに、森に関して読んだ資料は何かあります……?
『生物世界』……
あ……入門書には最適ですね……
『森の歌』……
そのドキュメンタリーは昔、私も観ました。でも……それも入門……
『蘇る悪狼』『巨大ヘビの呪い』『マウンテンコング』……
いやいやいや……それは映画やアニメですよ!!
21号、たくさん勉強。とても役に立ってる
どんなところが?
狩りをして、殺して、最後まで生き延びる
任務内容はサンプルの採取なんです。サバイバル実践ではありません!
[player name]が支持、問題ない
責任者は自分をじろりと睨んだ。甘やかし放題の親に対する目つきだ
21号、ちゃんと任務を遂行
森を見たいから、我慢
何を我慢するのやら……いえ、でもやっぱり無理だわ……彼女と一緒に行動するなんて、私にはそんな度胸は……
責任者は殻に閉じこもる貝のように、現実逃避しようとしている
ちょっと待って……そうだ。指揮官!このケルベロス隊員とお知り合いなら、あなたが彼女と一緒にフィールドワークをしてくださればいいじゃないですか!
温室の日常メンテナンスの方を、私がやりますから
じゃこちらの構造体……21号はいかがですか?
21号、問題ない
[player name]、尻ぬぐい
[player name]、拭かなくていい
……
じゃあ、詳しい採取目標と注意事項をまとめて、端末に送ります
指示通りにやってくだされば、それで大丈夫です
責任者は真剣な眼差しで、内容をまとめた
?
21号、ジョーク、無視された?