Story Reader / Affection / 21号·XXI·その3 / Story
司令部中央棟、作戦演習トレーニングルームの外
通常の射撃訓練を終えて、長時間銃を持ったことで少し痺れた腕を揉み、戦術端末を開いてこれからのスケジュールを確認する
ホールの曲がり角まで歩くと、予想外の人物に遭遇した
[player name]
よく知ってる匂いを嗅ぎつけたから、それを追っかけてきた
これと同じの
21号はポケットの中をごそごそと探して、少し汚れた何かを取り出すと、こちらに手を上げて見せてくれた
――破損した認識票が彼女の手にあった
前回の、地上での作戦時に21号が見つけた認識票だ。まさか彼女がそれを拾ってきたとは意外だった
21号はコクンと頷いてから、やがて首を横に振った
彼らの匂い、似ている、でもちょっと違う
ちょっとだけど、21号わかる。彼らは同じ小隊
わかった。どうすればいい？
なぜ？
なぜ大切？
うん、21号、わかりたい
21号は獲物を探す小さな獣のように自分を連れて執行部隊の基地を通りすぎ、ナイトホーク小隊の整備室の前で立ち止まった
ひとりの若い構造体が戦術端末を凝視している。見知らぬ訪問者に気づくと、彼は少し戸惑った顔になって頭を掻いた
あなたたちは……？
そう説明すると、21号が手で握った認識票を持ち上げた
……戦闘中、拾った
これ「大切な物」、だから、持ってきた
このチェーン……あっ……これは……ルノーの……！
21号の手にあるものをじっと見て、構造体はすぐさまこちらに向かってきた。机と椅子が彼の動きによって鋭い音を立てる
これ、どうやって見つけたんです？ルノーは？前回の戦闘で行方不明になってから、ずっと……
21号、見つけたの、これだけ
…………そうですか
これまでの全ての絶望的な期待と希望が一瞬で空っぽになったように、構造体は認識票を固く握り締めて、低い声で呻きながらしゃがみ込んだ
……
これ、大切なものを失った表情
21号は困惑した様子で両手を胸の前に抱え、スレーブユニットも21号の感情に影響されたかのように、焦った様子であちこちで回転している
その時、21号はこちらに向かってちらりと目線を寄越したが、何かを言おうとしているようだった
しばらくすると、思いついたというように、彼女は構造体兵士の前に静かにしゃがんだ
……かな、しまない……で
不器用に慰めの言葉を口にしながら、21号は上手く言葉で言い表せない歪な表情を作った
この表情が「笑顔」だとすれば、間違いなく災難レベルのやらかしといえるだろう。彼女のそれは、全力で口角をただ持ち上げているようにしか見えないのだ
……
それは……どういう顔だろうか？
仲間を失ったのは、君にとって何か……笑うような、面白いことなのか？
そうか……そうだ、そのマーク、君らはケルベロスだな。あの小隊は、全員狂ってるって聞いたことがあるぞ！
構造体は少し興奮して立ち上がると、こちらを指差した
あんたはケルベロスの指揮官か？隊員がこんなことして、ちゃんと管理してないのか？
それかあるいは……あんたも俺たちの悲しむ姿を嗤ってやろうって、ここまで来たのかよ？
やっぱりこんな指揮官だから隊員もロクでもないんだな。悪魔の番犬め、本当に冷酷なやつらだ……
あんたたちはここでは歓迎されない、さっさと帰ってくれ
構造体は袖を上げて雑に顔を拭くと、自分と21号を部屋から押し出した
ハッチが目の前でドォンと音をたてて強く閉じられる
廊下を歩く21号は、明らかに少し落ち込んだ表情をしている
21号の機体状態、ずっと良好
あの人大切な物を失った。とても「悲しかった」
21号、「慰めたかった」
しゃべれる機械から学んだ。「笑う」のは、嬉しい。だから、今は「笑う」べきと判断した
指揮官も、そうするから
指揮官が笑う、心が暖かい。気分よくなる
21号は自分の胸をそっと指差した
21号、人とコミュニケーションの方法、学んでる
私が笑う、みんなが怖がる
前まで、笑うのは戦闘のため。敵が見たら、怖く感じる。ヴィラもノクティスもそう
でも学んだ、笑うのは「嬉しい」を表すため
でも、失敗した。21号が笑うと、やっぱりみんな怖がる
通常のヴィラとノクティスの行動を思い出すと、21号がこうやって笑うのは、致し方ないことと思えた
人と上手くコミュニケーションを取る方法を学びたいなら、ヴィラとノクティスは適切な教師じゃない――むしろ反面教師だろう
……21号、感情を持ってない、から？
21号、ずっと「真似」。「真似」はダメなの？
ふうん……
……よくわからない。21号、ずっと自分の「感情」がなかった
ここには、他の人の「感情」だけ
21号は自分の頭を指し示した
でもそれが今、消えた
21号、どうすればいいのかわからない
でもひとつ覚えた。人が悲しむ時、やっちゃいけない
うん。21号、覚えた
